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『みんな作れるのに誰も作らないので、元ミニチュアコレクターが本気を出したら国ができました』  作者: eccen.
第2章 街づくり開始

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第13話 最初の移住者

「ここなら住みたいかも」


その一言で、村中の視線が女性に集まった。


荷馬車の横に立つ彼女は、二十歳くらいだろうか。


栗色の髪を後ろでまとめ、旅用のマントを羽織っている。


大きな木箱を大切そうに抱えていた。


「こんにちは」


私は一歩前に出て声をかける。


女性は少し驚いたように頭を下げた。


「こんにちは。突然すみません」


「旅の方ですか?」


「はい。でも……」


彼女はパン屋を見つめる。


次に花壇。


整えられた石畳。


街路樹。


そして小さく微笑んだ。


「こんな素敵な村があるなんて知りませんでした」


その言葉に、近くにいたモルガンが少し照れくさそうに頭をかいた。


ほんの数週間前までは、どこにでもある普通の村だった。


今は少しだけ胸を張れる。


そんな変化を、村長自身も感じているのだろう。


「私はソフィアといいます」


女性は改めて名乗った。


「各地を回って雑貨を売っていました」


「雑貨?」


私は目を輝かせた。


木箱の蓋を開けてもらう。


中には色とりどりの品物が並んでいた。


刺繍入りの布。


陶器のカップ。


木彫りの小鳥。


小さな鏡。


リボン。


前世なら何気ない雑貨ばかり。


でも、この世界ではどれも珍しい品だった。


「かわいい……」


思わず声が漏れる。


ハンナも目を丸くしている。


「この小鳥、置物?」


「ええ。棚や窓辺に飾るんです」


「飾る!」


私は思わず食いついた。


ソフィアが嬉しそうに笑う。


「そうです。飾るための雑貨です」


私はアルトを見る。


アルトも木彫りの小鳥を手に取り、ゆっくり眺めていた。


「いい仕事だ」


短い一言。


でも職人への最大級の賛辞だった。


ソフィアもそれが分かったのだろう。


少し誇らしそうに胸を張る。


「ありがとうございます」


私は木箱の中を見つめながら思った。


――この村に足りなかったもの。


それは生活必需品じゃない。


心を豊かにするものだ。


花もそう。


庭もそう。


そして雑貨もそう。


「ソフィアさん」


「はい?」


「この村で雑貨屋を開きませんか?」


ソフィアは固まった。


「……え?」


「お店は私が建てます」


「え?」


「一緒に、この村を素敵な街にしませんか?」


静まり返る広場。


ソフィアは何度も私とパン屋を見比べた。


「でも……」


「旅を続ける方が自由ですよ?」


私は首を横に振る。


「帰る場所がある自由もあります」


その言葉に、ソフィアの表情が少し揺れた。


「帰る場所……」


小さく呟く。


旅を続ける人だからこそ、その言葉は心に響いたのかもしれない。


しばらく考えたあと。


彼女はゆっくりと頭を下げた。


「よろしくお願いします」


その瞬間だった。


「やったー!」


ハンナが飛び跳ねる。


「仲間が増えた!」


ミアも嬉しそうに駆け寄る。


「パン屋の隣なら、お客様も来てくれそう!」


ソフィアは少し照れながら笑った。


その笑顔を見て、私は安心する。


きっと、この人なら大丈夫。


するとクラフトガイドが光り始めた。


【新規住民登録】


【ソフィア】


職業:雑貨職人


特殊効果


【景観評価+10】


【住民満足度上昇】


「住民満足度?」


私は初めて見る表示に首を傾げる。


アルトが横から覗き込んだ。


「街が大きくなるほど重要になる項目だな」


「知ってるの?」


「……なんとなく」


まただ。


また『なんとなく』で済ませようとしている。


私はじっと見つめる。


アルトは視線を逸らした。


ハンナがくすっと笑う。


「アルトさん、また怪しまれてる」


「慣れた」


アルトは苦笑した。


そのやり取りに、みんなが笑う。


夕暮れ。


パン屋の前ではミアが明日の仕込みをしている。


ソフィアは空き地を見つめながら、お店のイメージを膨らませていた。


ハンナは花壇に水をあげている。


モルガンは広場のベンチで満足そうに村を眺めていた。


私は少し離れた丘へ登る。


村を見下ろす。


パン屋から漏れる温かな灯り。


笑い声。


行き交う人。


まだ「街」と呼ぶには小さい。


でも。


確かに、この場所には以前なかった活気が生まれていた。


その時、アルトが隣に立つ。


「どうだ?」


「まだまだ」


私は笑って答えた。


「雑貨屋も建てたいし、花屋も作りたい」


「宿屋も必要だな」


「そうね」


二人で村を見下ろす。


アルトが静かに言った。


「君は家を作るんじゃない」


「?」


「人が集まる場所を作っている」


私はその言葉を聞いて、少しだけ考えた。


そして微笑む。


「そうかもしれない」


クラフトガイドがそっと光る。


【村発展度 35】


【次の目標】


雑貨屋を建設しよう


私は新しい設計図を取り出した。


「よし」


次は、村で一番かわいい雑貨屋を作ろう。


そう決めた瞬間。


誰もいない街道の先で、一羽の伝書鳥が王都へ向かって飛び立った。


その足には、小さな報告書が結ばれていた。


『森の村、急速に発展中。中心人物は若い女性クラフト師・リリア』


王都はまだ知らない。


この報告が、王国全体を動かす始まりになることを。

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