戦力としての採用
「フェルはなんでいつも無理やり追い返さないのぉ~!」
「我が主は私の方が好きだということですよ、アルテ」
「いや、それはない」
きちんと正してやると、ダンテに少しばかりショックを受けた顔をされた。
お前、元部下と家族兼使い魔のアルテではどちらに軍配が上がるかなんて明らかだろうが。どれだけ私に好かれていると思っているんだ。
まぁ、優秀であることは認めているが。
「それより、今日の飯どうします? ちなみに俺は中華の気分」
「あ、ズルいぞ後輩! オムライス! ふわふわのやつ!!」
「この子どもたちはどう扱えばいいのです?」
「私の子とその友人として扱えばいい。そこの小娘はこの国で敵に回したくない男の娘で、少年は友人の息子だ」
これは言っておかないと同僚にやるように意地悪をする可能性があるからな。
面白くなさそうな顔をしているが、ここにいてもやることないぞ。
「私はここでたまに依頼をこなしながらのんびり生きているだけだ。お前の活躍できるような政治の場や治安悪めの社交の場などは与えてやれんぞ」
「おや。我が主のことなので、定期的に巻き込まれているものと思い込んでおりました」
「面倒な者もいるにはいるが、特に大した問題は起きない。他所を気儘に引っ掻き回して遊ぶ方がお前好みだと思っているが」
ヴァチカンとかで随分と楽しく遊び回っていたようだしな。
ああいうことをずっと行うようであれば、私も庇いきれぬし、ここではダンテも退屈だろう。
「そういうのは、まぁ……百年くらいならば我慢しましょう。問題は、私一人であの盃を持って逃走し続けることが少しばかり難しいことですので」
「もしかして、あの女。本調子に戻っているのか?」
「そうですね。少なくとも、フェリクス様に引きちぎられた翼と四肢は戻っております」
め、面倒だな。
これはもしかすると、私が一人でどこぞに移住し、襲撃して来たあの女を撃退する方が安全ではないか? いや、あの女は性格が悪いからな。私が居なくなったこの国にやってきてラウルたちを襲う可能性が否定できん。本当に悪行に関しては擁護できん。
「反省もしていそうにないな」
「そんなことをするようであれば、魔王などと呼ばれておりませんよ」
「私に負けてその名は返上したという話であったが」
聞けば、撃退したあと他の種族を支配して返り咲いたらしい。やりそうだ。
それにしても、絶対に余計なことをして人間との均衡を崩す上に、私の支配していた領地を危険に晒したので撃退したのだがなぁ。やはり、殺しておくべきだったか。でも、あの時は私も大規模な戦争の後で疲れていたからな……。
「であれば、アルテには悪いがしばらくお前に滞在してもらった方が安全か」
私は一人でどうとでもするが、相手も相応の使い手だからな。
半人前たちと子どもとひよっこ魔女では対処できないだろう。アルテは足止めくらいできるだろうが……それでも、命が危い。隣にヘスティアとジークはいるが、やはり実力で言うと相手の方が上。
そうなると、ダンテという戦力はほしい。
「いらない! アルテ強いもん!!」
「相変わらずこの猫は生意気ですね」
「可愛いだろう」
「……そうですね」
なぜ、そんな苦虫を嚙み潰したような顔をするのだ。
可愛いだろう。アルテは。猫でも、変化していても。アルテほど美しく可愛い猫など、そうはおらんぞ。私が生きてきた中でもアルテがナンバーワンだ。
「確かにアルテは強いが、純粋な戦力で言うと、実際ダンテ以上を探そうとするとかなり困難だ。清明のジジイあたりが本気で協力してくれれば話は変ってくるが」
「俺らじゃ敵わないってことです?」
「そうだな。十年後等ならわからんが、現時点では」
ラウルにそう返すと、小娘と共に不服そうな顔をした。
仕方ないだろう。私やあれはもう災害みたいなものだ。立ち向かうべきものではない。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
ダンテは別にアルテのことを可愛いと思っていないが、主が自分の猫をナンバーワンだと思っていることは知っているので、渋々同意している。
健気で可愛いね。




