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第15話 王都帰港の朝
王都へ戻る船の朝は、北海より静かだった。
甲板の上で潮見表を広げていると、ライナーが隣へ来る。今日の紙にも、王都沖の潮位と入港時刻が細かく書き込まれていた。
「緊張しているか」
向かい風の中で問われ、私は素直にうなずく。
「ええ。でも、前ほど怖くはありません」
「なぜだ」
「戻る場所があるからです」
ライナーは少し黙り、それから外套の内側からもう一枚の小さな紙を取り出した。明日以降の三日分の潮見表だった。
「王都で必要になる」
「用意してくださったんですか」
「君は時刻と潮を武器にする。なら切らすな」
胸の奥が熱くなって、うまく息ができない。
「今夜が終わったら、改めて聞かせてほしい」
「何をですか」
「北海へ戻る気があるか」
私は紙を抱え、海を見るふりをした。
答えはもう決まっている。
ただ、それを口にするのは全部終わってからにしたかった。




