村の防衛①
「リーチェ!ロイ君!」
村の方では未だ早鐘が鳴っている。
直ぐに、レオナが階下から2人を呼びにやってきた。
「村が襲われてる!旦那は先に行ったわ!」
直ぐに地鳴りの様に足音が響き、村の方へ走り去る人影が窓から見えた。
「ボクも行くよ!」
「俺も行きます!」
リーチェはベッドから飛び降りるとすぐに駆け出した。
「待ちなさい!2人共!いい?これはツノウサや獣を狩るのとは違うの。あの鐘の音は人間の強盗団が来た合図。戦いに行くことは、人を殺しに行くことになるの。リーチェ、あなたも人を撃ったことはないでしょ」
リオナはリーチェの肩を優しく擦った。
「2人で逃げなさい。私は多少なりとも回復術が使えるの。村の男衆が怪我をしたなら助けないと」
ロイは、リオナの優しさを感じたが直ぐに首を横に振った。
「いえ、戦います。リーチェは逃げて。ここで戦えないなら今後やっていくことなんてできないから」
ゴブリンと人間。同じ2足歩行ではあるが、その生命を奪う意味はまるで違ってくる。ただ、そこにあるのはロイと水島 勇斗が持っている倫理観の壁でしかないことは分かっていた。
この世界で生きていく以上、争いには確実に巻き込まれることは分かっていた。
自分のレベルが2であることが本当に悔やまれる。
正面切って戦えば、確実に強盗団に殺られることは明白だった。
ロイは荷物の中から、ベストを取り出した。
ベストには、いくつものアイテムを取り付けられるように加工してある。
「ううん。ボクも行くよ!ポスコス村はボクの大切な村だもん!」
リーチェはそう言うと、ロイに続き家を飛び出した。
リオナはそれ以上2人を止めることはなかった。
「2人共、絶対死ぬんじゃないよ!直ぐに私も行くから!ロイ君!リーチェを頼んだよ!」
リオナの声を背中に聞きつつ、ロイとリーチェは村への道を駆け降りた。
「──村が燃えている!」
リーチェが悲痛な声を出した。
数件の家から火の手が上がり、住人が悲鳴を上げて逃げ惑っている。
数人は、丘の上にあるリーチェの家に向かって駆け上ってきていた。
「ヒューおじさん!強盗団は?父さんは?」
リーチェは眼の前に現れた初老の男性に声をかけた。
男性は、眼の前にいるのがリーチェだと分かると、息を整えるのも待たず叫んだ。
「て、敵はっ!!賊なんかじゃない⋯⋯ブハッ。あい、あいつらは!帝国の旗を掲げておった!」
帝国と聞いてロイは戦慄した。
メドロワナ帝国。これは、プレイヤーが選択できるキャラクターが所属する国の1つである。
強大な軍事力を持つが、その派閥は一枚岩ではなく。この国のキャラクターを選んだプレイヤーは、帝国をまとめ上げることが第1部の目標となる。全ての勢力が力がある分難易度は高くなるが、第2部ではその圧倒的な軍事力を使って大陸を統一することは容易くなっていた。
盗賊団ならいくらでもやりようはあった。
だが、相手が帝国ともなれば話は別だ。
正規兵は最低でもレベル5。部隊長クラスともなれば、レベルは10を超えるだろう。
部隊の規模は分からないが、50人を超えることはあるまい。
しかし、グランディア戦記も基本格上相手の戦闘では、数人ずつで各個撃破するのが基本となっている。
この村の戦力では、正規兵を相手にすることはできないのは明白だった。
それでも──
不安を隠しきれないリーチェとゴードンを見捨てることはできない。
ロイはリーチェの手を掴んだ。
その手は冷たく、微かに震えていた。
「大丈夫。俺たちは大丈夫だから」
最早、勝つことが勝利条件ではないことが明白だった。
負けないようにすること。
難易度は跳ね上がるが、村を守るためにはやりきるしかない。
「リーチェ、行くよ!」
ロイはリーチェの手を強く握ったまま駆け出した。




