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第17話 偽りの涙は潮に溶けない

 証明は、一瞬で終わった。


 私が白い手袋を示すと、会場の空気が変わる。青染め粉、鯨油、札穴を切るときにできる親指側の擦れ。そこへ裏港帳の署名と、岩入江で捕えた夜荷の男の供述を重ねる。


「そんな……わたくしは、ただヴィクトルお義兄様をお助けしたかっただけで」


 セリーヌが目元にハンカチを当てる。けれどそのハンカチからも、札庫の青粉の匂いが漂った。


 ヴィクトルは顔色を変えた。


「匂いも涙も証拠にはならない」


「では、潮位です」


 私は静かに潮見表を掲げる。


「あなたが正規便を出したと記した夜、外海は引き潮で大型船が座礁する高さでした。無理です。動けたのは小舟だけ。つまり、あなたは正規便を出していない」


 港務局長の命で別帳庫が改められ、ほどなくして残りの裏港帳と偽札が山のように運び出された。


 私ははっきり言う。


「本物の令嬢とは、白い手袋を汚さない人のことではありません。預かった荷を、勝手に別帳へ流さない人のことです」


 セリーヌの瞳から涙が落ちる。けれどその涙は、潮の高さ一つも変えられない。


 嘘は最後まで、流れを読めなかった。


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