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第11話 王都港湾局の裏港帳

 裏港帳は、捕えた夜荷の男が口にした倉庫番号から見つかった。


 王都の旧帳庫に出入りしていた元荷役頭が、ヨナスというライナーの家令を通じて書面を持ち出してくれたのだ。帳簿上、王都港は北海へ毎月一定量の灯台油と救恤麦を送っている。けれど別帳では、その三分の一が「沿岸調整分」として抜かれていた。


「名義は?」


 私が問うと、ヨナスは紙束をめくる。


「港務局特別調整費。それから、ハイネ家関連の雑貨商会だ」


 やはりヴィクトルまでつながっている。


 私は裏港帳の角を押さえた。そこには見覚えのある番号があった。照合札束の管理番号だ。


「消えた札束が別帳に流されていた」


 正規札を使えば、偽物の荷でも王都の検印をくぐれる。母の旧航路帳にあった『正札が嘘を運ぶ』という一文が、今の帳簿で裏づけられた。


「王都へ戻る理由は十分だな」


 ライナーが静かに言う。


「はい。今度は疑いではなく、帳簿で話せます」


「潮でもな」


 短い付け足しに、私は少しだけ笑った。


 王都では嘲られた私の感覚を、この人は最初から切り捨てなかった。


 だからこそ、最後まで証明したいと思えた。


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