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第13話 北海灯台港の再開市
北海灯台港の再開市は、灯台に明かりが戻ってから初めての大きな市だった。
正規の麦、乾魚、塩、帆布、そして灯台油。以前は王都の指示を待つしかなかった荷が、今はきちんと札と帳面を通って港へ並んでいる。
来た商人たちは、最初こそ北海の端港を侮っていた。けれど札庫と入港印を見た途端、表情が変わった。
「この港、荷の流れが読みやすい」
「夜荷が混ざらないなら安心して預けられる」
「灯台が戻ったなら、北回り航路を再開できる」
注文票と係留申請が次々と埋まっていく。
港夫たちの顔に笑みが戻った。止まっていた賃金も、今月から満額出せる見込みが立つ。マルガレーテはいつものように腕を組みながらも、誰より嬉しそうだった。
市の最後、ライナーは集まった商人たちの前で言った。
「灯台港再建の責任者は、王都から来た監査官エミリア・クラウゼだ。今日以後、北海灯台港の荷札管理と契約監査は彼女が預かる」
拍手が起きた。
王都では、私の名が呼ばれるのは責任を押しつけられるときだけだった。
けれど今は違う。仕事に対して、まっすぐ返ってくる拍手がある。
その日の夕方、王都から正式な招状が届いた。艦隊契約入札の場で、北海灯台港の再建報告を行ってほしい、と。
もう逃げる理由はなかった。




