03話 エファント~入国~
「――ふう、、、 久しぶりの陸だ」
海龍との遭遇というイレギュラーがあったものの、それ以外は特に問題は起こらなかった。
海龍との件は、他の乗客はおろか、ミミやココネやシェーラにも話していないので、皆からしたら普通の船旅だっただろう。
「さて、これからが大変だ、、、」
「ですね、ご主人様」
「きっと長くなるの」
「すみません。私のせいで余計長引きそうですわ」
「それはしょうがないよ。シェーラはお姫様なんだから」
――そう。
これから入国審査が待っているのだ。
別に悪いことをしているわけではないので問題はないと思うのが、、、
ただ俺たちは、どこの馬の骨かわからない金持ちとその奴隷たちとウィルドン王国のお姫様という組み合わせだ。
どうせ質問攻めにあうに決まっている。
――長い時間が掛かりそうだ。
◇◆◇
「――それじゃ、今日はもう遅いし、宿でも探そうか」
「わかりました」
「はい、なのっ!」
「わかりましたわ」
やはり入国審査は結構な時間が掛かってしまった。
そのせいで、昼に着いたのに今の時間は夜だ。
船旅の上に長時間の拘束が重なり、さすがに疲れたので、今夜はこの町で休んで明日から行動を始めようと思う。
なので、俺たちは空いている宿屋を探し、そこで1泊することにした。
――さて、これから旅をするにあたって、この国のことを頭に入れておこうと思う。
まず、俺たちが今いるこの町はエファントの大陸の北東にある、ユーリンという名前の港町になる。
他国から来た人は必ずこの町に来るというぐらい、エファントの中でも結構大きい港町になる。
次にエファントのことだ。
この国の主な住民――すなわちエルフは温厚な性格をしており、種族間のトラブルは滅多におこらない。
ただし、温厚なエルフとは、ハーフエルフなどを代表する混血のエルフの場合だけだそうだ。
ハーフエルフ以外のエルフ――特に純血のエルフや希少種であるダークエルフは総じてプライドが高いらしい。
彼らはそれぞれの数が少ないので、エファントにも彼らが支配する地域は多くはないらしい。
ただ、そういった地域は、他種族(ハーフエルフも含め)は入ることを制限される場合が多いみたいだ。
それに彼らも普通の町に来ることもあるらしい。
なので、これから旅はその辺に気をつけなきゃいけない。
――まあ、旅に気を付けなきゃいけないことがあるのは当たり前だけど。
◇◆◇
「――それじゃ、まずは手分けして『神鋼』の情報を集めよう」
「わかりました」
「了解なの」
「わかりましたわ」
宿で一泊して次の日。俺たちは朝から町へ繰り出した。
理由はもちろん、旅の目的である『神鋼』の情報収集だ。
ここは大きい港町なので情報もたくさんある。
――きっと『神鋼』の情報もあるだろう。
蛇の道は蛇。
やはり、『神鋼』の情報を探すなら武具屋だと思ったので、皆と別れた俺は武具屋にやってきた。
「――おっさん、ちょっといいか?」
「おっ、いらっしゃい! 何かお探しかね?」
「いいや、聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ、客じゃないのか」
おっさんが、さっきまでの愛想がどこかへ飛んで行ったように、急に態度が変貌する。
商人なのだし、客以外への対応なんてこんなものなのだろう。
――しょうがない、、、
これも必要経費だ。
「わかった。それじゃ、、、 これ買わせてもらうわ」
「あんた、話が分かるじゃねえか。いいぜ、なんでも聞いてくれ」
「それじゃ、さっそく。『神鋼』について何か知っていることはないか?」
「――ん? 『神鋼』、、、 まさか、あの鉄くずに興味があるなんて、あんたも変わってるな」
「――鉄くず?」
「ああ。『神鋼』は確かに名前に恥じないすごい金属なのは知っているさ。ただ、それを扱える職人なんて、それこそ天才だ。俺たちにとったら扱えない金属は鉄くずと変わらんのさ」
「なるほど、、、」
だから、この世界の『神鋼』の扱いが雑なのか。
確かに『神鋼』を扱えたのは俺の知っている中でも2人だけ。
聖剣『エクスカリバー』を打ったと言われるウィルドン最高の鍛冶師。
魔物で実験を繰り返し、その成果として『神鋼』を取り込んだ魔物を作り出したイービル――魔族。
どちらも、普通なんて言葉では絶対に言い表せない者たちだ。
それならば、一般の鍛冶師程度では扱えないのも無理はない。
「それで、『神鋼』だったな。残念ながらうちでは扱っていないが、もしかしたら心当たりがある」
「本当ですかっ!」
「ああ。あんまり期待は出来ねえがな」
「それでも、いいです。教えてください」
「おう。この国の南の方に、ガントっつう村があるんだが、そこの鉱山で『神鋼』が出たことがあるって聞いたことはある。ただ、、、」
「――ただ?」
「そこはな、ダークエルフの領土なんだ」
――情報はさっそく手に入ったものの、これは幸先が良いのか悪いのか、わからない展開だな




