ダンテという悪魔3
それにしても、厄介な持ち物を運んできたものだと思う。
これなぁ……父上が手に入れるまでにかなりの血が流れていると聞くのだよなぁ……。
大体、悪魔の宝など碌なものでないに決まっているのに、なぜか皆これを血眼で追い求めるのだ。願いは叶ったとして、対価を払えない可能性があることを考えないのが浅はかなのか、もうそんなことを考えられる域にいない、切羽詰まった状況か。それは人それぞれであるから私に言えることはあまりないのだがな。
ダンテが私にこれを持ってきた理由だって結局のところ「数百年、『憐憫の盃』関連での悲劇を引き起こすことがなかった」というものだし。はじめと比べればダンテもかなり善良になったと思うが、ヘスティアは「性根の悪さが変わっていませんわ」と冷たい眼差しを向けていた。はは、ダンテを服従させたときの態度を見ていないから余計にそう思うのかもしれんな。
「我が主の周囲もまた賑やかになっておりますね」
「そうだな。こういうのも、悪くない」
「ええ。貴方様が魔王であった時のことを思い出します」
「もう二度とやらんが」
「心の底から面倒そうでしたからね」
本当にな! 為政者というのは民が思うより大変なのだぞ!! かといって、言うことを全て無視するわけにはいかんしな。その不満の核になっている理由によっては動かざるを得ない。
「もう少し好き勝手やっていてもよかったのでは?」
「ふん……。前領主が死んだ後すぐに現れたまだ少年たる私に従うような者が当時どれだけいたというのだ。実力と結果で黙らせるしかなかったであろう。大体、そういう時分を狙って襲撃をかけてきたお前がそれを言うか」
「ええ、楽しい思い出にございます。私、自分より強き方には心の底から服従するタイプですので」
どこか恍惚とした笑みを浮かべるダンテを一発ぶん殴ってやりたい気分になって来たな。
私は跡を継がされた直後にやってきたことをまだ根に持っているぞ。私はまだ強かったのでなんとかなったが、襲撃されていた者によってはひとたまりもなかったろうな。
「それで?」
「はい……?」
「それで、『今』の私はお前の評価基準に合格しているのか?」
そう言うと、「私は貴方様のそういうところを愛しておりますよ」と言って頬を撫でた。
やめろ。キモイ。
「もちろんですとも。我が主、フェリクス様。貴方は守るものがあった方が強い」
「ほう……なかなか聞かん論調だな」
「無論。愛によって弱くなる者もおりましょう。ですが、守るにしろ、報復するにしろ、貴方は手元にそういう存在があった方が輝いている。だから、私は貴方を生涯の『王』としたのです」
「リリスが泣くぞ」
「あれは結局煩くて面倒なクソ女ですので」
おい。それ、お前の元主。
しかし、なんというか……この男も面倒だな。
「世界を放浪していても、やはりフェリクス様ほどにお仕えしがいのある王はいませんでした。やはり、少しばかり手がかかるくらいの方が尽くしがいのあるというもの」
やはり、殴るか。
手がかかるのはお前だろうが。私ではなく、お・ま・え、だろうが!
思いきりアッパーをすると後ろに飛んだ。何も壊れていないところを見ると、きちんと手加減ができていたようだ。
うまくいってよかった。
「さて、それでは働いてもらうとするか」
とりあえず、ここに来そうなリリスの情報収集と、第六天との情報共有。清明にも話しを通しておくと協力を得やすいか。
引っかかりやすそうな太郎あたりにも声をかけて精神干渉系の魔術を防ぐことができるようにしておいてやろう。これはラウルと豆太にもしておいた方がよいな。ジークは……引っかからんだろう。私の血が流れておるし。
私の平和な時間はどうしてこうも短いのか。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。




