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試練の塔③

ヨールヘムを出て1週間。

『試練の塔』への道程は、『開拓団』なら進まないであろう場所に位置していることが分かった。

右も左も分からないような、鬱蒼と広葉樹が茂る森の中をマロンは迷うことなくドンドンと進んでいく。

魔物との接触もあった。『森狼』は比較的出会うことが多く、1体ずつではなくリーダーを中心とした群れで襲ってきた。


「ロイ!そっちに行ったよ!」


リーチェの射った矢で手負いとなった森狼がロイの方へ逃げて来る。

ロイは槍を構えると、狙いすまして腹を目掛けて『ハードストライク』を放った。

ドンッ!

鈍い手応えと共に森狼が倒れ込む。


「わわっ!こっちに来ないでっす!」


小柄なマロンを標的に定めた、森狼のリーダーが襲いかかる。

流石リーダーともなる個体は、他の森狼より動きが俊敏で一撃の威力がある。ロイのレベルだと、その一撃を盾で受けるとかなりの衝撃をくらい、全身が痺れるように感じた。

しかし、マロンは無造作に握ったハンマーで文字通り殴り飛ばしていく。マロンの一撃が頭部にヒットすると、森狼はきりもみする様に吹っ飛び一撃で戦闘不能となった。



「夜は『ウッドエコー』の縄張りっすからね」


ウッドエコーはほのかに緑に発光する霊体の魔物だ。

『霊水』を使用することで、武器に神聖が宿り武器攻撃が通じるようになるのだが、マロンは商売人らしく『魔物避けの護符』を周囲に配置してキャンプ地を作った。


「これで大体の魔物は寄ってこないっすけど、『大森林』で一人でグーグー寝るのは自殺行為っす!ロイはん、リーチェはんがいると交代で休めるから楽っす!」


マロンは嬉しそうに木の枝で組んだ支柱に撥水性のある布を被せると、あっと言う間に寝床を作ってしまう。

ロイ達もその簡易的なテントを使わせてもらいながら、塔を目指す旅は続いた。


「マロンはなんで商人になったの?」


山中を歩きながらリーチェがマロンに質問した。


「んー。ドワーフらしいことと、違うことをやりたかったからっすかねー。ドワーフ族の多くが岩場や地下に村を作ってるっす。物づくりが好きっすからねー。質のいい鉱石が採れるとこを好むっす。でも、ウチの性分には、なんか合わなかったっす」


マロンは、張り巡らされた木の根をピョンピョンと器用に飛び越えていく。身軽なリーチェも後に続くが、機動力の低いロイにとっては一苦労だ。


「ウチ、人が喜ぶ顔が好きっす!だから、ドワーフの村だけじゃなく、もっと広い世界が見たかったっす!」


ロイはその言葉が分かる気がした。

『夜明けの狼』にいれば、仲間が多い分安全なのかもしれない。ラグナスは良いリーダーだ。きっと良い国を作り上げるだろう。

しかし、その安全の中では得られないものを探しに行きたいと思ったのも事実だった。

そして、ロイ達がヨールヘムを出て6日目の夕方。突如として『試練の塔』は、その全容をロイ達の前に現した。直径は約50メートル。高さは20階のビルに相当するだろうか。

近くに来るまでその存在を気づかなかったことが不思議な程、その大きさは威容を感じさせた。


「中はもっと広いっす。多分ダンジョンなんじゃないっすかね?入る度に中の構造が変わるっす」


この世界におけるダンジョンとは、神々が太古に作った人智を超える迷宮のことを指す。塔に挑んだことがあるマロンとしては、そのことを実感しているのだろう。


「数回来たことがあるけど、初めは本当に道に迷って危険を感じた時だったっす」


「マロンは、なんでわざわざ大森林を突っ切ろうとしたの?」


リーチェの言葉にマロンは恥ずかしそうに頭をかいた。


「いやー、距離的に大森林を突っ切れば西のミレア王国に一気に行けるなって思ったっすけど、あの時はほんと森をなめてたっすね」


その無謀という程の行動力が、マロンの強みなのだろう。

長い行程を歩いて来たのに、疲れを知らない様にマロンは段取り良くキャンプの準備を進めていく。


「明日はロイはんの、明後日にはリーチェはんの必要な記憶の書が手にはいるはずっすよ。あと、この塔の近くに魔物は出ないっす。しっかり体調を整えて挑むっす」


いよいよレベル上げだ。ここまでの道程をマロンなしに来ることは無謀と言える。明日からのレベルアップを効率よく進めるためロイは気を引き締めた。

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