元に戻った吸血鬼
家に帰って、数日かけて血をがぶ飲みした。ラウルやダンテが「血、吸います?」と首筋を見せてきたが、何が嬉しくて子や部下の首に噛みつかねばならんのだ。拒否した。
まぁ、父の時代などは首から血を啜り、そこから自身の血を注ぐことで同族とすることを信頼の証とすることもあったようだが。だが、あれは信頼とは呼べんと今でも思う。あれは、親によっては奴隷契約にもなりかねん。
ジークは死にそうだったのでそうした部分もあるが、吸血鬼に変えた当時、かなり気を付けて交流した記憶がある。吸血鬼としての『親』の支配力はそれだけ大きなものだからな。
とはいえ、抜け道もあるが。実際、我が父は母に嫌われ憎まれ長い年月をかけて殺し方を研究された結果死んでいるしな。
「とりあえず、元の姿に戻るところまではできたか」
三日ほどしてようやく元の世界に戻れるようになった。ヘスティアは「まだ抱っこしていないのに!」と言いそうだが、絶対に思い余って抱きつぶすので拒否していて正解だったと確信している。
「出会ったときの我が主を思い出して、悪くない気分でしたが」
「お前と出会ったときはもう少し大きかったはずだが」
「そうでしたか? 幼い子の年齢と言うのは難しいものです」
小学生低学年と中学生くらいの差があるぞ。
コイツに何を言っても無駄か、と溜息を吐く。ダンテは私のことを絶対に馬鹿にしていると思うのだが。
ラウルはそんな様子を見ながら、「俺も悪くねぇ気分でしたけど」などと言う。
「なぜ……」
「いや、フェリクスって写真に写んねぇから、残ってるもんと言えばかなり昔の絵だけだろ? 小さい時のアンタが見れるってのは新鮮でいいもんかなって」
全然よくない。
というか、姿を若く見せるだけならば普段でもできるのだ。問題は血が少なくて大人の姿を維持できないレベルになるということだった。
「今度から、お薬とか、血とか持ち運んだ方が良いと思います」
小娘にそう言われて、素直に頷いた。
普段はな、そこまで血を使わんのだが。あと、あのダンジョンの性質が悪い。僅かながらでも血を持つ魔物相手であればかなり楽だったが、相手がアレだったからな……。
装備の修理費といい、本当に洒落にならん。受けたのが金を持っている私でよかったな。聖悟の装備も修理費は出してやった。それで依頼料とトントンと考えると……かけた時間など考えるとマイナスだな。家でゲームをしていた方がまだいい。
「まぁ、社会奉仕をしてやったし、またしばらくは遊ぶか」
「ゲームのやり過ぎには気をつけてくださいね」
「またラウルに没収される」
気を付けはするが、何故だろう。親としての威厳が失われているような気がしてならない。
「そういえば、第六天魔王殿より手紙を受け取っておりますよ」
ダンテの言葉に首を傾げる。
第六天ならば、メールやアプリのメッセージ、電話で連絡をしてきそうなものだが。
危険がないかだけ確かめてから、封を切ると、関西にある大型テーマパークのチケットが入っていた。
なんだ、これは。
「あ! これってあの魔法使いの学校のアトラクションがあるところ!」
「フェリクスの好きなゲームのアトラクションやグッズ、フードもあるんじゃねぇか?」
確かに私はスーパーマルスブラザーズとか大好きだが。
というか、私でなくてお前たちが行きたいんじゃないか? 目がワクワクしているし。
手紙を見ると、大阪である集まりに来いと。チケットは子どもたちが退屈せぬようにという気遣いらしい。世話になっているので、まぁ行くが……子どもたちは私を振り回す気満々だな。
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