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『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第3章 理想の街へ

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第22話 王都からの依頼

翌朝。


宿屋の食堂はいつも以上に賑やかだった。


王都視察団の面々が朝食を囲み、焼きたてのパンを味わっている。


「このスープも美味しいですね。」


「パンとの相性が抜群だ。」


ミアは何度も「ありがとうございます」と頭を下げていた。


私は少し離れた席から、その様子を見て胸をなで下ろす。


どうやら料理も好評らしい。


「リリアさん。」


エドガーが近づいてきた。


「代表の方がお呼びです。」


「えっ、私ですか?」


「はい。」


私は急いで身だしなみを整え、宿屋の応接室へ向かった。


部屋に入ると、昨日の年配の男性が窓辺に立っていた。


朝日を浴びながら街を眺めている。


「失礼します。」


「おはよう、リリアさん。」


穏やかな笑顔だった。


不思議と緊張が和らぐ。


「昨日は街を案内していただき、ありがとうございました。」


「いえ、とんでもありません。」


男性は椅子を勧めてくれた。


私も向かいへ座る。


「一晩、この街で過ごして分かりました。」


「はい。」


「この街には、人を笑顔にする力があります。」


私は少し照れくさくなった。


そんな大げさなものではないと思う。


「そこでお願いがあります。」


「お願い?」


男性は机の上へ一枚の地図を広げた。


王国全体の地図だった。


その中の一つの場所を指差す。


「ここをご存じですか?」


「いいえ。」


「昔は交易で栄えた街です。」


「ですが現在は人が減り、ほとんど活気がありません。」


私は地図を見つめる。


確かに街道が交わる便利そうな場所だ。


「この街を、もう一度活気ある場所にできないでしょうか。」


私は思わず聞き返した。


「私がですか?」


「ええ。」


「でも私はまだ、この街を作り始めたばかりですよ?」


男性は静かに頷く。


「だからこそです。」


「立派な都市を管理する人は大勢います。」


「ですが、何もない場所から街を育てられる人はほとんどいません。」


その言葉に、私は黙ってしまった。


そんなことを考えたこともなかった。


ただ、自分の好きな街を作っていただけだ。


「すぐに返事をいただく必要はありません。」


「ゆっくり考えてください。」


私は深く頭を下げた。


「ありがとうございます。」


応接室を出ると、アルトが廊下で待っていた。


「終わったか。」


「うん。」


「何を話した?」


私は地図のことを説明した。


するとアルトは少しだけ笑う。


「期待されてるな。」


「でも、私なんかでいいのかな。」


前世では普通の会社員だった。


趣味でミニチュアを集めていただけ。


街づくりなんて仕事をしたことはない。


アルトは私の目を真っすぐ見た。


「この街を見てみろ。」


私は窓の外を見る。


噴水で遊ぶ子どもたち。


パンを買う旅人。


花の手入れをするフィオナ。


雑貨屋の前で笑うソフィア。


宿屋から手を振るミア。


「これを作ったのは誰だ?」


「……私。」


「違う。」


私は首を傾げる。


アルトは広場を指差した。


「最初はリリアだった。」


「でも今は違う。」


「みんなで作っている。」


私は広場を見つめる。


確かにそうだった。


グレッグは自分からベンチを直すようになった。


ハンナは毎朝花壇に水をあげている。


ミアは宿屋の新メニューを考え始めた。


誰も言われて動いているわけではない。


街が好きだから動いている。


そのことに気付き、胸が温かくなった。


「ありがとう。」


私は自然と笑顔になっていた。


その日の午後。


王都視察団は帰る準備を始めていた。


出発前、年配の男性は広場で住民全員を見渡した。


「短い滞在でしたが、とても有意義な時間でした。」


「この街は、きっと王国の未来を変えます。」


住民たちから拍手が起こる。


男性は最後に私へ歩み寄った。


「リリアさん。」


「はい。」


「これを。」


手渡されたのは、小さな銀色の徽章だった。


表には王国の紋章。


裏には小さく文字が刻まれている。


『王国公認 開拓建築士』


「えっ?」


私は目を丸くした。


「これは王国が正式に認めた証です。」


「あなたの街づくりは、これから王国の模範になります。」


私は思わず言葉を失った。


そんな立派なものをもらえるなんて思ってもいなかった。


「大切にします。」


深く頭を下げる。


男性は満足そうに頷いた。


「また会いましょう。」


馬車がゆっくり動き出す。


住民みんなで手を振る。


その時、最後尾の馬車の窓からアルトへ向かって小さく手を振る姿が見えた。


アルトも誰にも気付かれないように、ほんの少しだけ手を上げる。


私はその様子を見て首を傾げた。


「やっぱり知り合いなんだ。」


「昔、少しな。」


アルトはまた同じ答えを返した。


私は笑って肩をすくめる。


「その"少し"が気になるんだけど。」


「秘密だ。」


「いつか教えてね。」


「ああ。」


アルトは静かに頷いた。


その約束が果たされる日は、そう遠くない。


クラフトガイドが光り、新しい表示が現れる。


【王都視察 大成功】


【街発展度 150】


【新施設解放】


・劇場


・図書館


・大公園


・展望台


そして最後に、一行だけ新しい文字が浮かんだ。


【次の目標 王国一美しい街をつくろう】


私はその文字を見て、大きく笑った。


「望むところ!」


新しい設計図を広げる。


理想の街づくりは、まだ始まったばかりだった。

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