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リーチェの家②

リーチェの家のリビングに案内されると、リーチェの母親は直ぐに夕食の準備にとりかかった。

父親はゴードン、母親はリオナと言い、リーチェはその一人娘だ。


リーチェがポスコス村の出身だったなんてな。

『一人前の狩人になることを夢見て故郷を飛び出してきた少女。その笑顔は周囲を明るく照らし、仲間内のムードメーカー。彼女に密かに好意を持つ者もいるが、本人は気づいていない様子。』

記憶を辿れば、これが、ガチャを引いた時の紹介文だったはずだ。

グランディア戦記の配信開始時から実装されていたリーチェだが、家族構成や出自までは書かれていなかった。


ロイは、自分の生い立ちと『夜明けの狼』でのこと。そして、傭兵団を離れた後にリーチェに助けてもらったことをかいつまんで話した。

全てを聞き終わると、ゴードンは顔をクシャクシャにすると溢れ出る涙をハンカチで拭いた。


「そんな、人攫いにあったなんて。本当に大変だったんだね」


ゴードンはロイより二回り大きな手で、ロイの肩に手を置くと激しく揺さぶった。


「もう、お父さんったら!ロイの首が取れちゃうよ。リーベ村ってどこにあるの?ここらじゃ聞かない名前だよ」


リーチェがゴードンを止める。

危ない、本当に首の骨が持っていかれると思ってしまった。


「ケホケホッ、このポスコス村があるのは大陸南部のロドブンド王国だろ?その北方に帝国、そこを迂回するように大陸北部にあるミストレア共和国の東の端にあるのがリーベ村なんだ」


ゴードンの揺さぶりで危うく喉を痛めそうになったロイは、首を押さえながら説明した。


「ミストレアって超遠いじゃん!そりゃリーベ村なんて聞いたことがないよ」


リーチェがビックリしたように声をあげた。


「じゃあ、ロイも故郷を目指すの?」


リーチェに言われて、水島 勇斗としてではなく、ロイとして育ててもらった13年の記憶が蘇った。

確かに、水島 勇斗としては生き残るためにレベルを上げたい気持ちは強い。しかし、裕福でなくとも自分のために精一杯頑張ってくれた父母の顔は忘れがたかった。


「うん。両親には無事だってことを伝えないと。ただ、帝国領を超えてミストレアまで行くにも、まずはレベルを上げないと」


ロイはそう言うと、ギュッと拳を握った。

早急なレベルアップ。そのためには、アイテムが必要だ。


「ロイ君、大変だったね。ほら、ご飯ができたよ」


夕飯の準備を終えたリオナが、釜からツノウサの肉に香草を詰めたオーブン焼きを取り出した。


「そして、これがツノウサ肉を作った野菜たっぷりのシチュー。口に合うと良いんだけど」


あっという間に小さなテーブルの上はツノウサ料理でいっぱいとなった。

食事の前には祈りを捧げるというので作法を聞くと、ロイの故郷と同じものだったので、ロイは安心した。

皆で祈りを捧げたあと、ロイは取り分けられたツノウサの料理を口に入れた。

ブワッと口の中に香草の香りが広がり、素晴らしい塩加減がツノウサの味を引き立てていた。


「美味しいっ!!」


香草があまり取れないミストレアで食べてきたツノウサの味とはまるで違う。噛めば噛むほど肉汁が溢れ出してくる。


「良かった!母さんの料理は世界一だからね!」


リーチェが、ロイの食べっぷりを見て嬉しそうに笑った。

夢中で食事を進めると、あっと言う間に時間は過ぎ去っていく。

その中で、リーチェはロイと1つ上の15歳であるが、生まれ年は同じということが分かった。


「ふふっ、ボクの方がちょっとだけお姉さんなんだね」


リーチェは嬉しそうに笑った。

その笑顔にドキドキとしてしまう。


「さ、食事も終えたし。今日は泊まっていくんでしょ?」


リオナがロイに何やら意味深に問いかけた。


「リーチェからそう聞いたんですが、いきなり失礼ですよね。村の泊まれるところを教えてもらえれば、そこに行きます」


そう言ってロイは席を立とうとした。


「何言ってるの。うちの旦那はポスコス村の村長代理なの。ロイ君を宿屋に案内するなんて、野暮なことはしないわよ。でも、見ての通りこの家はちょーっと狭いから。そこは我慢してね」


リオナは可愛らしくウインクを作ると、リーチェに笑みを送った。


「ね!良かったでしょ!夜はこれからなんだから、レベルアップの件。詳しく教えてね!」


眼を輝かせるリーチェと両親に気を遣ってもらった手前、それでも宿を取りますとは言い難かった。


「分かりました。お言葉に甘えてお世話になります」


ロイが頭を下げるとリーチェは飛び上がって喜んだ。

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