10話 治療 ~4~
「――これが、魔素、か、、、」
新しく作り上げた魔剣『マニピュレート』を装備すると、今までは分からなかった『何か』が感じ取れるようになった。
おそらく、これが魔素なのだろう。
魔素は空気中にも存在しているどころか俺の中にもあった。
そして肝心のウルズさんの中には、異常なほどの魔素が存在していた。
(とりあえず、いきなりウルズさんに使うのは躊躇われるから、空気中の魔素に干渉してみよう)
「――【魔素操作】」
魔剣のスキルを発動させたとたんに、感じ取れていた魔素に干渉できるようになった。
さすがに手足のようにとはいかないが、水平移動や上下移動程度の簡単な動きは問題なくすんなりできた。
この調子なら、と思い、今度は俺の中にある魔素にも干渉してみる。
腕や足など一部に集めてみたり、全身に移動させてみたり、空気中の魔素を体に取り込んでみたり、逆に出してみたり。
最初は、しどろもどろだったが、体の中の魔素に干渉していたのが良かったのか、だいぶ魔素の操作が上手くなってきた気がする。
――これなら、ウルズさんに使っても問題ないだろう。
「――ウルズさん。今から、あなたの中にある魔素を外に出します」
「お、ねがい、します、、、」
了承を取ってから、ウルズさんの中にある溢れるほどの魔素に干渉する。
これだけの量があると逆に簡単で、すぐに半分ほどの魔素を外に出すことができた。
残った半分の魔素をさらに体内に出していき、俺やルウ程度になるぐらいまで続ける。
そして体感で3分程度。
遂に、ウルズさんの体内の魔素が平常と思える量まで減らせることに成功した。
「――どうですか?」
「すごい、、、! 今までが嘘のように体調が良くなりましたっ!」
さすがに、痩せていた体が戻ることはなかったが、顔色は健全な人のそれと変わらないものになっていた。
ステータスも鑑定してみると、()内に表示されていた元のステータスになっていた。
「――ふう。治ったみたいですね」
「本当にありがとうございますっ!」
ウルズさんは上半身を起こし、丁寧に頭を下げる。
少しばかり震えが残っているものの、体調の方は良さそうだ。
――ふう、、、
これでルウとの約束は果たすことができた。
ただし、問題が一つ。
(――ウルズさんの中にあった大量の魔素、、、 このまま放置はさすがにダメだよな)
ウルズさんの中にあった魔素は、今部屋の中に溢れている状態だ。
このまま魔素を放置したら、またウルズさんが、もしくは今度はルウが、魔素中毒になってしまうかもしれない。
――何か、他の物に入れて保管したほうがいいかもしれない。
(そうだな、、、 ――とりあえず、金属でいいか)
手持ちで一番余っているのはミスリルだ。
そのミスリルのインゴットを【アイテムボックス】から取り出し、空気中に漂っている魔素を詰め込んでいく。
そして出来上がった魔素入りミスリルのインゴットを【アイテムボックス】に放り込む。
そのうち、どこかで処分すればいいだろう。
――ともかく、これで治療は終わりだ。
◇◆◇
「――この度は本当にありがとうございました!」
「お母さんを助けてくれて、ほんとにありがとうございます!」
ウルズさんの治療が終わった次の日。
経過観察のため、ウルズさんを訪ねた俺を、二人が頭を下げながら迎えてくれた。
その後、家の中で【超高位鑑定】を含め、いろいろと調べてみた。
ウルズさんの経過は順調で、ステータスに異常もなく、胃に負担がかからないお粥などは食べれるようになったらしい。
「それで、お礼の方なんですが、、、 すみません。お金が、その、なくて、、、」
そういえば、かき集めたお金はルウが魔法薬を買った時に使ってしまったはずだ。
ルウの話では父親はすでに亡くなってしまっているみたいで、かなり苦しい生活を余儀なくされていたみたいだし、さすがに彼女たちからお金を取る気にはなれない。
「いいですよ。これも成り行き。運が良かったと思ってください」
「ですが! これだけのことをして頂いたのに、お礼をしないのは、、、」
チラッと、ウルズさんの視線が部屋の隅に置いてある冷蔵庫に向いた。
ウルズさんが言う、これだけのこととは、治療だけのことではない。
ウルズさんの療養のために、成長期であるルウの栄養のために。
結構な量の食材を買って差し入れしたのだった。
「別にお金には困っていないですから」
「では、体で払えとのことですね。――仕方ありません。きっと夫も一度くらいなら許してくれるでしょう」
そういって、ウルズさんは自ら服のの肩の部分をずらし、その肌をチラッと露出させながら、近づいてくる。
「――ちょっ!? 待ってください!」
「――お母さん!? 何を言って!?」
「うふふ。冗談です」
息がかかりあいそうなほど接近した後、笑いながら元の位置に戻り、乱れた服をもとに戻すウルズさん。
昨日まで、床に伏し、死に瀕していたとは思えない。
(――冗談を言えるほど、元気になったと喜ぶべきかもしれないけど)
「では、私ではなく、ルウの体で手を打ちませんか?」
「――お母さん!?」
「あら? ルウはシロウさんのことが嫌いなの?」
「そ、そんなことはないけど、、、」
「じゃ、いいじゃない」
「そういう問題では、ないですっ!!!」
(――これは、元気になりすぎたかもしれないな)
まあ、話の内容はともかく、ルウもウルズさんと話せてとても嬉しそうにしているので、良かったとしておこう。
――ただ、そういう手の話題は、どう答えればいいか、マジでわからないから遠慮してもらいたいものだ




