表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/20

第16話 艦隊契約入札の検印台

 王都港の艦隊契約入札は、春の波より騒がしかった。


 磨かれた検印台、列を作る商会、潮より香水の強い貴婦人たち。私は北海灯台港から持ち込んだ正札、裏港帳、白い手袋、潮見表を順に並べた。


「お義姉様、お久しぶりですわ」


 振り返ると、セリーヌがいた。真珠色のドレスに白い新しい手袋。だが私にはもう、それが上品さの記号には見えない。


 ヴィクトルもその隣で、すべて穏便に済ませたいという顔をしていた。


「北海で潮風に当たりすぎて、少しは気が済みまして?」


「ええ。潮は嘘を洗い流してくれますから」


 開会の鐘が鳴り、私は検印台の中央へ進んだ。


「北海灯台港からの再建報告です」


 まず正札を示し、次に偽札を並べる。穴位置、塩印の深さ、紐の繊維、そして潮をくぐった時刻。違いは誰の目にも明らかだった。


「偽札は王都港から流されました。さらにこの潮見表をご覧ください」


 私は王都沖の潮位と裏港帳の積替時刻を重ねた。


「記録上、正規船が出たとされる時刻は、外海が引きすぎて大型船が動けません。動けたのは、岩入江を知る小舟だけです」


 ざわめきが広がる。


 ヴィクトルが何か言おうとしたが、その前にライナーが私の一歩後ろへ立った。何も言わなくても、私が一人で矢面に立たなくていいように。


 瓶や花ではなく、札と潮と帳面が、今や一番雄弁だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ