北を目指して①
翌日、ロイとリーチェはまだ朝焼けが残る中、荷物をまとめると朝日が差し込むと同時にリーチェの家を出た。
リーチェは、ゴードンとリオナと3人で抱き合う形で別れを惜しんだ。
「ロイ君も」
少し気恥ずかしかったが、ロイもゴードンに誘われる形で4人で固く抱き合うと、再会を願う形で村を出発することとなった。
「まずは、ロイのリーベ村に行くんだよね?」
振り返るとポスコス村は小さく見えるまで歩んだあと、リーチェが質問した。
「そうだなぁ。ミストレアは北国だから、最短は帝国領内を超える形になるけど。リーチェは大丈夫?」
ポスコス村を襲撃された手前、最短ルートと分かっていてもリーチェにとっては思い出したくない話だろう。
「んー、まぁ悪いのは帝国兵であって帝国の人じゃないからね。ボクは大丈夫!気遣ってくれてありがと!」
リーチェはそう言うと、澄み渡った空気を胸いっぱいに吸い込んだ。
「ボク、ポスコスを離れるって初めてなんだ!だから、いっぱい色んなものを経験しようね!」
リーチェがいるだけで、気持ちが明るくなる
コロコロと笑う笑顔を見ると自然と元気が湧いてきた。
旅の最終目的は、第3部になって魔族や星5のキャラクターと相対しても勝てる程の力を手に入れること。
だが目下の目標は、戦乱の世を生き抜く力を確実につけることだ。
それに、今の帝国の動きを知っておくことは役に立つ。
ロイは『グランディア戦記』で選択できる帝国の星5と星4のキャラクター達に思いを馳せた。
「そうだね。じゃあ、歩きながらレベルアップのことも話そうか」
ロイの言葉にリーチェは頷いた。
「うん、ボクはこの前の戦いでレベル6になったよ。スキルの『ハードショット』は覚えていたけど、『俊足』『集中』の効果もあるみたい」
リーチェの機動力は確かに驚異的だった。屋根に上がる時も地形をものともせずに駆け上がっていったのだ。
「『集中』は言葉通り命中率を上げる他に、状態異常にかかりにくくなる。俺の方はレベル5。槍を使った攻撃スキル『ハードストライク』と、『アイテム作成』『頑強』があるね。『アイテム作成』は、アイテムの性能が上がったり、難しい物も作りやすくなる。『頑強』は、防御力の向上かな」
ロイは二人の戦略を確認するようにお互いのスキルの名前を挙げた。
「勿論、魔物や敵を倒すことでレベルは上がるけど。この広い世界で魔物は無理に探し回らないとなかなか出会えないし、戦争でも起こらない限り人と争うことなんてないよね」
ロイの説明にリーチェは頷いた。
『グランディア戦記』はチュートリアルが終わり、第1部が進むと『派遣』というコマンドが選べるようになる。
これは、所謂部隊を編成して、任意の地方に部隊を向かわせて強化アイテムや資金、資材を調達。また、時折人材を登用するために用いられるものだ。『派遣』を使えば、示された週数が経過するまで『派遣』に選んだキャラクターを戦闘に使うことはできなくなるが、選んだ要員の能力によっては、レア度の高いアイテムや能力の高い人材をスカウトすることもできた。
また、水島 勇斗は拝んだことはなかったが、スカウトで星5のキャラクターが100万分の1の確率で登用されることも知っていた。
ただ、現在2人しかいないパーティでブラブラと歩き回る訳にもいかない。
そこで、必要なのが『試練の塔』。別名、強化アイテム収集所だ。
「リーチェは『試練の塔』って聞いたことがある?」
リーチェはロイの言葉に首を振る。
やはり、この世界では一般的には知られていないのかもしれない。
ゲームが進むと、キャラクターのレベルアップは困難になってくる。そこで解放されるのが『試練の塔』だ。
アプリゲームらしく、月曜から日曜まで、曜日によってドロップされる強化アイテムは異なるのだが。この塔、ゲームの世界地図だと、帝国の西側に広がる大森林の中にあると表示されているのだ。
ただ、それはゲームの知識。実際、現在ロイが持っている地図にも帝国の西側には大森林としか明記されていない。しかし、ここまで世界観が同じ世界で試練の塔がないということはないだろう。
なかった場合はプランBに移るしかないのだが⋯⋯
「まずは、レベルアップを効率的に行うために『大森林』に向かうよ」
ロイは地図を取り出すと方向を確認する。徒歩だと5日くらいの距離だろうか。夜は危険なため2人一緒に睡眠を取ることはできない。『大森林』に入る前に一度態勢を整える必要はあるだろう。
地図をしまうと二人は北を目指して歩みを進めた。




