リーチェの家①
リーチェが案内してくれたのは、ロイが向かおうとしていた村。ポスコス村だった。街道に作られた村は小さいながらも活気に満ちている。
ゲームだと、小さすぎて拠点としても表示されなかったけど、当たり前だけどあちこちに営みがあるんだな。
ロイは無邪気そうに村の中を駆け巡る子供達を見てそう思った。
「あ、リーチェお姉ちゃんが男の人連れてるー」
「彼氏?彼氏なの?」
小さな子供達がリーチェを見ると駆け寄ってきた。
「ふーんっ、もしそうなら皆はどう思う?」
リーチェが意地悪そうに笑うと、リーチェの一番前にいた女の子が天真爛漫な笑顔を向けた。
「良かった!リーチェお姉ちゃんは大きなお姉ちゃんなのに、いつまでたっても私達のお山の大将さんみたいだったもん!こんなリーチェお姉ちゃんを好きになる人がいて良かった」
悪気がなさそうに言う女の子の言葉がクリティカルヒットしたのか、リーチェは胸を抑えると下を向いた。
「もうっ!ち、違うから!今のは冗談冗談!彼はさっき村の外で出会って、家に連れて行くだけだから!」
その言い方は、なんだがまずい気が⋯⋯
ロイの思った通り、今度は違う少年がロイを指差した。
「あー、知ってるぞ!一目惚れってやつで、これからリーチェのお父さんにケッコンをお願いしに行くんだ!」
結婚という言葉を聞いて、数人の女の子達が顔を赤くした。
「だーかーらー、キミタチ!んーんー、もうロイ行くよ!」
恥ずかしさに耐えられなくなったのか、リーチェはロイの手を掴むと走り出した。後ろでは、「ケッコンだー、ケッコンだー」と囃し立てる子供達の声が聞こえた。
「わわっ!少しゆっくり!」
機動力のある狩人のリーチェに引っ張られて、思わず転びそうになる。
ロイは必死に足を運ぶと、大きな木の下に居を構えるリーチェの家に連れてこられた。
小ぢんまりとしているが、よく手入れされた庭。
家の横に作られた畑には、様々な花とみずみずしい野菜が作られている。
「ここが、ボクの家っ!可愛いでしょ?」
リーチェは嬉しそうに言うと、家の扉を開けた。
「父さん、母さんただいまー」
リーチェの声を聞いたのか、奥の部屋から二人の人影が現れた。
「やぁ、リーチェおかえり」
「あらあら、今日も狩りに出ていったの?あら?そちらの方は」
リーチェの父親は柔らかい口調とは対照的に、身体はまるで熊の様に大きく、母親はリーチェの背を少し高くしたくらいの活発そうな印象の女性だった。
「あ!すみません。ロイって言います。さっきはリーチェさんに危ない所を助けてもらったんです」
慌てて深々と頭を下げる。怪しいやつと思われたらどうしようか?
その思いは杞憂だったのか、返ってきたのは意外な返事だった。
「そうかい、それは良かった。リーチェは昔から危険や悪い人を直ぐに見破るのが得意でね。ほら、リーチェがそんなにしっかり手を握るなんて、君はよっぽど好かれたんだね」
リーチェの父親はそう言うと優しい笑顔を見せた。
「わ、わわっ!ボクまだ手を掴んでた?ごめんね!」
ロイ自身、すっかり忘れてたいたが。リーチェはずっとロイの手を掴んだままだったのだ。
パッとリーチェは手を離すと顔を赤くした。
「さぁさ。玄関で立ってたら落ち着かないでしょ。あら?そのツノウサは今晩の夕食かしら」
母親は、リーチェがロイを救った時に倒したツノウサを見ると喜んだ。
「これ、俺が倒したツノウサなんですけど。こちらも使ってください」
ロイがもう一羽のツノウサを差し出すと、母親は眼を輝かせた。
「あらいいの?二羽あれば、ツノウサ祭りができるわよ!」
村に入る前に絞めたツノウサを受け取ると、母親は小躍りした。
「さっ、入ろっ!」
リーチェに促されるまま、ロイはリーチェの自宅に足を踏み入れた。




