11話 協力者
「――それでは、シロウさんはガント村で『神鋼』を買いたいんですか?」
魔素中毒を治療したウルズさんの経過観察のために、ウルズさんの家に訪れた。
ウルズさんの経過は順調で軽い診断をした後、会話は自然と俺とルウの出会いについてになった。
それで『神鋼』を手に入れるために旅をしていて、偶然ルウと出会ったことを話したのだ。
「そのつもりなんですが、、、」
「ガント村はダークエルフの村ですからね。シロウさんが入るのは難しいですね」
「そうなんですよ」
もともと、ここターニアに来たのは、ガント村に入る方法、またはガント村に入ずとも『神鋼』を手に入れる方法を探すためである。
ウルズさんの治療というイレギュラーも解決できたので、これからは本来の目的のために動こうと思っているところだ。
「でしたら、私に考えがあります!」
「――っ! 本当ですか?」
「ええ。私の知り合いに1人ダークエルフがいます。彼女ならきっと協力してくれると思います」
「いいんですかっ!」
「もちろんです。シロウさんは私の命の恩人ですから、このぐらい当たり前です!」
えっへんという擬音と、ぽよよんっという擬音と共に、ウルズさんはその大きな胸を突き出すように胸を張る。
そういえば、かなり痩せていたはずなのに、胸が大きいままのは何でなのだろうか、、、
まあ、そんなことはともかく。
どうやら、ウルズさんの知り合いを紹介してもらうことで、『神鋼』の方もどうにかなりそうだ。
戻ったらミミ達にも、説明しないと。
――やはり人助けはするものだ。
◇◆◇
「――と、いうことになった」
「これで『神鋼』が手に入りますね!」
「やっと、なの」
「おめでとうございますわ」
宿に戻った俺は、さっそく3人に事情を説明していた。
「それで、ウルズさんの体調のこともあるし、そのダークエルフの人の都合もあるから、紹介してくれるのは、7日後ぐらいになるらしい」
「それではしばらくは」
「シロウ様と一緒に」
「デートが出来ますのっ!」
「うん? まあ、デートはともかく、暫くは暇な日が続くし、別にやらなきゃいけないことも特にないから、大丈夫だけど」
喜んでくれるのは素直に嬉しいことだが、特に用事もなく3人で一緒にいるのは普段通りのことではないのだろうか。
そんな疑問を彼女たちに投げかけてみると、、、
「じゃあ、3日間は1人ずつシロウ様とデートするの」
「賛成です」
「いいですわね!」
――事態が悪化した。
まあ、そんなわけで。
・ミミと、少しお高めのレストランで食事デートをしたり。
・ココネと、美人エルフが演じる、ちょっと過激な劇に連れていかれたり
・シェーラと、屋台の食べ歩きや、ただの散歩みたいな、庶民デートをしたり
残りの日は4人でターニアの有名どころを回ったりした。
少々、精神的に疲れはしたものの、充実した楽しい日々だった。
そして、7日後。
――ウルズさんにダークエルフを紹介してもらえることになった。
◇◆◇
「――初めまして、私はサラと申します」
目の前には、少し肌が浅黒く、エルフ同様の先の尖った耳が特徴で、スレンダーな体型をしたダークエルフがいた。
場所はウルズさんの家。
相手方も目立つことが嫌いらしく、街中で会うことは反対したので、こうしてウルズさんの家で紹介してもらうことになった。
「初めまして、シロウといいます」
「それで早速ですが、なんでも私にガントの村で買ってきてもらいたいものがあるそうですが」
「はい。『神鋼』を買ってきてもらいたいんですが」
「『神鋼』、、、ですか? 失礼。ウルズの恩人だそうなので、私も極力協力するつもりですが、理由をお聞きしてもいいですか?」
――一瞬。
『神鋼』というフレーズを聞いた瞬間に、サラさんの目に怪訝な光が落ちた気がした。
理由はいくつか考えられるが、おおよそ有力なのは、俺が『神鋼』を手に入れようとする悪人かもしれない、、、
という考えが、頭をよぎったのだろう。
(――ここは、下手に誤魔化さない方がいいな)
どうせウルズさんには魔剣を作るのを目の前で見せてしまっている。
それにルウにも、ウルズさんを治療した手前、魔剣のことは話している。
なので、俺が『カメリア』であることぐらいは話しても構わないだろう。
それよりも『神鋼』の方が優先だ。
「いろいろ言葉で説明するよりも見せた方が早いですね」
【アイテムボックス】から、オリハルコンのインゴットを取り出し、机の影でばれないように聖剣を装備する。
「――【武具創生】」
適当にMPをつぎ込んで魔剣を作成する。
それと、鑑定石をセットでサラさんに渡す。
「どうぞ、鑑定してみてください」
「――? わかりました、、、、」
サラさんが、少し戸惑いながらも、渡した鑑定石で魔剣を鑑定する。
「――!? まさか、本当に魔剣ですか!?」
「一応ね。俺は『カメリア商会』のお抱え鍛冶師の『カメリア』なんだけど。あ、俺が『カメリア』であることは隠しているから、他言無言でお願いします。それで『神鋼』が欲しいのは、もちろん、剣を打つためです」
「――――少し、待ってください」
サラさんがそれだけ言って黙り込んでしまう。
いや、黙るのとは少し違う。
――考え込んでいる、のだろう。
そして、答えが決まったのか、サラさんが顔を上げた。
「残念ですが――」
――『神鋼』を買わせられない。
そう続くと思われたサラさんの言葉を、ウルズさんが止めるように口を開いた。
「お願い、サラ。シロウさんは決して悪い人じゃないから」
サラさんの瞳をじっと見つめるウルズさん。
俺にためにしてくれているというのに失礼だけど、少し百合っぽく見えてしまったのは、胸に仕舞っておこう。
そうして、少しの間(熱烈に)見つめあっていた2人だが、、、
溜息と共に、サラさんの方が先に折れた。
「――わかりました。ウルズの恩人ですし、私に出来る範囲で協力します」
「ありがとう、サラ!」
「ありがとうございます」
――なんとか、協力を得られることになった




