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村の防衛③

「ほら、ロイっ!手を!」


「ハァハァ、すまない!」


リーチェが差し出した手をロイは掴むと、なんとか一つの家の屋根に登ることに成功した。

狩人のリーチェは、トントンと身軽に屋根まで登ったのだが、低レベルの見習い騎士ではそうはいかない。ロイはリーチェに助けられて屋根に上がると息を整えた。


「帝国兵に見つからないように、顔を出そう」


表通りには帝国兵が進軍している。2人は屋根からそっと顔を出した。


「──父さんっ!」


眼前に広がった光景にリーチェは思わず息を呑んだ。

剣と斧がぶつかる音。

二人の眼下では満身創痍のゴードンが、なお衰え知らずといったようにガルフと渡り合っていた。

馬に乗っているガルフの攻撃は、的確にゴードンを狙っている。

対するゴードンは、馬に攻撃を入れて馬上からガルフを落とそうと試みていたが、ガルフの攻撃の手は緩むことがない。


「グッグググッ!」


振り下ろされたガルフの一撃を受け止め、ゴードンが体勢を崩す。


「何ボサッとしてる!今のうちに槍で突け!」


馬上のガルフが周囲を取り囲んでいる部下に向かって叫んだ。


「──ガアッ!」


ゴードンは渾身の力でガルフの剣を弾くと距離を取り、周りの兵を威嚇した。


「これだから、戦場を知らない新米は!お前ら、こいつはお前らの数段上だ。だが、怖気づくな!冷静になれ!数で勝る俺達が負ける理由はない!」


クソッ!この兵士、『士気向上』のスキル持ちか?


ロイは毒づいた。このスキルは範囲内の仲間の攻撃力や命中率、防御力を一次的に上昇させるスキルだ。ロイの不安が的中したのか、浮き足立っていた兵士達は見る間に落ち着きを取り戻すと、武器を構え直した。


「ロイ、どうしよう!父さんがやられちゃう!」


時間はない。ぶっつけ本番だがやるしかなかった。

ロイはリーチェを振り返った。


「チャンスは一度だけだ。でも、必ずゴードンさんを救ってみせる」


ロイの言葉に、リーチェの眼から動揺の色が薄まった。

ロイは深く頷くと、胸のベストに取り付けていた瓶を取り出して蓋を開け、中に布を詰めた。


「火よ」


そのまま魔法を使って布に火を点けると火炎瓶の完成だ。

一番初歩の生活魔法。

寒さが強いリーベ村では子供のうちに覚えさせられるものだが、これほど有難い魔法はなかった。


「フンッ!」


ロイは眼下でゴードンを取り囲む兵士に向かって火炎瓶を投げ込んだ。

俺のレベルは低い。でも、アイテムを使えば固定ダメージを与えることができる。


まさか、頭上から火炎瓶が落ちてくるとは帝国兵も思っていなかったのだろう。ゴードンを気にして前方しか向いていなかった兵士の兜に当たり、火炎瓶が炸裂した。


「なんだ!うわっ!あちアチチッ!熱い!」


瓶から漏れた液体が鎧の隙間に入り込むと、布から燃え移った炎が一気に兵士の身体に燃え広がった。

間髪入れず、ロイは2本目、3本目を投げ込んだ。

あっと言う間に火は燃え移り、4、5人の兵士が火だるまになった。


「何者だ!」


ガルフがロイの攻撃に気づいて動きを止めた。


「今だっ!」


ロイの合図に、リーチェが引き絞って狙いを定めていた矢を放った。


スキル『ハードショット』!


リーチェの一撃は、ガルフで狙った物ではなく馬を狙ったものだ。


──ドスッ!


鈍い音と共に、スキルによって強化された一撃が馬の下腹部に命中した。


「ブッ、ブヒヒーンッ!!」


錯乱状態になった馬が暴れ回る。

その挙動に耐えきれなくなったガルフは程なく落馬した。


「クソッ!」


ガルフは悪態をついたが、落馬したその隙が命取りとなった。


「ハァッ、ハァッ。この村は僕達の村だ。傷つける者は許さない!」


ゴードンが渾身の力で斧を振り被る。


「ハッ、だから貧乏クジを引いたって言ったんだよ⋯⋯」


ガルフはそう言うと諦めた様に眼を閉じた。

ゴードンの渾身の一撃が振り下ろされた。

爆音と共に、鎧は裂かれガルフは絶命した。

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