15話 優勝賞品
「――いよいよ、決勝戦か、、、」
昼食を食べ終えた俺たちは、闘技大会の会場にやってきた。
ちなみに、俺は昼食を本当に軽くしか食べていない。
昔からお腹は強い方ではないので試合のことを考え食べすぎないようにしたのだ。
それ以外の決勝戦の準備の方は特にしてはいない。
昨日の夜に新しく魔剣を10本ほど作ったので、ある程度のことはこれで凌げるはずだ。
あとは、臨機応変に戦うだけだ。
「それでは私たちは観戦席から観戦しますね。ご主人様頑張ってください!」
「シロウ様、頑張るのっ!」
「シロウ様でしたら、余裕で勝てますわ」
「みんな、ありがとう。頑張ってくるよ」
3人と別れ、俺は控室ではなくリングの方へ向かう。
今回は決勝戦だけなので、選手はリングで説明を聞くらしい。
それと優勝賞品の紹介もあるみたいだ。
「あ、カメリア様! 今日は頑張りましょう!」
「うん。ノーラもよろしくね」
リングに行くと、すでにノーラが待っていた。
ほのかに肌に赤みがかかっている。
――たぶん、準備運動をしていたのだろう。
俺もノーラに手伝ってもらいながら柔軟を始める。
しばらくして俺の体が温まった頃、イービルとモルがやってきた。
これでキャストは全員集合した。
それを確認した司会者がマイクを手に取り、言葉を紡ぐ。
――さあ、いよいよ決勝戦だ。
◇◆◇
『お集りの皆さま、大変長らくお待たせいたしました。ただいまより、ルジオール名物の闘技大会決勝戦を行いたいと思いますっ!』
昨日と同じ司会者が大会の説明を始める。
ルールは昨日までと変更はない。
強いていうなら、以前の試合では30分までと言った時間制限があったのだが、それがなくなったくらいだ。
『それでは続いて、優勝賞品の紹介です。この決勝戦を勝ち、優勝を手にしたペアには、大会実行委員からこちらの商品をお贈りしますっ!』
司会者が商品の入ったショーケースに掛かった布を取り払う。
そこには、当然『神鋼』も入って、、、
――あれ? 『神鋼』は?
目当ての『神鋼』が見つからず、もう一度ショーケースの中を確かめる。
――あった! すごい端の方にポツンと置かれている。
目立つことない大きさだが、剣1本ぐらいなら足りそうだ。
良かった。これで足りなかったら、また別の場所で『神鋼』を探さなくてはいけなくなるところだった。
だが、それよりも問題なのは、、、
なぜかショーケースの一番目立つところに剣があったことだ。
――それも、なんだか見覚えがあるような剣が、、、
『優勝者には金貨100枚と、ハイポーションの詰め合わせのほかに、なんと今巷で話題の『カメリアの魔剣』が贈られます!』
――やっぱりかっ!
てか、もし俺が勝ったら、カメリアにカメリアの魔剣になるんだけど、いいのかそれで。
それ以前に、優勝賞品の欄に『カメリアの魔剣』なんて、書いてあったっけ?
――だめだ。思い出せない、、、
「それにカメリアの魔剣はともかく、『神鋼』の説明はないのかいっ! すごい金属のはずなんだけどな、、、」
「――さすが、噂のカメリアですね。『神鋼』のことを正しく理解しているとは」
「――っ!? あんたは、確かイービルとか言ったっけ」
俺の独り言に、まさかの黒ずくめの男――イービルが返事を返してきた。
これが初めての会話だけど、意外と気さくなやつなのかもしれない。
隣にはモルとかいう奴が、黙って佇んでいる。
「そうです。それにしても嘆かわしい。あれほどの素材があんなにも雑に扱われているとは、、、 仕方ありません。本当は噂のカメリアとは戦って見たかったのですが、アレをみてしまったら、さすがに我慢できません、行きますよ、モル」
「一体何を言って、、、 ――なっ!?」
何かをつぶやいたと思ったら、イービルとモルが急に飛び出した。
――何事だよっ!?
イービルとモルが向かう先は、司会者と優勝賞品が飾ってあるショーケースみたいだ。
そして、ショーケースをモル素手で殴り、破壊する。
『――ちょ、イービル選手、モル選手! 一体何をしているのですかっ!?』
「この惨状を見ていて我慢が出来るとでも? ――これほどの素材をぞんざいに扱うのがいけないんです」
(――さっきのつぶやきといい、、、 狙いは『神鋼』かっ!)
まさか、決勝戦をしないで『神鋼』を奪おうとするとは。
だけど『神鋼』は俺の獲物だ。
魔剣を抜き、イービルとモルを止めに入ろうと動き出す。
「――もう、遅いです。喰らいなさい、モル」
『ガアアア、、、』
「なん、だと、、、?」
――獣のような低い唸り声をあげたモルが、『神鋼』を食べてしまった




