第14話 世界で一番かわいい雑貨屋
翌朝。
「今日は雑貨屋を建てる!」
私の一声で、村のみんなが集まった。
最近では朝の集合が恒例になっている。
モルガン。
グレッグ。
ミア。
ハンナ。
そしてアルト。
「リリアちゃん。」
ミアが笑いながら言う。
「今日は徹夜しないでね?」
「……努力する。」
「昨日も夜中まで設計図描いてたもんね。」
ハンナが呆れたように頷く。
図星だった。
夜中に「屋根をあと五度だけ急にした方が可愛いかも」と思いつき、結局ほとんど眠れなかったのだ。
でも、その甲斐はあった。
私は大きな紙を広げる。
「これが完成図!」
全員が覗き込む。
そして。
「……」
また固まった。
赤茶色のレンガ風の壁。
丸い木製の扉。
大きなショーウィンドウ。
窓辺には花箱。
屋根には小さな時計。
入口には木彫りの看板。
店の横には休憩用のベンチまで描かれている。
グレッグが頭を抱えた。
「店って、こんなに凝るのか……」
私は胸を張る。
「お客様は、買い物をする前から楽しい気持ちにならないと。」
「買う前から?」
「うん。」
私は窓を指差した。
「この窓から可愛い雑貨が見えたら、入りたくなるでしょ?」
村人たちは顔を見合わせる。
しばらく考えて。
「……なるほど。」
初めて納得したように頷いた。
アルトだけは最初から分かっていたらしく、小さく笑っている。
「やっぱり君らしい。」
「褒め言葉?」
「ああ。」
私は少し照れた。
工事が始まった。
今回は外壁に少し工夫を加える。
木だけでは単調だ。
石材を薄く加工し、レンガのように並べていく。
「そんな使い方があったのか!」
グレッグが驚く。
「石は壁だけじゃないよ。」
私は一枚一枚丁寧に並べていく。
すると壁に立体感が生まれた。
ハンナは目を輝かせる。
「本物のお店みたい!」
「本物のお店だよ。」
私は笑った。
次はショーウィンドウ。
この世界では珍しい、大きなガラス窓だ。
透明度は完璧ではない。
それでも外から中が見える。
ソフィアは感動していた。
「外から商品が見える……。」
「うん。」
「これなら足を止めてもらえる。」
私は大きく頷く。
「お店は『入りたくなる理由』を作るのが大事なの。」
アルトが腕を組む。
「なるほど。」
「また知ってる顔した。」
「してない。」
「した。」
ハンナが笑い転げた。
最近、アルトをからかうのが日課になっている。
本人も少し慣れてきたらしい。
昼過ぎ。
最後の看板を取り付ける。
『ソフィアの雑貨店』
木彫りの文字。
小さな花の飾り。
リボンを模した装飾。
完成した瞬間。
ふわりと店全体が淡く光った。
【クラフトレベルアップ】
【レベル3→4】
【新スキル】
インテリアデザイン
「え?」
私は目を丸くする。
頭の中へ一気に知識が流れ込んできた。
家具の配置。
色の組み合わせ。
照明。
空間演出。
「すごい……。」
このスキルは、部屋全体を美しくまとめるための力らしい。
「リリア?」
ソフィアが心配そうに声をかける。
「大丈夫!」
私は勢いよく店の中へ入る。
棚を動かす。
入口近くには人気商品。
奥には高価な商品。
窓際には季節の飾り。
中央には新商品。
あっという間に店内が完成した。
ソフィアは言葉を失う。
「こんな並べ方……考えたこともなかった。」
「見やすい?」
「すごく!」
「買いやすそう?」
「うん!」
その笑顔を見て、私は満足した。
夕方。
雑貨屋が開店した。
すると。
「かわいい!」
最初のお客様は、パン屋に来ていた旅人の女性だった。
店へ入るなり歓声を上げる。
「見て見て!」
「このカップ!」
「この小鳥!」
「このリボンも!」
商品を一つ手に取るたびに笑顔になる。
ソフィアは少し緊張しながら接客していた。
でも、その表情は楽しそうだった。
気付けば店の前には人だかり。
パン屋の帰りに寄る人。
雑貨を目当てに来る人。
子どもたちは木彫りのおもちゃに夢中だ。
村に笑顔が増えていく。
私は広場からその様子を眺めた。
「すごいね……。」
思わず呟く。
アルトも隣に立った。
「予想以上だ。」
「まだ始まったばかりだけどね。」
その時。
クラフトガイドが光る。
【村発展度 50】
【称号獲得】
『街の設計士』
【新レシピ解放】
・花屋
・時計塔
・噴水(改良型)
・石畳(装飾)
さらに新しい表示が現れる。
【一定条件達成】
『街』へ昇格可能
私は息を呑んだ。
村ではなく――
街。
その二文字を見つめながら、胸が高鳴る。
「よし。」
私は新しい設計図を広げる。
次に作るのは、花屋。
花壇だけでは終わらない。
街中が花であふれ、人々が歩くだけで笑顔になれる場所。
そんな景色を、私はこの異世界に作ってみせる。
その決意とともに、夕暮れの風が完成した雑貨屋の看板を優しく揺らした。




