師事先斡旋
三雲から連絡があった。
「やはり、わたくしの指導をできるほどの霊力を持つ人間が見つからないということで……」
ハンター協会からのその言葉にかなり落胆しているのだろう。しょんぼりとしている。
おい、ダンテ。「美味しそうですねぇ」ではない。お前は近付くのをやめろ。絶対に碌なことにならない。そもそも、悪魔という存在が人間を堕落させる要素があるらしい。どうせだったら堕落させても全く心が痛まないようなカスだけにしろ。こういう真面目な者を狙うな。
まぁ、本人に言えば「そんな者を堕落させて何が楽しいというのです?」と心底不思議そうな顔で言うだろうが。
「そして適性が破邪ということで……」
「私とは相性が悪いな」
私はどちらかというと滅されるべき邪の立場だからな。
少しばかり面白がる私の前で三雲が頭を抱えている。そんなに絶望することもあるまいに。
「であれば、オルレアンの乙女あたりを紹介してもらえばよいだろう。ヘスティアに頼むか」
「おる……?」
かつて、神の言葉を受けて一国を救うために立ちあがった少女がいた。
しかし、その後、異端審問にかけられ、火刑に処された。後に彼女は復権裁判によって無罪が宣告され、今では最も有名な聖人の一人に挙げられる『魔女』。
ジャンヌ・ダルク。
火刑なんて選んだのが悪かった、というか、たまたまあそこにヘスティアがいたからよかったというべきか。死んだと思われている彼女だが、現在まだ生きている。
むしろ、『神の愛を受けた』おかげで今でも十代後半程度の年齢に見える。
とはいえ、枠組み的にもう『人間』とは呼べず、かといって、当時他の呼び名があったわけではないので魔女の枠組みに入れられているのはなんというか……皮肉な感じもするな。
あの界隈では神愛の魔女などと呼ばれているとか。矛盾を感じる。
「破邪の力に秀でた魔女がいてな」
「破邪なのに、魔女とは……」
「気持ちはよくわかる」
しかし、うん。あの娘の在り方は神の娘というか聖女というか、そういうものなのだ。時代が悪かったのと、あれを追い込んだ相手が悪かったせいで妙なことになっているが。
「受け入れ可能かどうかはまだわからんが、もしかしたらフランスまで留学してもらうかもしれん」
「その覚悟はございます。強くなり、多くの人々を救うことがわたくしの目指すハンターの在り方ですので」
キリッとした顔で前を向く三雲を見ながら、裏に住んでいる教え子の顔を思い出した。
太郎は絶対そんなこと言わないからな。なんというか、あいつはちょっとこの娘の真面目さを見習った方が良いし、この娘はもう少し太郎の雑さを見習うと良いと思う。
「何事も、ほどほどがよいぞ」
真面目過ぎて融通が利かないのも苦労をするからな。聖悟も最初は苦労をしていた。しまくっていた。
結果的に今は妙な方向に振り切れているが。なんであんなに懐いたのだろう。
「それでは、ダンテ。お前は行くな。絶対に余計なことを言う」
「おや。我が主は私のことを信用していないのですか?」
「信用しているとも」
必ずヘスティアをキレさせるという信用がなぁ!!
いつも読んでいただき、ありがとうございます。
ダンテは泣き真似をした。
効果はないようだ。




