08話 『氷面鏡椿』
「――『氷面鏡椿』」
俺は【アイテムボックス】から取り出した刀の名前をつぶやく。
名前と言っても、正確に言うならば『号』と『銘』だが、、、
――そもそも、日本刀の名前については誤解している人も多いが、刀匠が自分で打った刀に名前を付けることは本来ない。
ではなぜ、有名な日本刀に『童子切安綱』や『政宗』など、名前があるのか。
それは『号』と『銘』があるからである。
号とは、その刀の逸話や伝承などから呼ばれるようになった渾名や通称。
銘とは、その刀の刀身で柄の中の部分――茎に彫られた、作成者の名前(地名や作った日付などの情報を含む場合もある)。
これらを組み合わせたもので日本刀は呼ばれる。
例えば『童子切安綱』の場合は、号が『童子切』、銘が『安綱』となる。
酒呑童子を斬ったという伝承から、『童子切』と呼ばれるようになり、銘が『安綱』と彫られているため、合わせて『童子切安綱』となる。
そして、この刀は、号が『氷面鏡』、銘が『椿』、合わせて『氷面鏡椿』となる。
『氷面鏡』は、氷のように輝く刀身が己を映す鏡のように見えることから。
『椿』は刀匠としての加治家の名前のこで、茎に彫った銘である。
――もともと『氷面鏡』とは、爺さんが打った国宝指定されている日本刀の号である。
爺さん曰く、打ちあがった日本刀を眺め、そこに『己が映った』ならば、それは己自身の持つすべての技術を使って打った最高傑作だろうとのこと。
つまり、この刀は現時点での俺の最高傑作の刀である。
◇◆◇
「――ここからが、俺の本気だっ!」
『氷面鏡椿』の柄を強く握りしめる。
この刀は、ココルテの町で旅に出る前に打った渾身の一振りである。
恩恵の値も高いし、なによりスキルが強力だ。
スキルを発動した状態で、相手に当たりさえすれば、それだけで相手を倒すことができる。
MPの回復の時間から、1ヵ月に1回しか使えないのが玉に瑕だが、それでも破格の性能を誇る。
ともかく、今回はそれほど余裕もないし、さっき受けたダメージは聖剣が肩代わりしてくれたが、痛みは残っている。
――けっこう痛い、、、
すぐに倒して、傷を治したい。
「――だから、すぐに終わらせてやるよ、この屑鉄野郎がっ!!!」
俺は、『氷面鏡椿』のスキル【一刀両断】を発動させながら、ゴーレムに切りかかる。
上昇したステータスにより、先ほどまでよりも速い速度の攻撃は、、、
――ゴーレムが知覚できない一撃となった。
そして、【一刀両断】の効果でゴーレムは絶命したのだった。
――なんとも、あっけない結末だった。
◇◆◇
綺麗に真っ二つとなったフルメタル・ゴーレムを前に俺は、すぐに聖剣『MPタンク1』を取り出して回復魔法を使った。
一瞬で体から痛みが引いていく。
そして、痛みが引き切ったら、ゴーレムを解体することにした。
もちろん、『神鋼』を探すためだが、他にも理由はある。
と、いうのも、このゴーレム、、、
ミスリルやオリハルコン、アダマンタイトを始めとする金属類で構成されているのだ。
「――これは、お祭りだな」
嬉々として解体をしていく俺を、もしミミやココネが見たら引いたかもしれない。
そんなことを考えながら解体をしていく。
解体にそれなりに時間が掛かったものの、最終的にかなりの量の金属を回収することができた。
それこそ、数十本という単位で剣が作れるほどに。
それで、肝心の『神鋼』だけど、、、
体の中心にあったコア(真っ二つ)が、見たこともない金属で鑑定してみたら『神鋼』とでた。
ただし、本当に微量だったので、剣の材料とする場合は1万体くらい狩らないと集まりそうにない。
倒せる、倒せないはともかく、、、
1日に1体分しか回収できないので、最短でも27年ほどかかる計算になえう。
それはあまり現実的ではない。
「――コアの分だけしか『神鋼』はなかったけど、昔の勇者はどうやって聖剣1本分も手に入れたんだろうか、、、」
新たな疑問が生まれたが、とりあえず今回のダンジョン探索はここまでにして帰ろうと思う。
怪我は魔法で直したとはいえ、さすがに疲れた。
――少しだけ休んだ後、俺はダンジョンから脱出するべく、来た道を帰った




