12話 名付け
「――これで、完成っと」
荒砥ぎを終わらせ、鍔と柄をつけ終わった刀を眺める。
白銀色の刀身は、最後の研磨が終わっていないため少し濁っている。
「――鑑定」
手に持っていた小石程度の大きさの鑑定石(買った)を使ってみる。
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名前:なし(ミスリル性の日本刀)
状態:未完成
説明:稀代の刀匠が、スキルを用いずに作り出した異世界の刀。最終の研磨が終わっていないため未完成。
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「やっぱり、研磨しないとだめか」
とりあえず、剝き出しの刀身を布で包む。
鞘を作ってもいいのかもしれないけど、研磨が終わらないうちに鞘に入れるのは少し抵抗がある。
「おっさん2のところに持っていってみるか」
◇◆◇
「おう、小僧。完成したのか?」
「いえ、最後の研磨だけ残っていまして、お願いしたくて」
「そうか、そうか。任せておけ。奥に俺の仕事部屋があるから、そっちでやろう」
不動産屋なのに、仕事部屋があるのはよくわからないが、このおっさん2は【鍛冶師】のスキルを持っているらしいから、その関係なのだろう。
「さて、それじゃ、その刀っていうやつをだしてもらうか」
「――はい」
【アイテムボックス】から、布に包んだミスリル性の日本刀を出して、作業台に置く。
「これが、スキルではなく『鍛冶』という技術で作り出した武器か」
おっさん2が布を取り払い、刀身を見てつぶやいた。
「じゃ、さっそく、やっちまうぜ――【研磨】」
おっさん2のスキルが発動する。
すると、刀身が輝きを放ちながら、ものすごい速度で研がれる、というか、磨かれていく。
一分ほど経つと、輝きが失われていき、綺麗に磨かれた刀身が現れた。
おっさん2が、終わったのを確認し、刀を俺に渡してきた。
「作った武器や防具は、作成者に名付けの権利がある。というか名付けをすることで本当に完成するんだが。――まあ、やってみろ」
おっさん2から、刀を受け取る。
すると、なんとも言えない不思議な感覚があった。
まるで、刀が何かを求めている感覚だ。
(――名前か。どうするかな。会心の出来の刀なら自らの名前を入れる銘でいいんだけど、、、 これは、そこまで満足した出来ではないからな)
白銀色の刀身に、波状の刃紋がきれいに描かれている。
自分で作った割にはいい出来だと褒めたくなるほどではあるが、魔剣や聖剣を目指す身としては、まだまだ満足がいかない。
本来は満足のいかない刀に名前を付けることはないけど、ここは異世界で名付けをしないと完成しないという。
異世界で初めて打ったミスリル性の白銀色の刀、なら――
「――『白銀刀』初名」
そのつぶやきを待っていたかのように、手に持っていた刀が喜んだ気がした。
『一定以上の経験値の取得を確認、【鍛冶師】のスキルを獲得しました』
不意に頭の中で、男性とも女性ともわからない、中性的な声が響いた。
(――これが、異世界名物、スキル獲得の脳内アナウンスかっ!)
ステータス画面を開くと、スキル欄に【鍛冶師】が追加されていた。
まあ、MPがないから、武器や防具を作ることも、【研磨】を使うこともできないのだが、、、
それでも、感慨深いものがある。
爺さんから受け継いだ、刀匠の技術がこの世界でも認められた気がしたから。
「名前は決まったみたいだな。どれ、内容を見てみるか――鑑定」
おっさん2が鑑定石を使い、鑑定する。
「――うおっ。こいつはすげえ。恩恵がついてやがる」
おっさんが、やけに興奮した様子になる。
俺も、見てみようと、自前の鑑定石をとりだす。
「鑑定」
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名前:白銀刀・初名
レアリティ:7
恩恵:STR+15
AGI+10
説明:異世界からきた稀代の刀匠がスキルを用いずにミスリルから作った刀。美術品としての価値も高い。
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と、なっていた。
恩恵という項目が初めてだが、見たところステータスに影響するのだと思う。
ここは、おっさん2に聞いてみよう。
「この恩恵っていうのは?」
「ああ、兄ちゃんは異世界人だったよな。この世界の武器の中には恩恵っていう、持っているだけでステータスが上昇する武器があるんだ」
「持っているだけ?」
「そうだ、腰とか肩に付けているだけでも効果はあるぞ。だから高ランクの冒険者なんかは、恩恵持ちの武器を腰に1つ、実際に使う武器を1つ、みたいな持ち方をしていたりする」
恩恵――すなわちステータスを強化できる武器が複数本持てるなら、、、
「――だったら、恩恵の持つ武器を量産して、いっぱい装備すれば」
「ああ、そいつは無理だ。恩恵を持つ武器の量産はともかく、たくさん持とうが、恩恵の効果があるのは2本だけらしい」
「そうなんですか、、、」
――残念だ。
もしかしたら、この刀をいっぱい用意して、俺の残念なステータスをごまかせるかと思ったのに。
「まあまあ、そんな落ち込むな。てか、恩恵を持つ武器なんて、本当にすごい物なんだぞ。しかもこの刀の恩恵は大きいからな、レベル5くらい変わるぞ。これならAランク冒険者あたりが言い値で買ってくれるほどだ」
俺のレベル1がレベル6になったところで、あまり意味がない気がする。
俺が持つには、あんまり意味がないかなあ。
「まあ、王城に保管されている聖剣なんかは、赤子が装備してもSランク冒険者に並ぶって言われるほどの恩恵があるらしい。もちろん誇張されているとは思うが」
――これは、聖剣作りを目指す理由が増えたな。
俺の残念なステータスを聖剣で強化して、せめてゴブリンは倒せるようになりたいな!




