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05

翌朝。リゼットはさっそく裏の畑へ野菜を採りに向かうと、二つの影があった。


「居た!王都から追放されたリゼットさん。」


「料理が美味しいかもしれないリゼットさん。」


ぴょんぴょんと跳ねるようにやってきたのは、お揃いのエプロンドレスを着た双子のメイドだった。


「は、はじめまして、リゼット・グランヴィルと申します。……あの、野菜をお借りしています。」


「いいよ。いいよ。自由に過ごして!あと私にも料理作って。」


「私もリゼットさんの料理食べたい。」


双子は甘えるようにリゼットに頼み込む。もちろんですとリゼットは答えると、きゃぁきゃぁと彼女たちは盛り上がる。侮蔑や、冷笑もない。純粋に自分の料理を待ち望んでくれる瞳たち。リゼットはこの城は素晴らしい場所かもしれないと思い始めていた。朝食。アルヴィスの分と双子の分、会っていないが、執事の分。リゼットは昨日よりも丁寧に調理を行った。


「信じられない。もういい匂いする。」


「もう美味しいの勝ち確。」


双子の手伝いもあり、彩り豊かな料理が並んだ。いつの間にか現れた執事も、静かに席についている。


「……上手い。生まれて初めて、食事が美味しいと思った……。」


アルヴィスが、噛みしめるように呟いた。


「美味しいー!泥じゃない!」


「美味しいー!腐ってない!」


「ふむ……これは、実に見事。美味ですな。」


それぞれから溢れる賛辞。リゼットは悦びに震える。ここなら、私は……。彼女は意を決して、アルヴィスを見た。


「ありがとうございます。……あのっ!ここで働かせてください!自由にしていいと仰ってくださいましたが、私に……私に、居場所をください。お願いします。」


深々とお辞儀をするリゼット。沈黙が流れた。けれど、拒絶の沈黙ではなかった。


「リゼット。」


アルヴィスの声が、低く、けれど確かな響きを持って彼女の名を呼ぶ。


「お前はもう、誰にも渡さない。王都にも返さない。……お前の居場所はここだ。」


「あ、ありがとうございますっ!」


頬を涙が伝った。それは彼女が人間として認められたような、生まれて初めてのことだった。




その頃、王都では。


「ねぇ、カイル様。最近、なんだかお料理が苦くないかしら?」


アンゼリエッタは、お気に入りのマカロンを食べて顔を顰めた。リゼットが居なくなり、毒見は他の者が代るがわる行っている。マカロンに毒など入っているはずがない。


「そうか?……リゼットはもう居ない。おかげでアンゼリエッタを婚約者に出来た。毒を盛るような醜い人間は、この城には居ないよ。」


カイルは安心させるように微笑んだが、顔色はいつもより少し悪かった。リゼットを捨てた代償は、じわじわと、けれど確実に彼らの肉体を蝕み始めていた。

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