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次の目的地へ②

恥ずかしい話だが、2人が眼を覚ましたのは次の日の早朝だった。

これは、ほぼ丸一日寝てしまっていたことになる。

起きた時、部屋の扉が開く方の壁がもがれている様な跡が残っていたが、リオナに聞いてみると、二人してベッドで寝ている姿を見たゴードンが血涙を流しながら、壁を握りつぶしたことによってできたようだ。


ちなみに、ゴードンの怒りは「数年前までお父さんの大きな身体がお布団だーって一緒に寝てくれたのに!なぜ今は一緒に寝てくれないんだ!!」という、父親特有の病気みたいなものだと、リオナが教えてくれた。


「俺の娘に手を出したな。ロイ君殺すよ」

そのような怒りでないことに、心底ホッとした。


「大丈夫大丈夫。ロイ、あなたは私達家族だけじゃない。村の恩人なんだよ。ま、そういうことだから、私はこれから先ポッと出の男がリーチェを見初めようなら、断然ロイ。あなたをリーチェとくっつけるようにするからね。リーチェを泣かすことはゆるさないよ」


と、半ば親公認となってしまっていた。

肝心のリーチェの方は、起きた時に少し気恥ずかしそうにしていたが、今は元気を取り戻していた。


──もっと強くならなくては。

星3の上限レベルは40。それに反して星4のリーチェはいずれレベル60を迎える。こればかりは、抗えない成長の限界の差がある。


今回の戦闘で、リーチェはレベル6。ロイはレベル5になっていた。

これは、格上の対人戦を終えたことで得られた経験値と考えるべきだった。

ただ、ここからレベル上げは一気に難航する。ゲームだと、戦闘パートで表示される敵は多くても十数人にしか満たない。

それらの敵を、育てたいキャラクターで優先的に攻撃をするのだ。

必然的に多くの仲間キャラは経験を積まずに戦闘を終えることも多い。

それは、ゲームの都合であって。本来戦争が敵味方10人ずつなんてことはあるはずがない。レベルアップに必要な経験値も倒す敵の数も想定より遥かに多いと見積もって然るべきだ。


「ロイ!疲れてない?」


リーチェは、村の復興を手伝いながらよくロイに話しかけてくる。


推しに好意を向けられることは、冥利に尽きるけど⋯⋯


「ロイー!休憩中に子供達が一緒に鬼ごっこやろうって!」


どうも、リーチェの好意が恋愛としてなのかがハッキリとしない。

周囲の子供達とリーチェの年の差があるせいか、リーチェ自身の精神年齢は小さな子供達に引っ張られている節があった。

これが、ゲーム内でリーチェの説明に書かれていた一文に繋がっているのだろう。

そんな感覚のせいか、結局あの日からリーチェはロイの毛布に転がりこむのが日課になっていた。


初日は、ロイ自身も戦いで心身を擦り減らしていたので泥の様に眠ることができたが、翌日からは緊張の方が勝ってしまっていた。

気づけば、ゴードンのつけたであろう扉の傷は2つになっていた。

首が繋がっていることを素直に喜ぼう。


そして5日目にして、ようやく村は復興の目処が見えてきていた。

その間に、ゴードンは村長が亡くなったことにより、正式に新村長に就任することとなった。

襲撃の朝に、村一番の馬乗りにロドブンドに早馬を走らせたゴードンは、帝国の急襲を伝えた。

そのため、目下集められるだけとなる形だが、ポスコス村には最短の砦から数十名の兵が、村の防衛に駆けつける約束を取り付けていた。

いずれにしろ、帝国と目と鼻の先にあるポスコス村には本格的にロドブンド兵が駐屯することだろう。


そろそろ、旅の準備をしなきゃな。

ロイは、帝国の侵略を第1部の動乱の時代が幕を開ける予兆と捉えていた。本当なら、この長閑なポスコス村も再び戦火に飲み込まれるだろう。

昨日、ロイはリーチェのいない場所でゴードンにそのことを打ち明けていた。しかし、ゴードンから返ってきた言葉は村長としての責任ある返答だった。


「ロドブンドから離れたここが、また帝国に狙われる可能性が高いことは知っているよ。ここに帝国が砦を作ったらロドブンドを狙う上で要所を得ることになるからね。でも、ロイ君。先代村長は誇りにかけてこの村を帝国に売ることはしなかった。だから、私は先代村長が守ったこの村を見捨てることはできないんだ」


ゴードンは、一呼吸置くと更に続けた。


「でも君は違う。あの日、君が立ち上がってくれたから、この村は今日もロドブンドの一員であることを誇っていられる。君は、充分この村に尽くしてくれた。まだまだレベルは低いかもしれない。でも、君はきっと私よりずっと強くなって、多くの人を救うだろう。その旅路を邪魔することはできないんだ」


ゴードンは優しくロイの頭に手を置いた。


「一度は、ご両親に顔を見せてあげなさい。顔を見れるだけで、親というものは救われるのだから」


目下レベル上げを第一に考えていたロイにとって、ゴードンの言葉はあまりにも当たり前のことを忘れていたことに気付かされた。

そのような経緯もあり、ロイは旅の準備をするべく、リーチェの部屋で荷物の整理を始めていた。


シュルシュル


音に振り返ると、リーチェが紐を取り出し荷物を作る準備をしていた。


「リーチェ?」


ロイが問いかけると、リーチェは不思議そうな顔をした。


「なぁに?ロイ。そろそろ出発するんでしょ?だからボクも荷物をまとめなきゃ」


 さも当然といった様子で、リーチェは着替えや道具を積み上げていく。


「待って待って!リーチェは村の復興に残るでしょ?」


まさか、故郷が大変なのにリーチェがついてくるつもりだったとは。

慌ててロイが止めようとしたが、リーチェは笑った。


「ボクがロイについていきたいって行ったら、父さんも母さんも直ぐにオーケーしてくれたよ」


まさかの両親公認だったとは。


「旅に出た後に、ポスコス村がまた帝国に狙われるかもしれない。その時、リーチェは村に残っていなかったことを後悔しない?」


この天真爛漫なリーチェが、これから起こる戦乱の世を想像することができているのだろうか?少し意地悪な返しと思ったが、ロイ自身リーチェには後悔してほしくなかった。

しかし、ロイも心底リーチェのことが心配であった反面。一緒に旅に行きたいという身勝手な思いも胸にあることも自覚していた。

リーチェは、ロイの言葉に深く頷く。


「分かってるよ。だからロイ、今日はパパとママ、私で一緒に寝るね。パパの部屋パンパンになるけど、ママがいいって。──ロイとはこれからも一緒に寝れるから、いいよね⋯⋯」


リーチェは恥ずかしそうに笑うと、照れくさくなったのか、準備もそこそこに、部屋を飛び出してしまった。

部屋には呆気に取られたロイが一人残される形となった。

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