普段の行いが悪いせい
昔の私は恐ろしかったという話を聞くと不思議そうな顔をされるのはどうしてだろう。
そんな疑問を口にしたところ、マデリーンに「恐れられていた時代を知らないからでしょうね」と言われた。
「マデリーンのようにあなたに決して敵わないということを知っているならば、本当の意味で敵対しようなんて思いません」
「そんなものか?」
昔からその手合いは割といたが。何なら、この間まで喧嘩を売られていた。私はそんなに弱く見えるものだろうか? ハンター協会の各位にはそれなりに怯えられているが。
やはり、若いと実力差がはっきりわからぬものなのだろうか。それとも、若者特有の恐れ知らずというものか。何も死にに来ることはないと思うのだがな。ちゃんと「未成年は見逃すが、成人は殺すぞ」と伝えてあるのだから。ちなみに、この場合の成人は二十歳以上を示す。今の世は一応十八歳で成人ということになっているが……なんというか、慣れぬからな。昔はもっと若くして大人として扱われたものだが、しばらく日本で過ごしているうちに二十歳を一区切りとすることに慣れてしまい、新しい常識にはまだ慣れずにいる。人間の決まりはコロコロ変わるから混乱する。
「マデリーンだけじゃないです。魔女のお姉さま方もすすんでフェリクス様と敵対しようなんて思いません」
マデリーンは「やろうとする方は愚かなのです」と言っている。
まぁ、大抵はそう考えるものなのだが……そうでない者もいるのでなんとも言えぬな。この間のリリスとか、まだ絶対諦めておらんぞ。
「そういえば、第六天に送ったというリリス。どうなったかご存じですか?」
「知らんな」
「あの方ったら、頭蓋骨に魂を閉じ込めて楽しんでいらっしゃったの! マデリーンにはあまり理解できないセンスだわ」
それは……私にも理解できんセンスだな。第六天、ああいうの好きそうではあるが。あいつ、義弟の頭蓋骨を盃にしたという逸話持ちだしな。とはいえ、あれも所説あるので本当にやっていたかどうかまでも知らんが。
理解できんといえば、第六天が人だったとされる時代の者たちはわけわからんやつが多いらしい。昔、酒の肴に聞いた話では、茶釜と共に死んだ強烈な武将もいたらしい。戦国時代魔境過ぎんか?
それを言うと、清明が色んな怪談と妖退治の話を始めるのだが。
とはいえ、飯が美味いし、面白いゲームもあるのでこの国から出るつもりはないが。
そんなことを思いながらコントローラーを動かしていると、低い声で名を呼ばれた。
「いつからゲームやってるんですか、アンタ」
「え。いやぁ……精々二時間ほどのはずだぞ。なぁ、マデリーン」
「いえ。もうちょっとで五時間です」
「フェリクス」
「待て。私はちゃんとアラームをかけていたはずだ」
以前、一週間ラウルに無視されたのは流石にキツかったからな。反省をしてだな……。
「あら。止めましたよ」
「止めた」
「マデリーンが楽しく作業しているのに、煩くなっては困るではありませんか」
ふと視線を落とすと、マデリーンは何か掃除機みたいなものを組み立てていた。
「いや。それは工房で作業しろ」
「嫌よ。最近、あの悪魔がマデリーンを揶揄おうと待ち構えているのですもの! 一人で籠ると嫌がらせをされてしまいます!」
それは……するかもしれん。
「フェリクス」
「はい」
「二時間と五時間がわかんねぇのがそもそもヤベェ。ゲーム控えろ」
「そんな……! 私の生きがいなのに!!」
「どちらが年長者かわかりませんねぇ……」
そもそもお前が邪魔するからだろうが!
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
フェリクスがゲームしている間は放置されるアルテもゲーム没収にはにっこり。
ラウルくんは「最近、ちょっとやり過ぎだったんで」と涼しい顔をしている。息子に縋りつく元魔王を見た同居人は慣れた顔で見ている。




