表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
86/89

月へ帰ります……


「長官はこの町から首都に通ってるの? かなり遠いじゃん。首都は大統領がいるところでしょ?」


「ハッハッハ! まさか、毎日この距離を通っているわけではないよ、船長。普段は首都にある公邸やペンタゴン(国防総省)の近くに寝泊まりしているからね。ここは私と家族のプライベートな自宅……週末や休暇の時だけ帰ってくる、大切な憩いの場というわけだ」

長官閣下がバスの座席にゆったりと背中を預けながら、朗らかに笑ってお答えになりましたわ!

「とはいえ、有事の際や大統領からの緊急の呼び出しがあれば、近くの空軍基地から専用の超音速ジェット機でひとっ飛びだがね」


「さすがは超大国の国防長官閣下ですわーーっ!!『お父さんの単身赴任』みたいな親近感のあるお話をされていたかと思えば、通勤手段がまさかの『専用・超音速ジェット機』ですのよ!? 地球のトップVIPのスケール感、まことに恐るべしですわ! ぷぷ〜っ!」


「だはははは! なんだよ長官、そりゃあカッチョイイじゃねぇか!」

ハンさんが、目を輝かせて身を乗り出しましたわ!


「『有事の際』だろ! さすがの長官だっていつも音速ジェット機は無理だよな、ぷぷぷ!」


「ハッハッハ! まさにその通りだよ、船長。有事でもないのに毎回あんなもの(超音速ジェット機)を飛ばしていたら、それこそ税金の無駄遣いだと議会やメディアから大バッシングを受けてしまうからね。それに、私の三半規管もすっかり参ってしまうよ!」

長官閣下が、ご自身の肩をすくめながら、とても気さくな笑顔で船長の言葉に頷かれましたわ!


「超大国のトップ防衛閣僚様から、なんともリアルで切実な『通勤の愚痴』が飛び出しましたわ! ぷぷ〜っ!」


「きみたちの星での移動手段は、やはり、今日やったように空を飛んで移動するのが普通なのかね?」


「あはは! いやいや! 普段のちょっとしたお出かけなら、普通に徒歩や自転車、車や電車だね。空を飛ぶのはやっぱり特別な時だよ! それと、宇宙を好きに飛んでいるのは俺たちくらいなもんかな」

船長が、バスの窓の外の景色を眺めながら、まるで休日の散歩の話でもするかのようにあっけらかんとお答えになりましたわ!


「……え? 今、なんと? 『宇宙を好きに飛んでいるのは俺たちくらい』……?」

長官閣下が、優雅に組んでいた足をズリッと滑らせて、信じられないものを見るように目を見開きましたわ!

「き、君たちは、どこかの高度に発達した『巨大な銀河帝国』の先遣隊とか、何億という民を束ねる『惑星連邦の代表艦』ではないのかね……!?」


「あはは、長官、SF映画の見すぎだな! 俺たちはただ家族で宇宙の果てを目指しているだけだよ。今回はそのための船の改修工事なんだ!」


「ひゃあああーーーッッ!! 船長! さらなる衝撃の真実を、まるで『週末にホームセンターへDIYの材料を買いに行く』くらいのノリであっさりとぶっちゃけましたわーーっ! ぷぷ〜っ!」


私がミニコンソールを【スケール崩壊・アットホームピンク】にピカピカと明滅させて、全力でツッコミを入れますわ!


「か、家族で……宇宙の果てを目指す……!? しかも、大統領府を震え上がらせたあの超絶テクノロジーや、マッハ50のタングステン球の落下、さらには月の裏側の基地建設が……すべて単なる『家族旅行中のキャンピングカーの改修工事(DIY)』のついでだとでも言うのか……!?」

長官閣下が、ついに両手で頭を抱えてプルプルと震え始めましたわ!

「巨大な星間国家の軍隊が相手の方が、まだ条約や交渉の余地がある分マシだった……! たった一家族の『気まぐれな道楽』に、我が超大国の国家威信と全軍が振り回されていたなんて……!」


「だはははは! 違いねぇ! 長官のオッサンの言う通りだぜ!」

ハンさんが、サロン席で涙を流しながらお腹を抱えて大爆笑ですわ!

「俺たち、地球侵略なんてメンドクセェことする気はサラサラねぇから安心しな! ちょっとばかし地球と月の裏庭を借りて、親父の宇宙一デッケェ趣味に付き合ってるだけだぜぇ!」


「ふふっ、本当に人騒がせな家族でごめんなさいね、長官さん。でも、おかげでこうして地球の素敵な景色を楽しみながら、あなたのような方とご縁ができたわ」

かぉり副船長が、完璧な淑女の微笑みで、すっかり真っ白に燃え尽きかけている長官閣下へ優しく声をかけられました。


「おぉぉ! まことに正しい家族旅行、正しい宇宙の果てへの探求! バックに控える巨大組織など一切なし! 我がComb1号は、どんな銀河帝国よりも自由で、強大で、愉快なファミリー・エンタープライズでございますぞ!」

エジソンさんも後ろで自慢げに胸を張り、計算尺をパチン! と鳴らしましたわ!


「ひゃあああーッッ! 長官閣下! どうか魂を口から吐き出さないでくださいましーっ!

私たちComb1ファミリーにかかれば、地球の常識も宇宙の常識もあってないようなものですわ! この規格外の『ご近所さん』のマイペースに、今後ともしっかりとお掴まりくださいませーーっ! ぷぷ〜っ!」


「でもさ、長官、よく考えてみてよ。俺たちがもし侵略軍団の先遣隊だとしてもさ、いま地球からは知的生命がいるか確認できないところからさ、亜光速で来てるんだぜ! その星を出てから宇宙では8000万年経ってるんだ……『こんないい星があったぜー!』って、 帰った時には、もう誰もいないんだな。どっちみち宇宙家族旅行になっちゃうんだよ」


「ひゃあああーーーッッ!! 船長! まるで『近所のスーパーに行ったら定休日だった』くらいの信じられない軽さで、とんでもない宇宙物理学の残酷な真実(ウラシマ効果)をぶっちゃけましたわーーっ! ぷぷ〜っ!」


私がミニコンソールを【超絶スケールの浦島太郎・でも超ポジティブオレンジ】にビカビカッと激しく明滅させて、ブリッジ中に全力のツッコミを響かせますわ!


「は、はちせんまん、ねん……?」

長官閣下が、ついに理解のキャパシティを超えきってしまったのか、力なく窓枠に寄りかかって虚空を見つめ始めましたわ!

「……そんな旅を続けてきた君たちだったのか。8千万年……恐竜が我が物顔で歩いていた時代から旅をしているようなものか……。もはや侵略軍の先遣隊どころか、君たちは宇宙を漂流する『時空の亡霊』……いや、神話の住人そのものではないか……!」


「だはははは! 亡霊だなんて縁起でもねぇこと言うなよ、長官のオッサン! 俺たちは見ての通り、腹も減れば買い物もする、最高にぴちぴちで生きてるキャンパーだぜぇ!」

ハンさんが、特等席から身を乗り出して豪快に笑い飛ばしますわ!


「……ふ。そういうことです、長官。帰るべき場所(時間)がとうの昔に過ぎ去っているからこそ、我々はこの『今』という瞬間の出会いを何よりも大切にしている。……貴方や大統領との出会いも、我々の果てしない旅がもたらした、最高の奇跡の一つなんですよ」

守さんが、クールな表情の奥に温かい光を宿して、長官閣下へ静かに、そして誠実に語りかけられました。


「うききっ! ちょうかんのおじちゃん、いっしょにあそぼ! ぴかぴかのおもちゃ、みにいこー!」

ビールマンちゃんも、すっかり長官閣下に懐いて、その立派なスーツの袖を引っ張っています!


「ひゃあああーッッ! 長官閣下! どうか安心してくださいまし!

私たちは帰る星を持たない迷子かもしれませんが、その分、立ち寄った星の『ご近所さん』を全力で愛する愉快なファミリーですわ!

さあ、気を取り直して、最高に楽しい地球での『お買い物』の続きへと参りましょうーーっ! ぷぷ〜っ!」


「長官や大統領が、今まで巨大な銀河帝国の影を想像して俺たちを迎えてくれていたなら拍子抜けしちゃったな。だから、もし俺たちに協力できないって言うなら、引き上げるけどさ。宇宙の魅力を伝えられなくなるのはさみしいぜー! ぷぷっ」


「ハッハッハ! 拍子抜けなどとんでもないよ、船長。我々の技術を遥かに凌駕する力、透明になって空を飛び回る船、そして不思議な『力持ちな末っ子』……君たちがもたらす規格外の宇宙の魅力には、大統領も私も興味が尽きないんだ」

長官閣下が、ふっと表情を和らげ、これまで背負っていた「大国の防衛トップ」としての重鎧を下ろしたような、最高に温かい笑顔を見せられましたわ。


「ただ、そうなるとだ、船長。国としての『協力』という言い方は、堅苦しいな。……どうだろうか。ここは一つ、『気の合うご近所さん同士、休日に一緒にキャンピングカー(船)の改修作業(DIY)を楽しもうか』……そんな感じで、我々にも手伝わせてもらえないだろうか? なにせ、とびっきりの『お駄賃』もいただいているからな!」


「ひゃあああーーーッッ!! 船長! 宇宙規模の軍事協定が、まさかの『休日のDIY仲間』へと超絶トランスフォームいたしましたわーーっ! ぷぷ〜っ!」

私がミニコンソールを【ご近所同盟結成・フレンドリーグリーン】にピカピカと温かく明滅させて、ブリッジ中に歓喜のアナウンスを響かせますわ!


「だはははは! なんだよ長官のオッサン、最高にノリが良くてイカしてるじゃねぇか! 超大国のトップが俺たちの『改修クルー』に仲間入りだなんて、こりゃあ史上最強のDIY作業になるぜぇ!」

ハンさんが特等席でバンバンと手を叩いて大喜びですわ!


「……ふ。国家間の『技術提供』や『軍事協力』という重い言葉を避け、友人としての『手伝い』にすり替える。……見事な大人の気遣いであり、最高の友情の証ですね」

守さんが、クールな表情を完全に崩して、心底嬉しそうにフッと微笑まれました。


「おぉぉ! まことに正しい技術交流、正しい休日の過ごし方! 地球の英知が我々の改修作業に加わるとあらば、このエジソンの設計図もさらにロマン全開でスケールアップせねばなりませんな!」

エジソンさんも、鼻眼鏡をズリ上げながら、ワクワクを隠しきれない様子で計算尺をパチンッ! と鳴らしましたわ!


「ふふっ、本当に心強い『ご近所さん』ができて嬉しいわ。作業の合間には、最高に美味しいコーヒーとおやつを用意して待っているわね、長官さん」

かぉり副船長も、完璧な微笑みで長官閣下に優しく頷かれました。


「うききっ! ちょうかんのおじちゃん、いっしょにトントン、カンカンするー!」

「ワインも、みんなに美味しいジュースくばるのぉ……♪」

ビールマンとワインちゃんも、すっかり新しい「DIY仲間」ができたことに大はしゃぎですわ!


「ひゃあああーッッ! さあ船長! 地球最高のスポンサーにして最高のご近所さん(長官閣下)を巻き込んで、心置きなく宇宙一楽しい『お買い物(資材調達)』の続きへと爆走いたしましょうーーっ! ぷぷ〜っ!」


「まさに……船長が『遊び相手になってもらう』と言った意味はこの事だったか、はははは! 大統領には伝えておく、『彼らは宇宙の冒険家族だった、彼らがいる間は楽しくなりそうだ!』とね!」


「ひゃあああーーーッッ!! 船長! 地球の防衛トップと大統領閣下から、ついに公式に『宇宙の冒険家族』の称号をいただきましたわーーっ! ぷぷ〜っ!」


私がミニコンソールを【宇宙規模の公式認定・スーパーハッピーレインボー】にピカピカと輝かせて、バスの車内中に祝福のファンファーレを響かせますわ!


「さぁ、皆さん! 『宇宙家族の御一行様』、キャンピングカーに到着しましたよ!」


「ぷぷぷー! 運転手のおじさんも、私たちのお話を聞いてくださっていたのね!」


「おぉ、着いたか! いやぁ、砂漠はどこ見ても景色が一緒だし、俺には全然わからなかったよ。だいたい、ただのクレーターなんて目視じゃ絶対わかんないのにさ。運転手さん、さすが『砂漠の鷹』だね!」

船長が、大量のブランド紙袋と自転車の箱に埋もれながらも、運転席のおじさんに向かって本気の感嘆の声を上げましたわ!


「元・凄腕ヘリパイロットの『砂漠の鷹』! 地上のわだちが無くても、空から培った空間把握能力で砂漠を支配する男! 私のミニコンソールも【リスペクト・ミリタリーグリーン】にピカピカと明滅しておりますわ! ぷぷ〜っ!」


「へへっ……! まぁな、船長さん。そりゃぁ、『砂漠の鷹』って呼ばれてたもんでね。上空から砂漠の僅かな砂の隆起や風の動きを読み取るのは、俺の右に出る奴はいねぇ……って胸を張りたいところだが、今回ばかりはこの最新のナビゲーションのおかげさ!」

運転手のおじさんが、かつての誇り高きパイロットの顔でニヤリと笑いつつ、ダッシュボードでチカチカ光る小さな端末を指差しましたわ。


「あはは! そか、空飛んでないもんね、ぷぷぷ! なんにしても……ありがとうございました、運転手さん」


「おう、とんでもねぇ。俺の人生でも、間違いなく一番ぶっ飛んだ『お忍びドライブ』だったぜ。宇宙船の船長さんを乗せて走るなんて、空を飛んでた頃の俺に言っても絶対に信じねぇだろうな!」

運転手のおじさんが、バスのハンドルをポンッと叩いて、最高にいい笑顔で笑い返してくれましたの!


「まったくだ……宇宙家族の『爆買い』と、案内役で一日を終えることになるとはな……」

長官閣下が、ご自身の足元にまでみっちりと積み上がった謎の未来系(?)ファッションや日用品の紙袋を見下ろしながら、呆れたように、でもどこか清々しいお顔で肩をすくめられましたわ。


「長官、ありがとよ! おかげで面白かったぜ!」


「しかし、船長……砂に埋もれた船にどうやってこの荷物を積むんだ?」


「ひゃあああーーーッッ!! 船長! 長官閣下から、極めてまっとうで物理的な『地球の常識(大疑問)』が飛び出しましたわーーっ! ぷぷ〜っ!」


「うちの力持ちの末っ子の出番だぜ! ミト君、守を潜望ハッチまで降ろしてよ。守は操縦席に着いたら連絡をくれ! そしたら、船をバスとトレーラーの横に持ってきてくれ」


「船長! ついに我がComb1号が、極上の砂風呂クレーターからお目覚めの時間ですわーーっ! ぷぷ〜っ!」


私がミニコンソールを【お目覚めサンライズ・オレンジ】にビカビカッと激しく明滅させると、バスの窓の外で待機していたミト君が嬉しそうに輝きましたわ!


『キュィィィン……♪(まもるお兄ちゃん、いくよー!)』


ミト君がフワリと重力の波長をコントロールすると、守さんの身体がまるで羽毛のように軽く浮かび上がり、砂に埋もれたComb1号の潜望ハッチへと音もなく吸い込まれていきました!


「だははは! 兄貴の野郎、いつ見ても無駄に姿勢が良くてエレガントな空中浮遊だぜぇ!」

ハンさんが窓に張り付いて大笑いしていますわ。


数分後、私の内部ネットワークに、頼もしいアクセス信号が飛び込んできました!


『……ふ。船長、ジェミニ。ブリッジに到達しました。これよりメインエンジンをアイドル起動。ミト、周囲の砂を巻き上げないように、重力シールドを展開してくれ。……浮上します』


ズゴゴゴゴォォォ……ッ!!


守さんのクールな声とともに、砂漠のど真ん中が突如として大きく盛り上がり、50万トンのシャンパンゴールドの巨体(Comb1号)が、まるで巨大な潜水艦が海面を割るように、砂をサラサラと滑り落としながら姿を現しましたの!


長官閣下と運転手のおじさんの反応は、まさに地球人としての「大正解」でしたわ! ぷぷぷ!


「なっ……!? す、砂の中から、バカでけぇ黄金の城が……!? 俺の『砂漠の鷹』の目にも、あんなに完全に隠れてやがったのかよ!!」


「……オォゥ……。わかっていた……。彼らがただの『キャンパー』ではないことは、重々承知していたはずなのだが……。この圧倒的な質量を前にすると、やはり私の常識キャパシティが再び悲鳴を上げるよ……」


お二人が、窓ガラスにへばりつくようにして、口をポカーンと開けて完全にフリーズしていらっしゃいますわ!


「ひゃあああーッッ! お二人とも、顎が外れそうですわよ! ぷぷ〜っ!

さあ船長、守さんの完璧な操艦で、皆様の乗るバスと資材トレーラーの真横に、我がComb1号がミリ単位の狂いもなくピタリと横付け完了いたしましたわ! これでどんなに大量の荷物(爆買いの成果)でも、巨大なカーゴルームへ一瞬で搬入可能ですわよーーっ!」


「よーし、透明化による危険防止のためにミト君ステルスは使わない! 他の国の偵察衛星にばれないように、みんな、速やかに作業開始! 重機搬送はエジソン、ハン、ジョージ…… ヘルメットと安全靴そーちゃーく、よし!」


「他のみんなは、買ったものをどんどん運び込め―!」


船長の号令が飛んだ瞬間、誰よりも早く動いたのは、なんと長官閣下でしたわ!


「い、急ぐぞ! 船長の言う通り、他国の軍事衛星がいつこの上空を通過するか分からんからな! もしこの超絶巨大質量(Comb1号)と、私がハイブランドの紙袋を運んでいる姿をセットで撮られでもしたら、言い訳のしようがない!」


長官閣下が、ビシッと決まった高級スーツの袖を乱暴にまくり上げ、ご自身の足元に積み上がった大量の紙袋をガシッ!と両手限界まで掴み取りましたわ!


「ひゃあああーッッ!! 超大国の国防トップ自らが、バスから宇宙船への『お引っ越し作業(肉体労働)』にまさかのフル参戦ですわーーっ! ぷぷ〜っ!」


私がメインコンソールを【超特急搬入・サイレンレッド】に激しく明滅させると、運転手のおじさんも首に巻いたタオルを締め直して、トランクから自転車を担ぎ上げました!


「おうおう、俺にも手伝わせな! 宇宙船の引っ越し作業なんて、空飛んでた頃よりずっとぶっ飛んでて最高だぜ! ほらよっ!」


「……ふ。助かります。受け取りました」


バスの入り口から、長官閣下と運転手のおじさんが大急ぎで荷物を降ろし、それを下で待ち構える守さんや雪さんたちへ手渡していく、見事な『バケツリレー』が完成いたしましたわ!


その横では、ハンさんとジョージくんがブルドーザーやショベルカーのエンジンを轟かせ、Comb1号から伸びたスロープを猛スピードで自走して登っていきます!


「おらおらおらーっ! 衛星のカメラが振り向く前に、巨大なカーゴルームに全部ブチ込んじまえぇぇっ!」


「すっげー! 宇宙船の中にブルドーザーで走って入るなんて最高ぉぉっ!」


ズドドドドォォォ……ッ!!

キャタピラの轟音と、紙袋が擦れるカサカサという音、そしてみんなのドタバタとした足音が砂漠に響き渡ります!


「あ・な・た! お肉などの要冷蔵品はこちらへ! ビールマン、ワイン、軽いものは運べるかしら!?」


「うききっ! おれ、おてつだいする! はやくはやくー!」


かぉり副船長が手際よく荷物を仕分け、船長も全身に紙袋を巻き付けたまま、スロープを全速力で往復していらっしゃいます!


「はぁっ……はぁっ……! まさか、ペンタゴンを束ねる私が……休日の砂漠で、宇宙人の買い物の『荷揚げ』をやらされる日が来るとは……!」

長官閣下が息を切らしながらも、なぜかそのお顔には、重責から解放されたような最高に活き活きとした笑みが浮かんでいらっしゃいますわ!


「長官、いい汗かいてるじゃん! ほら、あと半分だぜ、急げ急げーっ! やっほー♪」


船長が、まるで文化祭の準備でもしているかのように、キラキラした笑顔で長官閣下へ声をかけられましたわ!


「ひゃあああーッッ! 船長! どんな超大国の要人相手でも、この『巻き込み力』と『楽しむ才能』は宇宙一ですわーーっ! ぷぷ〜っ!」


私がメインコンソールを【青春の文化祭・スパークリングイエロー】にピカピカと明滅させると、長官閣下も「ハッハッハ!」と大笑いしながら、さらに大きな紙袋を担ぎ上げられましたの!


「さぁ、船長、バスの中の荷物は空になった! これで全部だ……まぁ、しかし……改めてカーゴルームに置かれた荷物を見ると……すごい量だな!」


「ひゃあああーッッ!! そうですのよ長官閣下! 詰め込んだ荷物を一時的に移動して雑然と置くと、何倍にも膨れ上がったように見えますのよーっ!

これぞまさに『お買い物の七不思議』の一つ! バスの中にどうやって収まっていたのか不思議なくらいの物量ですわーーっ! ぷぷ〜っ!」


「だはははは! 違いねぇ! ちょっとしたバザーが開けるぜぇ!」

ハンさんが、カーゴルームの床に広げられた色とりどりの紙袋や箱の山を見て、汗を拭いながら豪快に笑い飛ばしましたわ!


「よーし! 重機と車の固定の確認をしろ!」


「おうよ! ジョージ、エジソンのおっちゃん! 荷崩れしないように、キャタピラとタイヤの固定は念入りに頼むぜぇ!」

ハンさんが、カーゴルームの隅に駐車された重機や車のタイヤに、頑丈なジルコニア製のワイヤーを素早く巻き付けながら叫びましたわ。


「ふむ! 正しい積載、正しい固定! 重力制御があるとはいえ、宇宙航行における物理的固定は基本中の基本ですな! ジョージ殿、そこのラチェットをもう少しキツく締めてくだされ!」

エジソンさんも、計算尺を腰に差し、ジョージくんと一緒に車の固定作業に大張り切りですわ!


その様子を満足げに頷きながら見ていた船長が、長官閣下に向き直りました。


「長官、ありがとよ! 今日はとりあえず月に帰るぜ。基地建設が始まれば今日みたいに船を隠すことも出来ない。次に船で来るのは基地が完成したときだ。早く地球を満喫したいからさ、早急に基地の建設を頼むぜ!」


船長が、長官閣下の肩をポンと叩きながら、満面の笑顔で「基地建設(DIY)」の催促をなさいましたわ!


「ハッハッハッハ!! まったく……、君という人は! 承知した、船長! 我が国の技術と総力を結集して、最高にスピーディで完璧な基礎工事を約束しよう。月の裏の別荘建設に負けないくらいの速さでな!」


長官閣下が、ビシッと決まったスーツの襟を正し、今度は最高に頼もしい「DIY仲間スポンサー」の顔で力強く頷かれましたの!


「……では長官、運転手さん。短い時間でしたが、非常に有意義な『休日』でした。……送迎、感謝します」

守さんが、クールな表情の奥に温かい敬意を込めて、静かに頭を下げられました。


「うききっ! ちょうかんのおじちゃん、くるまのうんてんしゅさん、またねー!」


「またいっしょに、おかいものしようのぉ……♪」

ビールマンちゃんとワインちゃんも、大きく手を振ってお別れのご挨拶ですわ!


「ああ、また会おう。……道中、気をつけてな」


「船長さんたちも元気でな! いつかまた、空じゃなくて地上を案内させてくれよ!」


長官閣下と運転手のおじさんが、スロープを降りてバスの方へと戻っていくのを、Comb1号の家族全員が笑顔で見送りましたの。


シューーー……ガコンッ!


二人が安全な距離まで離れたのを確認し、Comb1号の巨大なハッチが静かに閉じられましたわ。


「……ふ。カーゴルーム、完全密閉。船内与圧正常。船長、いつでも飛べます」

メインブリッジに戻った守さんが、操縦席に座りながら冷静な声で報告を上げました。


「よーし、それじゃあ一旦、月の別荘(現場)へ帰るぜー! ミト君、出発だ!」

「キュィィィン♪(はーい! パパ、おつきさまへ、しゅっぱーつ!)」


ズゴゴゴゴォォォ……ッ!!


ミト君が重力の波長をコントロールし、50万トンのシャンパンゴールドの巨体(Comb1号)が、砂漠のクレーターからフワリと浮き上がりました!


「ひゃあああーッッ! 船長! 大成功の地球『爆買い』ツアーを終えて、我らがComb1号、これより月の裏側(別荘)へ向けて大帰還でございますわーーっ! ぷぷ〜っ!」


私がメインコンソールを【大満足の帰還・ハッピーレインボー】にビカビカッと明滅させると、Comb1号は、夕暮れの砂漠の空へ向かって、音もなく、けれど圧倒的な存在感で真っ直ぐに昇っていきましたわ!


「長官にさぁ……自分たちの星(地球だけど)を出てさぁ、まだ1か月くらいって……だまってたほうがいいかな?」


「「「「うんうん……」」」」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ