19話 VSミノタウロス~1~
(――問題は、どうやって倒すかだけど、、、)
目の前にいるのは『神鋼』を取り込んだことによって強化されたミノタウロス。
知能は低めみたいで、今も、姿を隠すスキルを使っている俺に気づいていない。
なので、先手を取れるのは確実だと思う。
(ただ、肝心の決め手があれしか思いつかないんだよな)
問題はミノタウロスのステータスが耐久寄りなことである。
他のステータスも軒並み高いので、戦闘になったら苦戦は必須だろう。
一応、勝てると言い切れる手が2つほどある。
1つ目は、聖刀『氷面鏡椿』のスキル【一刀両断】だ。
【一刀両断】は、月に一度しか使えない代わりに、スキルを発動した状態で攻撃が当たりさえすれば相手を絶命させることができる。
このスキルなら、あのミノタウロスにも効果はあるだろう。
ただ、このスキルは出来ることなら温存しておきたい。
【一刀両断】は月に一度しかつかない。
前回【一刀両断】をダンジョンのボスであるフルメタル・ゴーレムに使ってしまい、そのせいで勇者である剛田と戦った時や魔族のイービルと『神鋼』を取り込んだモルとの戦いの時に、【一刀両断】を使えなくなってしまった。
今回ここで使ってしまった場合、1ヵ月経つまでに使いたいタイミングがくるかもしれない。
ミノタウロスも結構厄介そうな相手ではあるが、そこまで切羽詰まる状態ではないので、出来ることなら温存しておきたいのだ。
2つ目は魔法『紫炎葬送』だ。
ミノタウロスと同じ『神鋼を取り込みしもの』であるモルを倒した時に使ったあの魔法なら、あるいはミノタウロスを倒すことができるかもしれない。
ちょうどミノタウロスは俺に気づいていないので、魔法を準備する時間はある。
ただ、これにも問題はある。
――辺りに与える被害が大きいのだ。
今まで1人も村人を見つけていないが、もし近くにいた場合、その人も殺してしまうことになる。
サラさんの手前と、それに俺の精神安定上、取りたい手段ではない。
――結果、どちらも積極的に取れる選択肢ではない。
(どうするか、、、)
俺の今の、最大の攻撃手段は――
・聖刀『氷面鏡椿』の【一刀両断】
・戦力級の魔法『紫炎葬送』
・聖剣2振りの剣核開放による、ステータスを上げて物理で殴る
――の3つぐらいだ。
上の2つは、先ほどの理由からなるべく遠慮したい。
聖剣2振りの剣核開放も、いくら旅のために聖剣を増やしたとはいえ、聖剣の使い捨ては遠慮したいところではある。
(――あれ? これ八方塞がりじゃね?)
それぞれ、できれば遠慮したい程度の理由だとはいえ、思いつく手はどれも使えないとすると、打てる手がない。
出来ることと言えば、聖剣と魔剣を使って普通に殴り合うことぐらいだ。
それにミノタウロスの称号『神鋼を取り込みしもの』ってことは『神鋼』もすでにない可能性すらある。
痛い思いと危険な思いまでして、頑張る理由も薄い。
(――これは逃げる方がいいかもしれないな)
今すぐターニアに戻り、この現状を伝える。
ミノタウロスの鑑定の結果も合わせて伝えれば、避難するなり何かしらの対応を取るだろう。
もともと、こんな化け物は勇者が対応すべき問題だ。
一介の鍛冶師が、どうこう出来る問題ではないはずだ。
――まあ、俺も勇者の称号はあるけど。
(それに、サラさんに倒してくるって言っちゃったんだよな)
サラさんには、結構自信満々に宣言してしまった。
サラさんは半信半疑みたいな感じで聞いていたけど、無理そうなので帰ってきました、はさすがに恥ずかしい。
それに、勇者が対応すべきとは言ったけど、その勇者である剛田はすぐに動けるかわからない。
剛田をぼこし、聖剣『エクスカリバー』を失わせる原因も俺にもあるのだし。
(やっぱり、俺がやるべきだよな)
――よし!
決めたぞ!
とりあえず普通に戦ってみて、駄目なら聖刀『氷面鏡椿』の【一刀両断】を使うことにしよう。
――決めたからには、迅速に行動を始めよう。
まずは、気配を殺しながらミノタウロスの背後に回り込む。
戦闘用の聖剣に替えると【透明化】の効果が切れてしまうので、ミノタウロスの視界の外に居なければ折角の不意打ちのチャンスを逃してしまう。
次は、初撃をどうするかだ。
もしかしたら、不意打ちで防御もさせなければ一撃で倒せるかもしれない。
倒せなかったとしても、ダメージを与えられれば大きい。
――そういえば、ちょうどいいスキルを持った魔剣があったな




