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『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第2章 街づくり開始

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第19話 隣領の領主

豪華な馬車が広場の中央で止まった。


村人たちは緊張した面持ちで見守っている。


扉がゆっくり開き、一人の男性が姿を現した。


年齢は四十代半ばほど。


紺色の上質な外套をまとい、胸には金糸で刺繍された紋章。


穏やかな笑みを浮かべているが、その立ち姿には威厳があった。


「初めまして。」


男性は丁寧に一礼する。


「私はレオン・アシュクロフト。」


「この地域を治める領主です。」


村中がざわついた。


「領主様……。」


モルガンが慌てて頭を下げる。


「このような辺境までお越しいただき、ありがとうございます。」


レオンは首を横に振った。


「礼なら私の方です。」


「この街の噂は、王都でも話題になっています。」


私は驚いて目を丸くした。


「王都でも?」


「ええ。」


レオンはゆっくり周囲を見渡した。


パン屋。


雑貨屋。


花屋。


時計塔。


噴水。


石畳。


どれもじっくり観察している。


「素晴らしい。」


その一言だった。


飾りのない、心からの感想。


私は少し照れてしまう。


「ありがとうございます。」


「案内していただけますか?」


「もちろんです!」


私は先頭に立ち、街を歩き始めた。


最初に案内したのはパン屋だった。


店の前には朝から行列ができている。


焼きたてのパンの香りが街中へ広がる。


レオンはパンを一つ購入し、一口食べた。


「……これは美味しい。」


ミアは嬉しそうに頭を下げる。


「ありがとうございます!」


「王都でも十分に通用する味です。」


その言葉に、ミアは目を潤ませた。


次は雑貨屋。


ソフィアが商品を紹介する。


「こちらは新しく作ったティーカップです。」


「こちらは木彫りの置物になります。」


レオンは一つ一つ手に取りながら感心していた。


「店の中が歩きやすい。」


「商品が自然と目に入る。」


私は少し嬉しくなる。


前世で雑貨屋巡りをして覚えた工夫が役に立っていた。


花屋ではフィオナが育てた花を見て、レオンは深く息を吸った。


「花の香りが街全体に広がっていますね。」


「はい。」


フィオナが笑顔で答える。


「季節ごとに植え替える予定です。」


「素晴らしい。」


レオンは何度も頷いた。


「街そのものが庭園のようです。」


案内を終えたあと、広場のベンチで休憩することになった。


レオンは静かに噴水を眺めながら口を開く。


「リリアさん。」


「はい。」


「一つ聞いてもよろしいですか?」


「どうぞ。」


「なぜ、ここまで景観にこだわるのですか?」


私は少し考えた。


難しい質問だった。


でも答えは決まっている。


「帰りたくなる場所を作りたいからです。」


レオンは黙って続きを待つ。


「家って、雨風をしのげれば十分かもしれません。」


「でも、玄関に花が咲いていたら少し嬉しいですよね。」


「道がきれいなら歩きたくなります。」


「噴水があれば子どもたちが遊びます。」


「そんな小さな積み重ねで、街は好きになれると思うんです。」


広場が静まり返る。


レオンはゆっくり立ち上がった。


「感服しました。」


そう言って深く頭を下げた。


領主が、一人の少女へ頭を下げる。


村人たちは息を呑んだ。


「私も長く領地を治めています。」


「ですが、建物ばかりを見ていました。」


「人の心を育てる街づくりなど、考えたこともありませんでした。」


私は慌てて首を振る。


「そんな、大げさですよ。」


「いいえ。」


レオンは穏やかに笑う。


「私は今日、多くを学びました。」


その時だった。


一人の騎士が慌てて駆け寄ってきた。


「レオン様。」


「どうした。」


「王都より急使です。」


騎士から手紙を受け取ると、レオンの表情が少しだけ引き締まる。


封を開き、目を通す。


数秒後。


レオンは苦笑した。


「やはり早かったか。」


「何かあったんですか?」


私が尋ねると、レオンは手紙をたたみながら答えた。


「王都が、この街に興味を持ちました。」


その一言で空気が変わる。


「近いうちに、王都から正式な視察団が訪れるでしょう。」


「それも……かなり身分の高い方々です。」


私は首を傾げた。


「身分の高い人?」


「ええ。」


レオンはアルトをちらりと見る。


アルトは平静を装っていたが、一瞬だけ視線が揺れた。


その小さな変化を見逃したのは、リリアだけだった。


クラフトガイドが静かに光る。


【新イベント発生】


『王都視察団を迎えよう』


報酬


・街ランクアップ


・新施設解放


・特別な住民加入


私は画面を見つめ、小さく息を吸った。


「よし。」


もっと素敵な街にしよう。


王都の人たちが来ても胸を張れるように。


その決意とは裏腹に、アルトは心の中でため息をついていた。


(父上……まさか本当に視察団を送るつもりですか。)


彼の正体が明かされる日は、少しずつ近づいていた。

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