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試練の塔②

「レベル32!そんなに強い人がこの世にいるんだ!ボクの父さんもすっごく強いけど、レベル20だよ!」


リーチェがマロンのレベルを聞いて、驚きを露わに立ち上がった。

第1部以前でレベル20超え。もちろんゲームの進行とは異なる動きがあることをロイは痛感した。

一人で行商を続けるなら納得の強さだったが、どれだけの『記憶の書』を使ったかは想像を絶する。


「いやー、この商売。女が行商してるってなると、よく絡まれるんすよ!ここまで強くなったら、そうそう絡まれても大丈夫っすからね!」  


マロンは屈託ない笑顔を見せたが、今まで沢山の苦労をしてきたのだろう。


「俺達も絡まれないくらいにしっかりとレベルを上げたいんだ。マロンはその秘密を知っているんだろ?」


『試練の塔』の名前を出すと、その知識の出処を問い詰められかねない。レベル差もあり、マロンと敵対することだけは避けたかった。


「そーなんすよ!3年前に『大森林』に入ったんすが、その時に不思議な『塔』を見つけたっす!そこがロイはんの言う『記憶の書』っーのが仰山ありまして!」


マロンはそう言うと、内緒話をするように声を潜めた。


「というてもこんな話、商人なら秘密にしとくのが定石っす!でも、遅かれ早かれ『塔』は見つかるっす。『大森林』開拓してるっすよね?アレはいずれ塔まで開拓する。そーなったら、帝国の兵隊さん達もみーんなレベル上げ放題っすよ」


「それなら、『記憶の書』を知ってる俺達が早く塔のことを知ってしまって問題ないと思ったってことか?」


マロンは首を横に振る。


「それは半分。ロイはん、リーチェはんにイヤリング買ったっすよね?それ見て、目利きをちゃんとしてるお二人を応援したくなったっす」


マロンの言葉を聞いて、買い物をしておいて本当に良かったとロイは胸をなで下ろした。


「まぁ、ヨールヘムの開拓団が『塔』までたどり着くには、ウチの見立てたところで数年はかかるっすね。どうせ何れ見つかるなら、今のうちに仕入れて売っちゃおうと思ったっす。今回ヨールヘムに来たのも、『塔』への仕入れを兼ねてたっすよ」


マロンはそう言うと、感覚が分からなくなりそうな森の中を、迷いなく一点を指差した。


「こっからはかなーり歩くし、往復は1ヶ月ほどかかるっすよ。準備はいいっすか?」


ロイの見立てより長い道程だ。


「それだと、少し準備をしないといけないな。1回町に戻ることはできるかな?」


マロンはロイの問いに胸を叩いた。


「そうなると思って、色々持ってきてるっすよ!お代は、『塔』までの行動を一緒にしてくれることと、『塔』でのアイテム回収の手伝いでどうっすか?」


なるほど、明日には出発しようと言ったのは、俺達の準備が整わせないようにする作戦だったのだ。そして、準備が足りていないことを自覚させた上で、マロンが準備不足の面倒を見ることで同行させやすくする。それに、この時間から町に戻ると開拓団と鉢合わせるしかなくなる。そこまで見越してマロンは時間を指定してきたのだ。


「流石の商売上手だな。負けたよ、それでよろしく頼むよ」


マロンの言葉通りなら、『試練の塔』は案内がなければ本当に『大森林』で迷いかねない位置にあるようだ。ロイはまんまとマロンの策にはまってしまったと反省した。しかし、レベル32の彼女が一時的でも味方にいることは心強い。

ロイが差し出した手を、マロンは快く握り返した。





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