19話 VS魔族&実験体~3~
「――その黄金色の輝き、、、 まさか、聖剣かっ!?」
黄金色の光が集まり、再構築されていく『MPタンク』2振りを見たイービルが驚愕にその顔を歪ませる。
どうやら、聖剣の強さを知っているみたいだ。
まあ、この『MPタンク』シリーズは、MP以外の恩恵がほとんどない戦闘には不向きの聖剣なんだけどね。
見た目はしっかり聖剣だし、鑑定を使わなければ恩恵の値はわからないのだから無理もない。
(――あの時みたいに、聖剣の声は聴こえないか、、、)
剣核の開放が終わったが、声が聴こえることはなかった。
あの時はなぜ聴こえたのか、今回はなぜ聴こえないのか、検証をしたい気持ちがあるが、今はそれどころではない。
イービルと、何よりモルを倒さなければならない。
「お前たちは、俺の『神鋼』を奪った。それが、お前たちが死ぬ理由だ」
これから使う魔法は威力がありすぎるし、その効果も特殊だ。
死なない程度に抑えるのは、無理だと思う。
「――くっ、、、 だが、たかが聖剣ぐらいで、私の最高傑作が負けることはありませんっ! ――モルっ!」
『グガアアア!』
モルが俺めがけ突進してくる。
すでに倶利伽羅のトーチカは破られている。
モルの動きはそれなりに速く、数秒で俺に届くだろう。
――が、もう間に合わない。
俺は『MPタンク』の2振り分、それも剣核を開放させたことにより増大したMPすべてをつぎ込んで魔法を発動させる。
これだけのMPがあれば、発動時間も一瞬に短縮することが出来る。
「――『紫炎葬送』!」
伝承において、勇者が邪悪なドラゴンに対して使ったと言われている、炎系最強の魔法。
紫色の炎が迸り、モルとイービルを飲み込んでいく。
しかし、イービルは魔族、モルは『神鋼』を取り込んだ魔物だけあって、それだけで倒すことは出来ない。
しかし、この魔法が恐ろしいのは、飲み込んだものが死ぬまで消えないという点にある。
一度とらわれれば最後、使用者でさえ消すことが出来ないらしい。
俺も伝承を読んだだけなので、半信半疑なのだが、、、
『ガアアアア、、、』
あれだけのタフさを見せていたモルが消え入りそうな悲鳴を上げている。
どうやら、死ぬまで消えないとうのは嘘ではなさそうだ。
それに、消そうと思って見ても、魔法を止めようとしても、紫色の炎が消えることはない。
「――まさか、、、 魔族であるこの私が、、、 勇者でもないただの鍛冶師に負ける、とは、、、、」
『ガ、アアアア、、、』
圧倒的な火力に包まれ、その身を焼かれてい行くイービルとモル。
先に、その命を散らしたのはイービルだった。
モルはいまだに生きているものの、時間の問題だろう。
ただ、、、
「――はじめて、命を、殺したんだな、、、」
今までも魔物は殺したことはあった。
しかし、人に近いものの命を奪うことになったのはこれが初めてだ。
この世界の魔族というのは、人の敵なので別に罰せられることはない。
それに、イービルはマラア村の住民を間接的にだけども殺している。
だけど、日本人だからなのか、、、
――なんとも言えない、罪悪感が俺の心に残った。
◇◆◇
「――シロウさん! 大丈夫ですか、、、 って、この惨状は一体、、、?」
言葉通り戻ってきたノーラが、会場の惨状を目にして固まった。
紫色の炎はイービルとモルを、灰すら残さずに燃やし尽くした。
もしかしたら、モルの死体から『神鋼』を取れるかも、と考えていたのだが、、、
残ったのは焼けた土だけ。
それ以外は一切残ってはいなかった。
――あっ、残っているものがあった。
最初の方にモルに気絶させられた4人の冒険者が、気を失ったまま転がっていた。
良かった、紫炎に巻き込まれることはなかったみたいだ。
「いったい何があったんですか? お怪我はないですか? それに、イービルとモルとかいう化け物はどうなったんですか?」
「俺は大丈夫だし、ちゃんと説明するから少し落ち着いて」
あまりの事態に軽くパニックに陥ったノーラを現実に引き戻す。
そして、軽く説明していく。
(ミミとココネとシェーラにも説明しないといけないだろうなあ)
――それに、これの後片付けもあるだろうし、どうすればいいか、、、
闘技大会で魔族が出たことはもう広まっているだろう。
問題なのは、俺が戦ったことを知っている人がいるか、だ。
誰も見ていないのなら、どっかの誰かが魔族を倒した、で、ごまかせるかもしれないし。
ともかく、今はこの場にいる方が後々問題になってしまうだろう。
ミミとココネとシェーラと合流し、口裏を合わせてもらわないといけない。
俺は、ノーラの案内で3人と合流すべく、行動を開始した。
ただ、結局のところ『神鋼』は手に入らなかった。
――まさに骨折り損のくたびれ儲けってやつだな




