第12話 行列のできるパン屋
翌朝。
私は日の出と同時に飛び起きた。
「パン屋!」
今日は記念すべき日だ。
村初。
いや、この地域初かもしれない。
本格的な店舗建築の日である。
急いで着替え、設計図を抱えて外へ飛び出した。
すると。
「早いな」
既にアルトがいた。
しかも木材の山付き。
「なんでいるの?」
「起きたら面白そうだった」
相変わらず謎の理由だった。
ハンナも走ってくる。
ミアも少し緊張した様子で現れた。
そしてモルガンとグレッグ。
気付けば大勢集まっている。
私は地面に設計図を広げた。
みんなが覗き込む。
数秒後。
全員固まった。
「……店?」
モルガンが聞く。
「パン屋」
私は答える。
「店ってこんな形なのか?」
グレッグも驚いている。
無理もない。
設計図には、
赤い屋根。
大きなガラス窓。
木製看板。
花壇。
テラス席。
まで描かれていた。
「パン食べるだけなのに?」
誰かが呟く。
私は即答した。
「パン食べるからよ」
皆が首を傾げた。
私は気にしない。
美味しいパンは素敵なお店で食べるべきだ。
これは譲れない。
工事開始。
まず基礎。
石材を敷く。
次に壁。
木材を組み上げる。
大きな窓を付ける。
そして特徴的な三角屋根。
作業は順調だった。
だが。
途中で問題が発生した。
「足りない」
私は木材の残量を見る。
予想より消費が激しい。
設計にこだわり過ぎたらしい。
ハンナが青ざめる。
「完成しない?」
「する」
私は立ち上がった。
「材料集めよ!」
その瞬間。
アルトが前へ出た。
「任せろ」
嫌な予感がした。
数分後。
森の奥。
ドォォォン!
何かが倒れる音。
ドォォォン!
また音。
そして十分後。
アルトが戻ってきた。
大量の木材と共に。
文字通り山だった。
村人達が静止する。
グレッグが呟く。
「おい……」
モルガンが答える。
「ああ……」
「普通じゃないな」
普通じゃない。
全員一致の意見だった。
私もそう思う。
アルトは平然としている。
怪しい。
ものすごく怪しい。
だが今は助かった。
工事再開。
そして夕方。
ついに。
完成した。
「……」
私は息を呑んだ。
可愛い。
想像以上だった。
白い壁。
赤い屋根。
花壇。
木製看板。
大きな窓。
窓から焼きたてパンが見える。
まるで絵本の中のパン屋だった。
ハンナが叫ぶ。
「すごーい!」
ミアは涙ぐんでいた。
「本当にお店だ……」
無理もない。
今まで自分のパンを売るなんて考えたこともなかったのだから。
私は看板を取り付ける。
そこには。
【ミアのパン工房】
と書かれていた。
ミアは本当に泣きそうになっていた。
その時だった。
村の入口から声が聞こえた。
「なんだあれ?」
旅人だった。
街道を通っていたらしい。
パン屋を見て足を止めている。
さらに別の旅人。
さらに商人。
皆が集まる。
そして。
パンの香りが漂う。
ミアが試しに焼いたパンだった。
反応は早かった。
「売ってるのか?」
「食べたい!」
「まだあるか?」
あっという間に人が並ぶ。
ミアが慌てる。
「え?」
「え?」
「えぇぇ!?」
大混乱だった。
だが。
パンは飛ぶように売れた。
一時間。
二時間。
三時間。
そして。
完売。
「終わった……」
ミアが呆然とする。
パンを焼く本人が一番驚いていた。
ハンナは大喜び。
モルガンも笑顔。
村人達も興奮している。
「本当に売れた!」
「行列だったぞ!」
「すげぇ!」
私はパン屋を見上げた。
胸が熱くなる。
一軒の家から始まった。
花壇を作った。
村を整えた。
そして今。
お店ができた。
街になり始めている。
その時。
クラフトガイドが強く光る。
【店舗運営成功】
【村発展度 25】
【新規移住希望者 3名】
【雑貨店レシピ強化】
【花屋レシピ強化】
私は目を見開いた。
三人。
増えている。
そしてさらに表示が出る。
【移住希望者到着】
村の入口を見る。
そこには一台の荷馬車。
そして若い女性が立っていた。
帽子を被り、大きな荷物を抱えている。
彼女は村を見回し。
パン屋を見て。
花壇を見て。
そして笑った。
「ここなら住みたいかも」
私は直感した。
新しい仲間だ。
街づくりは。
ますます大きくなっていく。
そしてアルトは、その光景を見ながら静かに微笑んでいた。
まるで。
未来を知っているかのように。




