14話 製鉄・玉鋼づくり
「――部屋を貸して欲しい、、、 ですか? もちろん、シロウさんのご要望でしたら断るつもりはありませんが、理由を聞いてもいいですか?」
俺は今、ウルズさんの家に来ている。
一応ウルズさんも病み上がりなので、大勢でけしかけるのは良くないと思い、ミミとココネとシェーラは来ていない。
なので、今いるのはウルズさんとその隣にルウ、あとは俺の3人だけだ。
――で、なぜ、ウルズさんの家に来たかと言うと。
刀を打つための場所を探したものの、お目当ての家が無かったのだが、その解決案としてココネが、ウルズさんの家を借りるのはどうか、と提案したのだった。
ウルズさんの家は郊外になり、近くに民家も数えるほどしかない。
さらに、ウルズさんもルウも俺の事情を知っている上に、助けた恩があるので、多少の融通は効く。
さらにさらに、家を買おうと思えばそれなりの大金が掛かるが、その分を部屋を借りる代金として、ウルズさんに払うことができる。
――つまり。
俺は刀を打つ環境が手に入って嬉しい。
ウルズさんとルウは、厳しい生活を強いられているのでお金が貰えて嬉しい。
という、WIN ― WINの条件になるのだ。
「――まあ、そんなわけで。製鉄するのと刀を打つために場所が必要なんですけど、不動産屋に聞いたんですが、いい物件がないみたいで、、、 もちろん、お礼はします」
「なるほど。もちろん構いませんよ。それに、お礼も結構です。なにせシロウさんは私の命の恩人ですから」
「いやいや。部屋を借りられなかったら、新しく家を買わなきゃいけませんので、それに掛かるお金を考えれば安いものです。それに、俺の気が収まりません」
たとえ、命の恩人でもお金の勘定はするべきだろう。
まして、俺はお金に困っているわけでなくて、ウルズさんはお金に困っているのだから。
「ですが、、 いえ、そうですね」
俺はお金を払うことだけは譲るつもりがないことに気づいたのか、ウルズさんが引くような態度を取った。
そして、ルウを小声で話を始める。
(ここは、少し心苦しいですが、シロウさんのお気持ちに甘えましょう)
(でも、お母さん。そこまでシロウさんのお世話になるのは、、、)
(だったら、ルウがシロウさんにお礼をしましょう。具体的にはお嫁さん、、、は、あの3人がいるから難しいかもしれないから、愛人ということで)
「――えええええっ!!!!」
急に、ルウが大声というか悲鳴を上げた。
ルウの顔は真っ赤に茹で上がっていて、チラチラと、俺を伺うように見てくる。
一体何の話をしていたのだろうか。
(――ちょっと、お母さん!)
(あら? いやかしら? でも、シロウさんはルウを混血魔だからと言って差別することもない。お金持ちで誠実そうでもある。シロウさんほど条件のいい人はいないと思うけど?)
(そうかもしれないけど、、、)
(煮え切らわないわね。まあ、いいでしょう。別に今すぐでなくていいですし、ちょうどシロウさんも暫く家に来てくれるみたいですし)
――どうやら、2人の相談は終わったらしい。
先ほど悲鳴を上げたルウの顔色は、未だに赤いままだけど、大丈夫なのだろうか。
「――シロウさん」
「なんでしょうか?」
「恥ずかしながら、私には今お金がありません。なので、シロウさんのご厚意に甘えさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「もちろんですよ。もともと頼み込んだのは、俺の方ですから」
こうして、ただ部屋を借りるだけとしては破格の値段で、ウルズさんの家の1部屋を借りることになった。
まあ、口止めなどのことを考えれば適正な額だろう。
――別に、2人のことを考えて多めに渡したわけでは、決してない。
◇◆◇
「――ふう、、、 こんなものかな」
町で仕入れてきた鉄鉱石を『魔法炉』の応用で製鉄する。
初めての製鉄の作業だけど、昔、鍛冶の修行の一環で見たのを思い出して、なんとか形にすることができた。
そうして、出来上がったものを鑑定してみると。
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名前:玉鋼(最上級和鋼)
レアリティ:4
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――どうやら、ちゃんとした物が出来たみたいだ。
「よし。あとはもう少しこの玉鋼を作って、と、、、」
実は玉鋼で日本刀を打つ場合。
最等級の和鋼である玉鋼でも、その全部を使うことはない。
いくつかの塊の玉鋼を砕き、その中のさらに良いところを厳選して使用するのだ。
なので、最終的に必要になる玉鋼は、刀1振りの倍程度必要になる。
魔法によって、日本で見たのに比べれば随分簡単な作業だが、意外と見極めが大変な作業を何とか繰り返し、目安の量の玉鋼を作ることができた。
そして、その玉鋼を使い日本刀を打ち始める。
――そういえば、これが異世界で初めてしかっり打った『日本刀』になるかもしれない




