小さくなった吸血鬼
「稀に見るクソモンスターだったな」
小さくした身体で舌打ちして、灰色の結晶に触れる。
すると、強い光を放って周囲の情景が変わっていく。ダンジョン入り口付近まで戻ったが、手のひらに残るこの、灰色の触手型の結晶を見ていると握りつぶしてやりたい気分になるな。
戦利品も置いてあるが……。
「ミミックボックスと、魔石」
「誰が使うんです?」
「悪用されれば厄介だしな」
宝箱の形をしているが、これを開くと触手が出てきていただきます、される。そんなものが戦利品。こんなもの、誰が喜ぶというのだ。殺すぞ。……もう殺していた。
仕方がない。誰かの手に渡っても面倒だし、危険物だからな。壊しておくか。
鎌を振り下ろすと、悲鳴のような音が出てきた。ああ、うん。これも魔物だったのだろうな。本当に性格の悪い。あの塔が可愛らしく見える。
「それより、ドラクルさんの服や協会への報告はどうしましょう」
「服など、協会内に入っている店で適当に買えばよかろう」
報告は聖悟がいるし、この結晶がある故、どうにでもなるだろう。
しかし、この身体では歩くのが面倒だな。迎えを頼みたいところだが……ラウルかジークが捕まるとありがたいな。
「もう少し事前準備をしておくべきだったかもしれん。この私がこんなに情けない姿を晒すことになろうとは」
「僕がいなければもう少し楽だったかもしれません。お役に立てず申し訳ございません」
「いや、お前のおかげで序盤を楽に進行できた。そう気にすることはない」
まぁ、この姿でも戦えるしな。
まぁ、聖悟の血をもらっても良かったのだが、注射器を忘れてしまったからなぁ……。人体から直接吸うのももうあまりやりたくない。昔は場合によってはそうしていたが、こう……牙が皮膚に食い込む感覚が好きではない。
「とりあえず、帰るとするか。服が合わず歩き難い。運んでくれ」
「はい!」
おっと。今のうちに連絡を入れておくか。自撮りでも送っておけばわかりやすいだろうが……私は写真に写ることができんからなぁ。
まぁ、変な嘘を吐いたこともないはずだし、大丈夫か。
「こういう時に吸血鬼というのは面倒なものよ」
「すごく限定的な面倒ですねぇ」
記録に残る存在ではない、というのはかなり面倒だと思うが。
とりあえず、ラウルとジーク双方から「行けます」という返答がきた。我が息子たちは大変優しくてありがたいことだ。
「今のドラクルさんを見たら、ヘスティアさんってどうなるんでしょう」
「興味はあるな」
この姿よりはもう少し育っていたとはいえ、少年時代の私を知っているから、そこまで驚くことがないかもしれんが。
「『産んだ?』とか言い出しそうですね」
「そこまでではなかろう」
呑気にそんな会話をしながら、ハンター協会に帰還したが、ジークに同行していたヘスティアは私を見て本当に「わたくしが、産んだ?」と言った。錯乱するな。
「ヘスティアさんはフェリクスに近づかないように」
「はーい、姉さんはこっちですよ~」
「い~や~!! フェリクス様、抱っこさせてください! わたくしにも!! フェリクス様ぁ~!!」
聖悟からラウルに引き渡された私は思わず、「ヘスティアのあんなに悲痛な声を久しぶりに聞いた」と呟いてしまった。
「じゃあ、抱っこされに行きます?」
「行かない」
潰されそうでかなり嫌だ。
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
フェリクスは家に戻って血をがぶ飲みし、2、3日後には復活するし、ヘスティアは抱っこさせてもらえずにギャン泣きする。




