SS ノーラの新しい相棒
サイドストーリーです
「――それにしても、すごい刀です、、、」
私は今、先日シロウさんから闘技大会に出場したお礼として頂いた魔刀を眺めています。
すでに穴が開くほど見ていますが、それでも見飽きることはありません。
それほど、この『威風堂堂』は素晴らしい刀なのです。
私がシロウさんにお願いしたのは、風に関する力を持っていることでした。
恩恵も今までの『カメリアの魔剣』――シロウさん曰く手抜きの魔剣――とは比べ物にならないものです。
「――ノーラ! 皆集まったよ、そろそろ出発しよう」
「――っ! わかりましたっ!」
――いけない。
つい刀を眺めるのに夢中になっていて、時間を忘れていました。
今日はルジオールを離れることになっているのです。
外に出ると、すでに『風来の乙女たち』のメンバー全員が集まっていました。
リーダーである私が最後なのは、あまりいいことではありませんが、気心も知れている仲間なので、少しぐらい多めに見てもらうことにします。
「では、出発しましょう!」
「「「はい!」」」
――シロウさんのお願いで、闘技大会に出場していたこともあって滞在が長引いてしまいましたが、冒険再開です。
◇◆◇
「――これは、、、」
ルジオールを出てすぐの小高い丘で、あるものを発見しました。
それは、魔物のような、それでいてもっと禍々しいものでした。
どこかで、似たようなものを見た記憶があります。
――そうですっ!
これは、きっと、、、
「ノーラ! こいつはもしかして、、、」
カトレアも気づいたみたいです。
――そう、この魔物は闘技大会の決勝戦――正確には決勝戦ではなく、その直前ですが――で見たモルにそっくりな魔物でした。
シロウさんの話では、イービルという魔族が魔物で実験していたとのことなので、この魔物もその実験体なのでしょう。
「あのモルとかいうほどの、恐ろしさはありませんね」
あの時に見た『神鋼』を取り込んだモルは、もっと圧倒的な何か、でした。
ですが、この実験体にはそれはありません。
――これならば、私1人でも、、、
「カトレア、ここは私1人で戦います」
「待ってノーラ。ここは安全に――」
「――大丈夫です。それに、これを試してみたいのです」
シロウさんから頂いた、新たな刀。
その力を試すにはちょうどいい相手です。
「わかった。危なくなったら助けるからね」
「――ありがとう」
カトレアが他のメンバーのところまで下がり、戦うことを許可してくれます。
一応、私がリーダーなのですが、、、
「――今はそんなことより。この『威風堂堂』を試させていただきますっ!」
魔刀を構え、実験体と向き合います。
少々可哀そうですが、私の実験にも手伝っていただきましょう。
――お礼は、せめてもの苦痛のない死、です。
「――『風来』」
私たち『風来の乙女たち』のオリジナル魔法を発動させます。
魔刀『威風堂々』は私に合わせたスキルと恩恵を、シロウさんが調整してくれました。
おかげで、今までは躊躇われた『風来』の魔法も、乱用はできませんが、それでも以前よりは躊躇うことなく使うことができます。
『ガアアア!』
「――その程度では当たりませんよっ!」
魔物の攻撃を躱しながら、『風来』の速度上昇を稼ぎます。
魔剣のスキルを試してみたいので、攻撃はせずに、速度上昇を出来るだけ稼くつもりです。
2分ほどでしょうか、魔物の攻撃を躱していると、十分に速度が上がったのを確認できました。
なので、距離を取り魔刀を構えなおします。
「これで終わりです! ――【威風堂堂】!!!」
魔刀『威風堂堂』は、スキルの名前も『威風堂堂』です。
シロウさんがスキルを優先して考えたから、名前も一緒にしたそうです。
安易な名前の付け方でごめんと、シロウさんは謝ってましたが、私はこの言葉の響きが好きなのでまったく抵抗はありません。
そして何より、肝心のスキルの効果が強いのです!
スキル【威風堂堂】の効果は、、、
所持者に掛かっている速度上昇を、一瞬だけ2倍にするというものです。
圧倒差的な速度で振られた『威風堂々』は、なんの抵抗も一切ないまま、魔物を切り伏せました。
スキルを使っていた私ですら、まるで瞬間移動でもしたかのように感じるほど、凄まじい速度が出ていたみたいです。
――ですが、、、
「――くう、、、 さすがに、この速度は応えます、、、」
あまりの速さに、体の方に反動が来てしまうみたいです。
これは使うときは、よく考えた方がいいかもしれません。
――それでも、こんな魔刀が打てるシロウさんは、やっぱりすごいです!




