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出発①

数日後、ロイは遠く丘陵の奥へと姿を消していく『夜明けの狼』の団員達の最後の1人が見えなくなるまで見送っていた。

最後尾が丘の向こうに姿を隠したあと、ロイは深々と彼らが去った方向に頭を下げた。

そして、地面に置いていた荷物をゆっくりと背負うと大きく息を吸った。

ラグナスとの最後の別れ際に、ロイは水島 勇斗として知っているラグナスの人生に関わるイベントをそれとなくラグナスに伝えていた。

勿論、ゲームの世界通りにストーリーが動く可能性も低い。『グランディア戦記』はプレイヤーが選んだキャラクターによって微妙にキャラクター同士の関係も異なってくる。

そのため、今のラグナスがどのような未来を歩むかは誰も分からなかった。

ただ、生命の恩人であるラグナスには破滅的なイベントを起こしてほしくはなかったのだ。


「よし、行くか」


『グランディア戦記』には、いつまでにクリアしなければいけないという明確なターン制限はない。

何年かかっても、選んだキャラクターの第一部の目標をクリアーすれば、第2部が開始された。

ラグナスを主人公に選んだ場合、傭兵団を大きくし国を立ち上げることが第1部終了の条件だった。

他のキャラクターでも、国内の内乱を平定する。小競り合いが続く領地を統一するなどが条件となっている。

ただ、それはあくまでもゲームの話だ。

実際に時が進む今を生きている身にとって、停滞はすぐ死を意味する。

レベル上限が40と定まっているロイにとっては、早急なレベルアップと装備の調達が必須だった。


「ゲームでは、第1部で上げられるレベルの最大値は20だったけど⋯⋯この世界だと、鵜呑みにしない方がいいよな」


背中に背負った荷物と右手には、ここ1年で手に馴染んだ簡素な槍。

左手には木製の丸盾が収まるはずだが、移動の際には邪魔になるので取り外ししやすいように背中の荷物に取り付けていた。


「これが本当の転生者なら迷うはずだけど、俺には14年分の記憶がある」



ロイは地図を広げると現在地を確認した。

現在地はゲーム開始時点で『夜明けの狼』が本拠地とする大陸南東部の小国、ロスザイア。本来ならラグナスを選んだプレイヤーは、この国を統一することで、第1部が完了となる。

基本的な流れは、プレイヤーが『夜明けの狼』の運営を行うのだが、戦闘パートは1ターンを一分としたRPGスタイルだ。


「ただ、この世界がゲームと一緒なわけないもんなぁ」


ゲームではマス目上のフィールドをキャラクターを動かし、接敵することで攻撃や魔法、アイテムを使うなど選択して戦うことになるのだが、通常の戦闘エフェクトだと、デフォルメされたキャラクターが1回槍を振ったり、弓で矢を放つ程度だ。


ロイは右手に握る槍を何回も振ってみる。ゲームの様に1回振るっておしまい。そんなことはなかった。


「ゴブリン1体で1レベル。次にレベルアップするには、ゲームでは数体のゴブリンを倒す必要があるな」


ロイは地図をしまうと街道を歩み始めた。

まず行先は、ロスザイアの西方に広がるロロン平原と決めていた。

ラグナスでゲームを開始した際、この平原の魔物を倒すという依頼があった。魔物のレベルは1 ~3。

ゲームであれば、『夜明けの狼』の最初のチュートリアル戦闘といった所か。しかし、今のロイは1人。複数人に指示を出して戦うゲームとは全く異なる状況だ。

街道を歩むにも最新の注意を払いつつ、ロイは歩み始めた。

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