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よくある転プレもの  作者: 場東柿生
第二章 「償いしたい系主人公」
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主人公が再燃するというテンプレ

まずは、遅れて申し訳ありませんでした。

ブックマークと評価を見て、励みになりました。

また遅れると思いますが、気長に待っていただけるとありがたいです。

 耳を澄ませば、無邪気な子供の声が聞こえた。



 とりあえずこれからのことを考えつつ歩いていると、大きい山の麓に着いた。



 そこで、子供たちが取っ組み合いをして遊んでいる。



 雨が降り始めた。ひどく冷たい雨は、私の体温を奪っていった。



 雨が降っているというのに子供たちは、その雨にも負けず、さらに元気が増したかと思うほどに、遊び続けていた。



 私は、それを眺めていた。座れそうな切り株があって助かった。雨風は凌げないが、座れるだけましだ。



 思えば、あんな風に誰かと遊んだことはなかった。



 私は、一人だった。



 物心ついたときには、本当の親はいなかった。だから、自分が捨てられたのかどうかもわからない。生まれるのと同時に親は死んだのか、それともめんどうくさくなったのか。



 まあ、きっと捨てられた。



 私の支えは、親と呼べる存在は、お婆ちゃんだけだった。



 でも、もういない。



 そろそろ行こうと思って、立ち上がった。



 雨は、いつの間にか止んでいた。




×


 


 まずは、仕事を探さなければならない。こんな私でも雇ってくれる、仕事。



 汚れ仕事しかないだろう。



 私がまっとうな仕事に就けるわけがない。就けないからこその、生きていけない、なのだし。



 だからといっても、殺しはしない。してはならない。



 私の生きる理由は、あくまで罪滅ぼしだ。さらに罪を重ねるなど、言語道断だろう。



 しかし、それをしない汚れ仕事、というのは存在するのだろうか。



 まっとうな日陰仕事ならばあるだろう。しかし、まっとうなところが私を雇うとは思えない。



 仕事を探すというのは、難しい。




×




 ひもじい。



 こう思ったことは幾度となくあるが、この日のそれは尋常ではなかった。



 三日ほど、山間を歩き続け、足に限界も来ている。



 それにもう二日はりっぱな食べ物を口にできていなかった。出所したとき渡された食べ物も底を尽き、昨日も草を食べた。お腹には全くたまらなかったが。



 水は川の水を飲めばよかったからまだましだったが、草はあまり食べたくない。おいしい要素がどこにもないのだ。



 苦い、硬い、冷たい。そんな三大不味要素を全てクリアしていた。



 贅沢をいえる立場ではないことなど誰よりも知っている。知ってはいるが、まだ理解できていない。



 どれだけ苦しかろうが、絶対に生きなければならないことも、知っている。でも理解できていない。



 実感がまだわいていないのだ。結局。



 誰か、私をどん底に落としてくれないだろうかと、今日も思いながら草を食んだ。実感がわけば、そんなことをいえるわけがないのだ。



 この草は、意外とおいしいかった。




×




 限界が来ている気がした。



 今はなんとか木の枝で体を支えられているからいいものの、誰かに棒を蹴られて手から離れてしまえば、私はたちまち崩れてしまうだろう。



 もう少しで、山を越えられる。ここが最後の坂道であることは、前に来たことがあるから知っていた。



 だがもう、一歩も踏み出せそうにない。



 ふっと、棒を持つ手の力が抜けた。



 逆らうこともできずに、膝から崩れ落ちる。



 何度でも、いえることが一つだけある。どれだけひもじくとも、声が枯れていようとも、いえることが一つだけある。



 私は、みじめだ。



 私が今向かっている村も、田舎だからなんていう理由で選んだのだ。



 みじめだし、屑だった。



 ――死にたい。



 思いたくなかったのに、ついつい思ってしまう。



 やはり自分はどこまでも、みじめで、屑で、弱かった。




×




 何とか越えれた。無様に地面を這いつくばって、さながら虫のごとく縮こまった。



 そして草も食べた。



 もう、ほとんど虫なのではないだろうか。



 虫は嫌いだ。好きではない、じゃなく嫌い。



 これは曖昧さの一つも残さない明確な嫌悪だ。私は虫が嫌い。



 どんな目に遭おうとも、絶対に変わらない確定的なもの。



 私のこの好き嫌いは、一生変わらない。



 少し歩くと、遠方に小さい村が見える。あれが、私の目的地だ。



 昔、お婆ちゃんに連れて行ってもらった村。ここから見た景色に変わりはなく、村人達はいつもと変わらない日々を過ごしていたことが見て取れた。



 木で作られた門を通る。”カテルピ”という文字が見えた。そういえば、こんな名前の村だった。



 村に人影はなかった。まあ仕方ないだろう。日が沈んでからずいぶん経つ。逆にいるほうがおかしいだろう。



 私が頼ろうとしているのは、トレッドという人だ。お婆ちゃんの昔からの友達らしいから、きっと助けてくれるだろうという期待を、厚かましくもしていた。



 確かこの家だったはずだ。羊を飼っていたはずだから、まず間違いない。



 来たのはかなり小さかった時だから、あまり自信はないが。



 この時、もしも自己嫌悪に苛まれていなかったら、空腹状態でなかったら、疲労していなかったら、もう少しましな選択ができたかもしれない。



 止める思いを無視して、ドアをノックした。




×




 思いのほか、トレッドさんは早く出てきた。



「誰だ! こんな夜更けにきやがって!」



 ものすごい剣幕だった。少し酒臭い。酔っ払っているのかもしれない。



「私です、メイです。ここで話すのも悪いですから、中に入れてはくれないでしょうか」



「メイだぁ? ……ああ、あれの娘か」



 トレッドさんは少し落ち着いたのか、「まあ、入れ」といって家に入れてくれた。



 ほっと、ため息をついた。どうやら印のことは知らないらしい。



「それで、何のようだ。こんな夜更けに」



「何か、お手伝いをさせてくれないでしょうか。実は――」



 事の端末を話した。殺しのことは伏せて、多少嘘も混じっていたが。トレッドさんの反応は、微妙だった。



 当然だろう。いくら友達の娘だからといって、話が急すぎる。身なりも汚いのも相まって、余計に印象を悪くしている気もした。



「まあ、とりあえず今日は泊まっていいぞ。疲れているだろう。仕事については、考えておくよ」



 そういってトレッドさんはベッドを指差した。あれで寝ろということだろう。木にもたれかかるよりはましだ。



「あの、いいんですか。ベッド、一つしかないみたいですし」



「ああ、大丈夫だ。寝床は別の場所にあるんでな」



 それを聞き安心して、倒れこむように、枯れ草のベッドに倒れた。




×




 甘い、甘い夢を見ていた気がする。



 夢とは、いろいろと理由付けされているものの、結局は欲望のことだ。



 それを今、嫌というほどわからされている。



 しかし、よくよく考えてみればわかったことだ。



 印のことを、知らないというほうがおかしいのだ。



「出てけこのクソ野郎が! 俺のことも殺す気だったんだな!」



 勘違いしたのは、この人が酔うと細かいことは気にしなくなるということを忘れていたからだ。お婆ちゃんがいっていたこと、自分で見たことを忘れていた。



 バシャッ。という音がして、急に体が冷やされていくのを感じた。



 水をかけられたのだと気づくのに、数秒かかった。



 体が、引っ張られている気がする。ドアが開く音が遠くから聞こえた。



 体に衝撃が走った。



 いつの間にか、視界には茶色が広がっていた。地面に蹴飛ばされたのだ。



 ――これが、現実だ。結局こんな風に蹴飛ばされて、邪魔者扱いされて、苦しんで、いい思いなんて何一つせずに死ぬ。



 これが私の人生だ。



 それを認めてしまうのは、やっぱり悔しくて、悲しかった。



 それでも泣かない。



 どれだけ空腹だろうと、悲しかろうと、痛かろうと、嬉しかろうと、泣かない。



 私は、生きる。




×




 トレッドさんは、あの後パンを一つ恵んでくれた。情けか、それとも復讐されることが怖ろしかったのか、どちらかは知らないが、ありがたかった。



 不思議と、私はあの人のことを恨んでいなかった。パンを恵んでくれたから、なんていう理由じゃなく、人として、なぜか恨めない。



 それはさておき、本当に、どうしようか。



 頼る当ては、もうない。友達はいないし、そもそも関わったことのある人がほとんどいない。ずっと家にこもって仕事をしていたから、友達は作ろうとも思わなかった。



 とりあえず、さっきのパンに元気を貰って、この村を探索することにした。



 道行く人はまばらだ。少ないからといって、視線が変わったわけではないが。



 村の規模は小さく、住居が十数ある程度。それと、村外れに教会が一つあったはずだ。


 そういえばここらは牧畜が盛んだった気がする。トレッドさんの家もそうだった。



 とりあえず一番期待できるのは、教会しかなさそうだ。



 どうせ、期待は外れるのだろうけど。

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