果たし状
手紙には強力な呪いが込められていたし、やはり送り主は魔王リリスだった。
あの女、せっかくどこぞを支配したらしいのに、こんな島国に来ていていいのか? リリスのことだから、絶対に本体で日本まで来ているだろう。私を自分の手で殺したいらしいしな?
「あいつ、部下に何度か裏切られていなかったか?」
「ええ、まあ。そうですね」
それを言えばダンテもその系列か。しかし、コイツの場合、元々リリスのことを嫌いだったようだしな。
ダンテは仕事の出来ない者が嫌いらしく、私の部下もそこそこの人数、コイツのせいで退職や部署移動したからな。自分が何でもできる分、出来ないやつを見るとストレスがたまるらしい。そんなこと、我々が知った話ではないのだが、困ったことに去った者たちの分をこいつにやらせても、全て楽しそうに抱え込んで、より完成度の高い仕事を仕上げてくるタイプでな……。悪魔だからよほどのことがなければ体調を崩すこともないし、そもそも私の世話程度大した手間ではないというか……楽しいことなのでもはや趣味などと言いだす始末。コイツに追いやられた人員は血の涙を流しておったな……。
そして、この魔王リリス。
裏切られても魔王に返り咲いているところからも察しが付くが、かなり強い魔族だ。
しかし、まぁ、統治などできるタイプではなく、戦闘と異性の誘惑に全振りした存在だ。妙にカリスマがあるというか、一生尽くしたいと思う者もそれなりにいるので何とかなっている。……正直、だから殺しておきたかったのだが当時の私はまだ若く、命を奪うには少しばかり力が足りなかった。あれと戦った後は多くの血が必要だったし、無暗に食い尽くさぬよう、数年の休止期間を必要とした。
「私としても、進んで戦いたい相手ではないのだが、果たし状とやら送ってくるあたり、向こうはやる気満々なのだな」
「では、盃を返しますか?」
「絶対に無理だ。碌なことにならん。あれに返すくらいならば、私が持っていた方がまだマシというものだ」
人間との余計な軋轢を生まんでいいし。
冷静に考えてほしいのだが、我々突発的に生まれた種族と人間だと数の差があるのは当然の話なのだ。魔族同士の子でも次世代はただの『人』というケースはあるぞ。私は両親ともに吸血鬼で、私自身も吸血鬼だが、そういう存在の方が少ないのではないか?
そんなものに下手に喧嘩を売ってみろ。やり方を間違えた瞬間に袋叩きに合うに決まっているだろう。それでも、私のように圧倒的に強ければ守れる物もあるだろう。しかし、まあ……互いに争うケースが少なくないのは確かだな。普通の人間同士でも些細なことで争いが消えないのだから仕方のない話ではないか?
とりあえず、あの盃は封印処置をやり直して、私の特殊倉庫へ放り込んでおいた。
権威を示すものだからと置いていくように強く要求されたから渡したが、始めから私が保管しておくべきだったかもしれん。
「それで、挑戦は受けるのですか?」
「そうだな」
ここで断っていらんことをされても困る。
第六天に文句を言われるのも面倒だしな。というか、すでに言われているわけだが。
「まぁ、私に何かあったとしても第六天と清明のジジイが控えていることを思うと昔よりは気が楽だな」
「その方々は、我が主が頼りにするほどお強いのですか?」
「頼りに……?」
しているか?
むしろ、私が面倒を押し付けられ頼られている方ではないか? そういう問題ではない……か?
「強くは……あるな?」
特に、第六天などリリスとはかなり相性がよいのではないか?
任せてしまう方が安心かもしれないのだが、断言できる。代わりに何かかなり厄介なことをおしつけられる。
ここに住む前にかなりの厄ネタを管理させられたこともあったしな。自分で処理した方が結果的に労力が低くなる。
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