05話 混血魔(ハーフ)
「――エルフと魔族の、ハーフ?」
目の前の少女――名前は、、、あっ、、、
名前をまだ聞いてなかったっけ。
「そういえば、君の名前は何て言うの?」
「――えっ? あ、はい、私はルウと言います」
「そっか、俺の名前はシロウ」
「は、はい。シロウさんですね――ではなくて! 一体どうしてですか?」
急に我に返ったようにルウと名乗った少女がまくし立ててくる。
「どうしてって、何が?」
「私、今、結構なことをカミングアウトしたと思うんですがっ!」
「――ああ。そういえばエルフと魔族のハーフなんだよね」
「そうです。って、それだけですか?」
それだけって、他に何かあったかな?
あ、ミミが魔剣を構えていることか。
「――ミミ、剣を下して」
「わかりました」
俺が言うと、ミミはすんなりと受け入れ、魔剣を鞘に戻す。
先ほどまでは警戒していたみたいだけど、今は大丈夫みたいだ。
まあ、最初は魔族だと思ったから警戒していただけだからな。
「――じゃなくて、私は魔族の血を受け継いだ混血魔なのですよ? もっと違う感想があるんじゃ、、、」
「あ、そういうことね」
魔族と違う種族の子どものことをただのハーフではなく、蔑みの意味を込めて混血魔ということがある。
それは魔族が悪い種族で、その子どもだからではない。
そもそも、この世界には魔族と呼ばれる種族が2種類いる。
ざっくり言うと魔王の配下かそうではないか、になる。
――と、言うのも、、、
魔族は、大きな魔力が長い年月をかけ、意識を持ち、肉体をもったことで生まるらしく、その末裔が今生きている魔族だ。
それとは別に、魔王が自らの魔力を使って生む魔族がいる。
魔力から生まれた者ということで、生物学的に同一視され、どちらも魔族と呼ばれるのだ。
本来は、魔王から生まれた魔族だけが、イービルのような悪い魔族ということになる。
ただし、人間(他の種族も含めて)は、魔王の配下と生物学的に同じという理由だけで、魔族全般を排斥するような動きがあるのだ。
一応、国自体は魔王の配下ではない魔族の存在は認めており、いろんな国に住んでいるものの、彼らが順風満帆な生活が行えるかというと、厳しいものがある。
なので、ほとんどの善良な魔族は人目につかないような辺境で暮らしている。
そんなわけで、別に魔族だから悪いというわけではないのだ。
むしろ、魔王の配下の魔族は他の種族と子どもを作ることはありえないので、混血魔であるルウは、そう意味でも安心できる。
そもそも異世界から来ている俺には実害が無ければどんな種族だろうと関係ない。
――むしろ、こんな可愛い子を無下にすることなんて出来るわけがないのだ。
「――確かに他の人じゃ、乗せてくれないかもしれないね」
「そうなんです、、、 ずっと断られて、、、」
今までのことを思い出したのか、ルウの目に光るものが浮かぶ。
混血魔ということで様々なことに遭ってきているのだろう。
「わかった。目的地が一緒かわからないけど、出来る範囲なら一緒で構わないよ」
「本当ですかっ!? ありがとうございます!」
さすがに、こんな顔をされたら断ることはできない。
それに皆も認めてくれるだろう。
「とりあえず、俺とミミの他にもう2人いるから、顔合わせをしようか」
「わかりました!!!」
――俺はココネとシェーラを呼びに行った。
◇◆◇
「――じゃ、自己紹介をしようか。さっきも言ったけど俺の名前はシロウ。しがない成金さ」
「私はウィルドン王国、現国王ウエス・トリアーナ・ウィルドンの一人娘、シェーラ・トリアーナ・ウィルドンですわ」
「私はシロウ様の奴隷でミミと言います」
「同じくシロウ様の奴隷のココネなの」
「あ、はい。私はルウと言います。見ての通り混血魔です。――って、ウィルドン王国の王様の一人娘って!?」
ルウが驚きのあまり呆然としている。
まあ、驚くのも無理もないだろう。
俺だって逆の立場なら驚くに決まっている。
そういえばシェーラのフルネームって初めて聞いたかもしれない
ちなみに、ウィルドンの国王の名前は手紙を書くときに調べた記憶があるような、ないような。
まあ、今は関係ないから気にしないでおこう。
「それで、ルウの目的地ってどこなの?」
「はい。私の目的地はターニアです」
「ターニアって、、、 ちょうど俺たちもそこへ行くつもりだよ」
「本当ですかっ!」
『神鋼』が採掘されたガントの村に、一番近いハーフエルフの町がターニアになる。
なので一度ターニアに行き、そこでガントの村へ行く方法、もしくはダークエルフの協力者を得る方法を模索するつもりでいる。
「それで、お金の方なんですけど、いくらお支払いすればいいですか? あまりお金はないので、足りない分は労働という形で勘弁してもらいたいのですが、、、」
「うん? ああ。お金は別にいらないよ。さっきも言った通り、俺はしがない成金だから、お金に不自由はしてないんだ」
「で、ですが、それでは申し訳ないといいますか、、、」
「そっか、、、 じゃあ、馬車の中での話し相手ってことでどう?」
「話し相手、ですか?」
「そう。俺たちはウィルドンで活動していたから、エファントのことはほとんど知らないんだ。そこで世間話を含めていろんな話を聞けたらな、と思って。つまりは情報料ってところかな」
「そんなことで、本当にいいのですか?」
「もちろん」
――情報は時として命より重い、って誰かが言っていた、と思う




