20話 後始末
「――はあ、、、 結局『神鋼』は手に入らなかったか、、、」
ルジオールの屋敷で、俺はひときわ大きい溜息をつく。
結局イービルとモルのせいで闘技大会は中止になってしまった。
まあ、魔族が現れたのに大会は続行するのは無理だろう。
それが例えどっかの誰かのおかげで、人的被害が0だったとしても、だ。
「――はあ、、、 まあ、誰にも見られていなかったのが、せめてもの救いか」
あの騒ぎの時、会場はパニックに陥ったものの、迅速な避難は出来ていたらしい。
おかげで、カメリアがあの場に残っていたことは知られてはいるが、イービルとモルを倒したのは誰か知る者はいない。
ただ、真相は謎、というわけではない。
事件の顛末としては、Aランク冒険者が協力して倒したことになっている。
原因は、俺が名乗りを上げなかったため。
ルジオールを管轄する貴族が、魔族が出たのに行方が分からないというのは、住民たちの不安を煽ってしまうとのことで、そう宣伝せざるを得なかったらしい。
まあ、本当のことを話すつもりはないので利用させてもらうことにした。
ちなみに『神鋼』以外の優勝賞品は、ちゃんとした表彰式こそ行われなかったものの、カメリア――つまり俺とノーラが貰えることになった。
お金と魔剣を貰っても、とは思ったが断わることも出来なかったので頂いておくことにした。
「――とりあえず、ノーラへのお礼の魔刀でも作るか、、、」
大会の騒ぎのあと、ノーラはパーティメンバーの様子を見るために分かれた。
その時に、どんな魔剣が良いか聞いておいたのだ。
ノーラは大会が中止になり優勝は出来たし、『神鋼』も手に入らなかったから、と遠慮していたのだが、協力してくれたことには感謝しているのでしっかりとお礼はすると言ったところ、涙ながらに喜んでいた。
ちなみに、ノーラの要望は
・刀であること。
・風に関するスキルを持つこと。
の2点らしい。
――さあ、久しぶりの、本格的な鍛冶だ。
◇◆◇
「――魔法での鍛冶にも、だいぶ慣れてきたな」
今、俺は屋敷でノーラに渡すための魔刀を打っている。
ただし、ここには刀を打つような設備は整っていないので、『魔法炉』を使った鍛冶をしている。
『魔法炉』とは前にも使ったが、火属性と土属性の魔法を組み合わせた魔法で耐火煉瓦を作り、それで炉をかたどり、中に火属性の魔法を放つというものだ。
『魔法炉』の良い点は、火を使っても大丈夫・誰にも見られないという条件さえ整えば、どこでも出来るという点と、『炉』の温度調整が魔法で好き勝手出来るという点だ。
おかげで金属を熱する時間が短縮でき、本来ならば刀を打つのに2週間ぐらいかかるのだが、それが1週間程度で出来るようになった。
「――これなら、聖剣を打つ時間も短縮できそうだな」
ともかく。
今は、出来上がった魔刀をノーラに届けるのが先かな。
教えてもらった、ノーラたちが拠点としている宿屋に行き、出来上がった魔刀をノーラに渡すと、ものすごい勢いで感謝の言葉と、出来上がった刀を褒める言葉が紡がれた。
手伝ってくれた報酬なので、そんなに感謝することはないと思うのだが、お礼を言われるのも、打った剣を褒められるのも悪くなかった。
ノーラたち『風来の乙女たち』は、また違う町へ向かうらしく、最後に分かれの挨拶を交わした。
名残惜しいがノーラたちにはノーラたちの事情もあるのだし、しょうがないだろう。
――まあ、縁がありそうなので、また逢えるだろう。
◇◆◇
「――ご主人様、新しい『神鋼』の情報はありませんでした」
「町の人にも、冒険者にも、職人にも聞いたの。だけど誰も知らなかったの」
「私もお父様に手紙で聞いてみたのですが、めぼしい情報はありませんでしたわ」
「そっか、、、 みんな、ありがとう」
俺が鍛冶をしている間、3人には『神鋼』の情報収集を頼んでいた。
しかし、結果は芳しいものではなかったみたいだ。
「それでご主人様、これからどうさないますか?」
「情報がないから行先が決まらないの」
「シロウ様が行く場所でしたら、どこへでも付いていきますわ」
今のところ、『神鋼』の情報はない。
そして、それよりもやっておきたいことがあった。
「――ココルテの町に戻ろうと思う」
「わかりました」
「はい、なのっ!」
「わかりましたわ」
ココルテの町でやっておきたいことは2つ。
1つは『カメリア商会』の目的だった、旅商人の受け皿としての活動。
順調に『カメリアの魔剣』が売れて名前も知られてきたので、そろそろ動いてもいいと思う。
もう1つは、聖剣を打つこと。
剛田との戦い、それに今回のイービルとモルとの戦いで聖剣を4本も消費してしまった。
また似たような機会が訪れたときに、戦力となる聖剣が少ないのでは心もとない。
これらを解決するのには、ココルテの町に行くのが都合がいい。
聖剣も、『神鋼炉』を使った方が、強くなりやすいし。
――俺たちは、ルジオールを後にして、ルトリアに戻ることにした




