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『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第2章 街づくり開始

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第17話 宿屋をつくろう

「困ったなぁ……」


朝。


私は広場のベンチで頭を抱えていた。


「どうした?」


パンを持ったアルトが隣へ座る。


私は街道の方を指差した。


「昨日、パン屋に来た旅人たち。」


「ああ。」


「夜になると帰っちゃうの。」


アルトは少し考えた。


「泊まる場所がないからな。」


その一言で私は立ち上がった。


「それだ!」


ハンナがびくっと肩を震わせる。


「また始まった。」


「宿屋よ!」


私はクラフトガイドを開いた。


すると、まるで待っていたかのように新しいページが現れる。


【宿屋】


必要条件


・街発展度70以上 達成


・パン屋 達成


・雑貨屋 達成


・花屋 達成


「やっぱり!」


私は思わずガッツポーズをした。


「今日は宿屋を建てる!」




場所選びは慎重だった。


パン屋の近く。


広場にも近い。


街へ入ってすぐ見える場所。


「ここだ。」


私は地面に木の棒で線を引く。


「一階は食堂。」


「二階は客室。」


「裏庭には洗濯場。」


「入口には花壇。」


モルガンが苦笑する。


「また花壇か。」


「当然。」


私は胸を張った。


「旅の疲れは、景色でも癒やされるの。」


エドガー視察官の言葉が頭に残っていた。


『この街には季節がありますね』


その言葉が嬉しかった。


だから宿屋も、帰ってきたくなる場所にしたい。




工事が始まる。


グレッグが柱を立てる。


アルトが梁を組む。


私は外壁を作る。


ハンナは花を植える。


ミアは食堂で使う机を磨いていた。


ソフィアは客室に置く雑貨を選んでいる。


フィオナは窓辺に飾る花を育てていた。


気付けば。


誰も指示を待っていなかった。


それぞれが自分で考え、動いている。


私はその光景を見て嬉しくなった。


「みんな、すごい。」


アルトが笑う。


「リリアのおかげだ。」


私は首を振った。


「違うよ。」


「みんながこの街を好きになってくれたから。」


その時だった。


クラフトガイドが淡く光る。


【住民協力効果】


【建設速度 30%上昇】


「えっ?」


新しい効果だ。


私は目を丸くする。


アルトが画面を覗き込み、小さく頷いた。


「街づくりは一人でするものじゃない。」


「住民が協力するほど効率が上がる。」


私はアルトを見る。


「……なんで知ってるの?」


アルトは固まる。


しまった、という表情。


「勘だ。」


「また?」


「……まただ。」


ハンナが笑い転げた。


「アルトさん、また怪しまれてる!」




夕方。


宿屋が完成した。


白い外壁。


木製バルコニー。


赤い屋根。


大きな煙突。


入口には色とりどりの花。


二階の窓からは街全体が見渡せる。


「素敵……。」


ミアがため息をつく。


ソフィアも頷く。


「泊まってみたい。」


「私も!」


ハンナまで手を挙げた。


その時。


街道から一台の馬車が近付いてきた。


商人らしい男性が降りてくる。


宿屋を見上げる。


「今日は泊まれるか?」


全員が顔を見合わせた。


私は笑顔で答える。


「もちろんです!」


記念すべき最初のお客様だった。




その夜。


宿屋の食堂は笑い声でいっぱいだった。


旅人。


商人。


村人。


同じテーブルを囲み、食事をしている。


私は少し離れた席から、その光景を眺める。


前世では、ドールハウスを見ながら想像していた。


「こんな家に人が住んだら楽しいだろうな。」


「こんなお店があったらいいな。」


そんな空想ばかりしていた。


でも今は違う。


目の前で、本当に人が笑っている。


「……よかった。」


自然と笑みがこぼれる。


その時。


宿屋の入口で、一人の商人が仲間へ話していた。


「この街は居心地がいい。」


「また来よう。」


その何気ない一言が、リリアには何より嬉しかった。


クラフトガイドが静かに光る。


【街発展度 85】


【来訪者数 急増】


【次の目標】


中央広場を整備しよう


私は広場を見つめる。


噴水。


時計塔。


石畳。


ベンチ。


まだまだ作りたいものが山ほどある。


街は、生き物だ。


少しずつ成長し、少しずつ表情を変えていく。


私はその変化を、誰よりも楽しんでいた。

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