08話 フラグは立てるものじゃないな
「――よーし。この辺で終わりだな」
パワーレベリングを初めて、数日。
ようやく、ミミとココネのレベルが40を超え、専用に作った魔剣を装備できるようになり、ステータスも目標に届いた。
――――――――――――――――――――
名前:ミミ
LV: 41
HP: 503
MP: 80
STR: 351
INT: 374
VIT: 552
AGI: 636
名前:ココネ
LV: 41
HP: 563
MP: 121
STR: 326
INT: 293
VIT: 539
AGI: 598
――――――――――――――――――――
とりあえず、このぐらい強くなれば、何かあっても多少はどうにかできるだろう。
それに、嬉しい誤算があったし。
なんと、ミミとココネは【剣術】のスキルを開眼したのだ。
なので、不安だったステータスだけ強くても意味はない、という問題は改善できたはずだ。
ていうか、パワーレベリングも後半は2人だけで魔物を倒していたし。
もはや、普通のレベリングだ。
「それじゃ、明日から暫くは、ルトリアで休むことにしようか」
「わかりました」
「了解なの!」
◇◆◇
ルトリアは港町である。
ならば、食べるものは海鮮料理に決まっている。
やって来たのは『江戸前寿司』という名前の店屋だ。
以前この世界にきた異世界人が広めたらしく、その一号店だという。
「本当にいいんですか? このお店はかなり高いと聞きましたけど、、、」
「私も寿司屋に入ったことはないの」
「大丈夫だよ。お金の心配はいらないし、それに、俺が食べたいんだから」
こちらの世界にきてからは、しばらくは安い食事を食べ続け、途中からはミミの手料理を食べていた。
ミミの料理はもちろん美味しいが、やっぱり日本の食べ物は恋しくなるもので、いつかは食べたいと思っていた。
そこで、寿司を見つけたら、食べないなんてありえない。
ましてや、俺はレベル1のままという代償でお金に不自由することはなくなったので、ここをスルーするという選択肢は存在しない。
いまだに、入店を渋る2人を無理やり連れて、店に入る。
「――へい。らっしゃい」
出迎えてくれたのは、まさに、といった格好をした、板前だった。
それに内装も含め、すごく本格的な店だった。
席はカウンターしかなく、7人くらいまでしか入れない。
ネタをショーウインドウの中に入っていて、お客の目の前で握るようになっている。
日本と同じ魚がいるわけではないけど、こうしてネタが目の前にあると、迷わないで済む。
俺は、まずは赤身の魚を頼んでみた。
2人は遠慮していて頼みそうになかったので、俺と同じものをお願いした。
「――へい、お待ち!」
見た目はマグロにそっくりなそれは、味もマグロそっくりだった。
俺は日本で回らない寿司に行ったことはなかったけど、このマグロがとても美味しいのはよくわかる。
躊躇っていたミミとココネも、とてもおいしそうに食べている。
――このマグロもどきがこんなに美味しいならば。その隣にある、脂がのった部位――すなわちトロはどのくらい美味しいのだろうか?
「おっちゃん。このトロを3つ頼む」
「兄ちゃん、わかってるね。現地の人はこの油が乗ったところは食べないんだぜ? これが旨いっていうのになあ」
確か、江戸時代の日本も、トロの部分は腐りやすいって理由で捨てたはずだし、そんなこともあるかもしれない。
――もったいない話だ。
「へい、お待ち!」
トロが目の前に置かれる。
――脂が光ってやがるぜ。
醤油を少しだけ付け、口に運ぶ。
それは、舌に乗った瞬間に溶け、極上の甘みを口いっぱいに届ける。
これだけでも、とても美味しいが、絶妙な酸っぱさの酢飯が噛んだ瞬間にほどけ、口全体で溶けた脂と混ざり合い、さらに甘みを強調する。
――これが、ハーモニーか、、、
「――うまいっ!」
「すごく美味しいです、、、」
「ほんと、美味しいの、、、」
――よし。ここにあるネタ、全部食べよう!
いうまでもなく、すべてのネタが美味しかった。
◇◆◇
寿司を食べた俺たちは、漁港に来ていた。
ここでは、採れた新鮮な魚介類を、その場で焼いて食べる――いわゆる浜焼き――が美味しいと聞いてやってきた。
近くの屋台では、サザエやアワビに似た、貝などが焼かれている。
寿司を食べているので、すでにお腹は膨れているので、屋台のおっさんに言って、三等分にしてもらう。
こうして、3人で分けて食べれば、色んな種類を食べれる。
「それにしても、ここの活気はすごいですね」
おっさんが貝を焼いてくれる間、暇だったので軽く世間話をする。
こうして、情報を集めることは非常に重要だ。
なにせ、蛇の道は蛇。
美味しい食べ物をさがすなら、食べ物屋に聞いた方が手っ取り早い。
「ああ。今の時期は特にな。1週間後に海龍討伐祭っていう祭りがあるんだ。だから今から準備が始まるんだ」
「――海龍討伐祭ですか?」
「そうだ。昔、異世界人がこの近くを縄張りにしていた海龍を倒してな。それで、漁や流通ができるようになって、ルトリアの町が大きい港町に成れたのさ。それを祝って海龍討伐祭を毎年行っているわけだ」
「すごいですね。海龍を倒すなんて」
「正確には撃退だがな。聞いた感じがいいから討伐祭って言ってるんだ」
「それじゃ、海龍が来たりするんじゃ?」
「はっはっは。今までも大丈夫だし。きっと大丈夫なのさ。――ほいよ、待たせたな」
おっさんから、浜焼きを受け取り、3人で分ける。
――てか、本当に大丈夫なのか?
今までは大丈夫は、大丈夫の理由には成りえないと思うのだけど、、、
ましてや、その異世界人が海龍を追い払ったのは、昔のことなら海龍がまたやってきてもおかしくないんじゃ、、、
「――海龍が出たぞーーーーーー!!!」
――ほら、、、




