第5話 偽物の救恤麦札
救恤倉の奥で、未開封とされた麦袋が八つ見つかった。
私はマルガレーテ立ち会いのもとで一袋を開く。中から出てきたのは、北海向けの硬麦ではなく、王都南区で家畜用に回される安い混合麦だった。
「これじゃ冬を越せないよ」
マルガレーテが顔を曇らせる。
私は袋口の札を外し、裏へ返した。表面は北海灯台港の救恤札だが、裏紙に透かしてみると、王都港の旧契約札を削って作り直した跡がある。
「偽物です」
「麦まで?」
「札も中身もです。本物の救恤麦なら塩乾しした硬麦の香りが残ります。でもこれは湿った家畜麦の匂いしかしない」
ライナーが袋から少量の麦をすくい、黙って指で潰した。
「俺には銘柄まではわからない」
「わからなくていいです。違うと信じてください」
彼は一拍置いてから答える。
「信じる。だから証拠を重ねろ」
木箱の底を調べると、薄い送り状が一枚滑り出た。納入元は王都港ではなく、南区のハルム雑貨商会。しかも支払欄には、ヴィクトルの管理印に似た押し跡がある。
「すり替えは途中ではなく、王都の出発点で起きています」
私が言うと、マルガレーテが歯を食いしばった。
「うちは切り捨てられたんじゃなく、最初から食い物にされてたってわけか」
左遷先に選ばれたのは、ここで何も見つけられないと思われていたからだ。
だったら、なおさら見つけてやる。




