11話 『かじ』をしているご主人様
ミミ視点です
――私の新しいご主人様は変わっています。
私の名前はミミ。
獣人族で性別は女、11歳。
奴隷商人の人は私を可愛いと言いますが、自分では不細工ではないけど、そこまで可愛いとは思いません。
――それよりも、私の新しいご主人様のことです。
ご主人様のお名前はシロウ様。違う世界からやってきた異世界人らしいです。
異世界人だから変わっているわけではないと思いますが、とにかくご主人様は変わっています。
普通、私みたいな女の奴隷を購入する場合は、夜の奉仕のためがほとんどなのです。
これは、一緒にいた他の奴隷の人たちの話でも聞いたので間違いないはずです。
さらに、酷い場合によっては、好きなだけ使われ、最後は飽きて捨てられる、なんてことも多いらしいです。
もちろん、例外はありますが。
金持ち貴族のお気に入りになり、夜の奉仕以外は満足な暮らしを送れるなんていう夢の話を聞いたことがあります。
しかし、それはごくまれ、の場合です。
だから、私も覚悟を決めていたのですが、、、
「――はい。覚悟はできています」
「勘違いしないでくれ。ミミには、この家の家事を任せたい」
ご主人様が私を買った初日の会話のことです。
私がなけなしの覚悟を見せたのにも関わらず、ご主人様はそう言いいました。
金貨20枚もする私を買った理由は、家事をさせることだけだと言ったのです。
それを聞いたとき、私は喜びよりも先に、女としての価値はないのかな? と少し落ち込んでしまったのは内緒の話です。
他にもご主人様のおかしいところはたくさんあります。
家で、家事をするだけの私に、高価な服を買おうとしたこととか。
思わず買うのを止めてしまい、その後、奴隷が口答えするなと怒られると思い、ビクビクしていたのですが、ご主人様は笑いながら「いいから、いいから」と高価な服を何着も買ってくれました。
他にも、ご主人様と同じ食事を同じ食卓で食べろと言われたこともですし。
限られたお金持ちの人しか入ることができない、お風呂に毎日入ってもいいと言われました。
夜のご奉仕をさせるつもりなら、きれいでいるためとわかるのですが、ご主人様は私の体を求めたりしません。
それだけにとどまらず、ご主人様が「先に入るか?」なんて、聞いた時には私は耳を疑っちゃいました。
しかし、ご主人様にはもっと変わっているところがあります。
――それは『かじ』です。
わたしも、一般常識としての【鍛冶師】のことは知っています。
MPを使うスキルで、武器や防具を作り出すのが【鍛冶師】で、MPが多いほどいい武器や防具を作れるとされています。
それなのに、ご主人様のMPは1しかないと教えてくれました。
普通、奴隷に自分のステータスやスキルを教えるなんてことはないです。
そんなところもご主人様は変わっています。
――話がそれちゃいました。
ともかく、MPが低ければ【鍛冶師】にはなれないのに。ご主人様はとりあえずやってみるとかで工房に入り、『かじ』をしています。
ご主人様が「見学してみる?」と尋ねてきたので、私は興味本位で「はい」と答えてしまいました。
なので、私は今、ご主人様の『かじ』を見ています。
――それは、初めてみる光景でした。
ご主人様が、真っ赤な炎が燃え盛る『しんこうろ』とか言っていた、中にミスリルを入れます。
そして、赤くなったミスリルを取り出し、ご主人様が小槌を使い、丁寧に、しかし大胆に叩いていきます。
その一連の流れは、とても洗練されているのが、私でもわかりました。
ご主人様の、その真剣な横顔は、普段ののほほんとしたご主人様とのギャップがあり、、、
「――かっこいい」
「そうかな?」
――口に出ちゃいましたっ!!!
(うーー、とっても恥ずかしいです)
私の顔も、ミスリルみたいに、赤くなっちゃているかもです。
でも、『かじ』をしているご主人様はとてもかっこよく、キラキラしていました。
私はそのまま、何時間も見ていたらしく、途中で――
「――そろそろ、ご飯がたべたいかな?」
「ご、ごめんなさいっ!!!」
ご主人様に、催促されてしまいました。
完全なミスです。
でも、ご主人様は決して怒りはせず、いつもの優しい笑顔を向けてくれます。
ミミの新しいご主人様は、とっても変わった人です。
「――でも、とっても優しく、『かじ』をしている時は、とってもかっこいいお方です」




