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北を目指して②

「着いたぁ!」


ポスコス村を出て5日。『大森林』のすぐ東側にある小さな町。ヨールヘムが見えてきたのは、昼に差し掛かる頃であった。


道中の食事は保存食の干し肉とパン、リーチェの母親のリオナが持たせてくれたベリーのジャム。そして、リーチェの弓で射止めたツノウサだった。特にリオナのジャムは旅において、甘味は最高の嗜好となった。

口に入れるだけで幸福感が増し、歩く気力が湧いてくる。

それでも、交互に仮眠をとる形で進んできた道程は簡単なものではなかった。


「はーっ。旅って楽しそうって思ってたけど。こんなに大変だなんてボク知らなかったよ」


リーチェは疲労の色を滲ませながらも、楽しそうな様子なのは初めて新しい町に来たからだろうか。

ロイは傭兵団と行動を共にしていた自分でさえ疲労が蓄積しているのにと、リーチェのタフさに驚かされた。


実はこのヨールヘム。『グランディア戦記』では自領に治めることができる拠点の一つだ。

大森林からの木材が主な収入源となり、領地運営には役立つとされている。また、時折森から霊薬などのアイテムの発見があったりと、自軍を強化するにも向いているのだ。


「うーん、久々の町だ。まずは宿を取ろう」


二人はヨールヘムの町中に入ると表通りを歩いた。

人当たりの良さそうな露天商の婦人に、良い宿を尋ねたところ、婦人は『森林亭』という宿を教えてくれた。


2人が宿を見つけて中に入ると、老夫婦が接客に出てきた。


「えっとね!部屋1つお願いします!」


ロイが口を開く前にリーチェは決めてしまっていた。

老夫婦はキョトンとした顔でお互い顔を見つめ合うと苦笑した。


「若いっていいわね。でも他のお客さんには迷惑かけないでね」


女将の言葉にリーチェは首を傾げるばかりだ。


でも大丈夫。仮眠しかしていない俺はパタリと眠れるはずだ。


ロイは自分の疲労感に満足しつつ、小さくガッツポーズをした。

理性との戦いは、明日に響く。今夜はベッドに横たわれることを至福として眠りにつきたい。

荷物を部屋に置くと、荷解きをして汚れ切った衣服を幾分楽な物に着替えることにする。


「ヘヘッ、ちょっと恥ずかしいから着替える時は後ろ向いててね」


なんて言うリーチェの言葉を丁重に断ったロイは、紳士らしく廊下に出た。お互い着替えると、ロイとリーチェは護身用の短剣を身に着けて町へ繰り出した。

現在帝国領、ヨールヘムの治安は安定しているらしい。

ただ、森林開拓に携わる者には荒くれ者もいるため、夜間の出歩きはお勧めできないと老夫婦が教えてくれた。


武器屋に立ち寄ったが、今の二人の武器よりも目立って強力なものはなかった。むしろ傭兵団にいたロイと、長年使い込んできたリーチェの弓は高い攻撃力を有していた。二人は武器の手入れのために油と弓の新しい弦を購入する。

武器屋の主人は、二人が森に入ることを知ると、森に出る魔物について情報をくれた。


「大森林はよ。開拓されているとこは比較的安全なんだ。ただ、伐採するとこが『森狼』の縄張りにぶつかるとヤバい。あいつらは群れになって襲ってくるからな。正直2人じゃなぶり殺しだぜ。開拓現場には、帝国が冒険者や傭兵を雇って護衛につけてるくらいだからな。あと、夜もやべぇ。『ウッドエコー』っていう怨霊が出る。あいつら魔法を使うし、物理攻撃は効かないから、あんたらにとっちゃ最悪の組み合わせだろ?」


確かに話を聞く限りでは、誰も二人だけでこの森に入ろうとは思わないだろう。

ただ、ロイにとっては出てくる敵が想定通りだったことは安心材料だった。だが、戦力が2人なのはそれだけ危険が増してくる。

ロイ達は武器屋を後にすると、森に入るための道具を揃えるために道具屋に立ち寄った。ここでは、回復薬と道具の素材を買い揃える。

『夜明けの狼』を去る時にラグナスからもらった心付けと、ゴードン夫妻からリーチェに渡されたお金が全財産だ。

ロイ達はポスコス村と道中で狩ったツノウサの毛皮。それと光沢のある石を道具屋に売った。石は砕くことで矢じりの材料になるため売れることを知っていたからだ。

収支的にはマイナスだが、貴重な収入源だ。


「ロイー!見てみて。綺麗だよ!」


リーチェはロイの手を引くと、露天商が開くアクセサリーショップに連れて行った。

綺羅びやかな宝石から、センスを疑う様な小物まで。所狭しと並べられたアクセサリーには、およそコンセプトというものがない。

ロイとリーチェが露天商の前で足を止めると。その主人は、声高らかに名乗りをあげた。


「おっと!そこ行くお二人さん!!ウチが古今東西、東奔西走。小さな身体で右往左往。この世の不可思議背中に詰めて、集めに集めたコレクション。どうぞいっちょ見てやっておくんなせぇ!!」


小気味よいテンポに合わせて扇子をピシリと叩く。 

関西気質な口上だなぁと、思ったロイだったが。

その風貌と喋り方には覚えがあった。


身長は145cmくらいだろうか?

露天に並べた物をしまうと、とてもこの人物が一人で持ち運べるとは思えない巨大な背嚢が背後に置かれている。

少しピンと立った両耳に赤銅色の髪。

両の瞳は燃えるように赤い。声は高く威勢が良い。ロイは確信する。


星5 キャラの商人。

『マロン』の姿がそこにはあった。

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