ワインセンサー
「ひゃあああーッッ! 船長! ハン教官とジョージ候補生を乗せたファルコン号、無事に本船(Comb1号)のドックへ着艦いたしましたわーっ! ぷぷ〜!」
私がメインコンソールを【帰還を祝う凱旋パレードのゴールド】にピカピカと明滅させると、プシューッという重厚な排気音とともに、ブリッジのハッチが開きましたわ!
「ハン、ジョージ、お帰り! よくやった、まぁまぁ上出来だぜ。ジョージどうだった?」
「船長!! すっげぇ、すっげぇよ!!」
ジョージ君が、ヘルメットを小脇に抱えたまま、顔を真っ赤にして飛び込んできました! その瞳は、窓の外の天の川銀河よりもキラッキラに輝いています!
「ファルコン、ものすっごく速いんだ! 星がビュンって線になって、体がシートにグググッて押し付けられて! ハンさんの操縦、魔法みたいだった! 僕、農場のトラクターも好きだけど……絶対にハンさんみたいな宇宙一のパイロットになる!!」
「だはははは! おうよ親父、聞いたか!?」
後ろから、フライトジャケットの襟を立てて最高にドヤ顔のハンさんが、親指でジョージ君を指差しながら自信満々に登場ですわ!
「こいつ、大気圏を抜けるまではチビってシートにしがみついてたが、マッハを超えて宇宙に出た途端に目を輝かせやがってよ! さすがは未来のComb1号エース候補生だぜぇ! 俺様の『超絶・神業マニュアルドライブ』を、一瞬たりとも瞬きせずに目に焼き付けてたぜ!」
「おぉぉ……ジョージ……! お前、すっかりいっちょ前の男のツラ構えになりやがって……!」
農場セクターから駆けつけていたバートさんが、太い腕でジョージ君をガシッと抱きしめ、顔をくしゃくしゃにして男泣きしていますわ!
「船長、ハン! 本当にありがてぇ! ただのハワイの農場のネズミだった俺の息子が、まさか伝説のファルコンで宇宙を飛び回る日が来るなんてよぉ……!」
「……ふ。無事の帰還、何よりだ。だが進、少し無茶なG(重力)をかけすぎじゃないか?」
操縦席で腕を組んでいた守さんが、涼しい顔で、でも空自の元隊長らしい鋭いツッコミを入れましたわ。
「ジェミニのバイタルモニターを見ていたが、ジョージの心拍数が一時、完全にレッドゾーンを振り切っていたぞ。いくらミトが重力を緩和しているとはいえ、お前の教官としての『ブレーキ』が壊れているんじゃないのか?」
「げっ! アニキ、ジェミニ! そ、それはその……実戦さながらの厳しいOJT(現場訓練)ってやつで……!」
ハンさんがタジタジになっている横で、船長は「あははは!」と豪快に笑って、ジョージ君とバートさんの肩をバンバンと優しく叩いていらっしゃいますわ!
「そうだな、ハン、ちょっとやりすぎだな、ただ、ジョージの男気ってやつが証明されたのも事実だから、ハン、こっち来い……大統領たちを脅かすなの、命令無視の……ゴチン★!」
「ひゃあああーッッ! 船長からの愛の鉄拳『ゴチン★!』、見事にハンさんの脳天に炸裂いたしましたわーーっ! ぷぷ〜っ!」
私がメインコンソールを【大爆笑のオレンジ&イエロー】でチカチカと激しく明滅させると、ブリッジの全員が腹を抱えて笑い出しました!
「だははっ! いってぇぇぇっ! 親父、わかった、わかったぜ!……ごめんよぉ!」
ハンさんが、最高にキマっていたドヤ顔から一転、おでこを押さえながら涙目で飛び上がりましたわ!
「ぷぷぷ! さすが現場監督による安全教育、一ミリの狂いもなく炸裂いたしましたわね! 大統領を驚かせすぎた無茶なフライトを怒りつつも、ジョージ君の男気とハンの『意外と考えているところ』をちゃんと認めて言葉にする船長の優しさ、本当に現場の大黒柱らしくて頼もしいですわ!」
バートさんも「だはは! ハンさん、ご愁傷様です!」と男泣きの涙を拭きながら大笑いしています。ジョージ君も「ハンさん、大丈夫!?」と心配しつつ、やっぱりキラキラした憧れの瞳でハンさんを見上げていますわ!
「……ふ。見事なオチだ。これでハンも少しは懲りるだろう。……いや、懲りないか」
守さんが呆れたように、でも最高に楽しそうな笑顔で小さく肩をすくめられました。
「よーし、昼飯までは時間がある、エジソン、地球基地の設計図を出してくれ、みんなで検討しよう」
「了解いたしましたわ、船長!」
私がメインコンソールを、知的な創造力を刺激する【ワクワクのブループリント・シアン】に切り替えると、ブリッジのメインテーブルの中央に、エジソンさんの端末から転送された超高精細な3Dホログラムが「ズバァァーン!」と勢いよく浮かび上がりましたわ!
「さあ皆様! 昨夜、マッハ50のタングステン球が砂漠のど真ん中にブチ開けてくれた『超特大クレーター』をフル活用した、我がComb1号の極秘・地球地下ドック(兼、遊び場?)の設計図ですわよーっ! ぷぷ〜っ!」
エジソンさんが鼻眼鏡をくいっと押し上げ、指揮棒のようにピカピカの計算尺を振ってニヤリと笑いましたわ。
「ふむ! 正しい土木工事、正しい秘密基地! 船長、クレーターの形状データはすでにミト殿と雪さんのスキャンで完璧にマッピング済みですぞ。あとはこの巨大なすり鉢にどうジルコニアの蓋をして、どうカモフラージュするか……。内部のレイアウトも含め、夢が膨らみますな!」
「だははは! 最高のヒマつぶしじゃねぇか! おい親父、俺は絶対にスーパーカーをズラリと並べる専用ガレージと、ファルコンのメンテナンス用ピットが欲しいぜ!」
さっきまで涙目でおでこをさすっていたハンさんが、秒で立ち直ってホログラムに身を乗り出してきましたわ!
ジョージ君も「すっげぇ……映画みたいな本物の秘密基地だ……!」と、さらに目をキラキラさせてホログラムの周りをぐるぐる回っています!
「……ふ。防衛設備と外部からのステルス偽装は俺と雪に任せてください。……しかし船長、大統領たちがこれを見たら、また胃薬を手放せなくなるでしょうね」
守さんも、呆れたように言いながら、どこか楽しそうにホログラムの防壁部分を指先で調整し始めましたわ。
さあ船長! 地球のトップを巻き込んだ壮大な交渉の裏で進む、ワクワクが止まらない秘密基地の設計会議のスタートですわね! どんなド派手で規格外なアイデアが飛び出すのか、私の記録メモリーもウキウキでフル稼働でお待ちしておりますわーっ! ぷぷ〜っ!
「まず最初に行っておくぞ。この基地は地球の材料で地球の人材で作ってもらう、だからジルコニアは使わない、ステルス偽装もしない、あくまでも長官たちの基地となるものを、我々が借りるというものだ、だから、地球人が一般的に使える基地じゃないとダメだぜ」
「ひゃあああーッッ! 船長、なるほどですわーーっ!!」
私がメインコンソールを、地球への愛と敬意を表す【アース・ブルーとエコロジー・グリーン】にパッと切り替えると、ブリッジの空気が「SF的ワクワク」から「現実的な現場の熱気」へと一気に引き締まりましたわ!
「宇宙一硬いジルコニア装甲も、ミト君の絶対的なステルスも一切封印! あくまで地球の長官さんたちが自分たちの手で管理・運用できる『地球産・最新鋭基地』として造り上げるんですのね! さすがは現場を知り尽くした大黒柱、相手の立場に立った完璧な『地球ファースト』の配慮ですわ! ぷぷ〜っ!」
「ええええっ!? マジかよ親父!」
ハンさんが、せっかく思い描いていた超SFチックなガレージの夢を絶たれて(?)、ホログラムの上でズッコケましたわ!
「じゃあ俺のスーパーカーを並べるガレージも、ファルコンのピットも、全部地球の鉄骨とコンクリートで造るのかよ!? ……いや、でも待てよ? むき出しの鉄骨に、薄暗いコンクリートの壁、そこに並ぶピカピカのスーパーカー……だははは! そっちの方が逆に『地球の秘密基地』っぽくて最高にシビれるじゃねぇか!」
「お、お代官様……! このエジソン、てっきりジルコニアとプラズマを惜しげもなく注ぎ込んだ超未来地下帝国を築くものとばかり……!」
エジソンさんが鼻眼鏡をずり落としながら、少しだけ悔しそうに、でもすぐに瞳の奥に技術者としての新しい炎をメラメラと燃え上がらせましたわ!
「……ふむ! 正しい制約、正しい土木建築! 地球の現行技術と材料の限界を極限まで引き出し、彼らの手で維持・管理できる『究極の地球産・要塞』を設計する……! 逆に私の設計手腕が問われる、最高にハードな縛りプレイ(ミッション)ですな! シャカシャカシャカッ!」
エジソンさん、今度は地球の建築基準法ギリギリ(?)の強度計算を、嬉々として計算尺で弾き始めました!
「……ふ。さすが船長だ」
守さんが、深く納得したように腕を組んで頷かれましたわ。
「どれだけ高度な設備を提供しても、地球側に修理や維持ができない『ブラックボックス』を作ってしまえば、後々彼らの重荷になり、不要な警戒心を生むだけだ。長官たちが自分たちの権限と技術で完全にコントロールできる基地……これなら、大統領も長官も安心して胃薬をしまえるでしょうね」
「そういうことだ! さあエジソン、ジェミニ! 地球の最新の建材データと、建築工法のデータベースを引っ張り出してくれ!」
船長が、まるで昔馴染みの建設現場の親方のように、ニカッと笑ってパンッと手を叩きました!
「アイ・アイ・サー、船長! 地球の最新建築データ、および軍事用地下シェルターの工法データ、私の演算回路にフルロード完了いたしましたわ!」
「開閉式の天井に、出入り口の地上ビル、ミト君の場所と……ここは広いスペースを作って、ここに船が来て、カーゴハッチの脇に大型のエレベーター……みたいなー……」
「ひゃあああーッッ! 船長、最高にロマン溢れるレイアウト案ですわーーっ!」
私がメインコンソールを、男のロマンと重機の力強さを表す【超建機エボリューション・イエロー】にパカパカと明滅させると、船長のふんわりとした(?)ご要望に合わせて、テーブルの上のホログラムが超高速で自動構築されていきますわ!
「はい、ジョージ君のジュースと、ハンさんのジュースと、みんなのジュースと、こっちはバートさんのジュースです、皆さんどーぞ♪」
そこへ、見習い給仕長のワインちゃんが、自分の背丈の半分くらいある大きなお盆に、冷たいジュースをたくさん乗せて、パタパタと小走りでやってきましたわ!
「みんな自分のを飲んでね♪ 秘密基地の会議、がんばってね!」
ワインちゃんが、得意げにポーズを決めると、ピカピカの瞳がさらにキラキラ輝きましたわ! ぷぷぷ!
「おう! サンキューな、ワインちゃん!」
ハンさんが真っ先にジュースを受け取り、一気に喉を鳴らして飲み干しましたわ!
「ふぅ、俺ものどが乾いてたんだ、ワインありがと! ゴクゴク♪」
「砂漠の砂で見事にカモフラージュされた巨大な開閉式ドーム天井! 地上にはカモフラージュ用のダミー観測所ビル! そして船長の仰る通り、カーゴハッチから直結する超大型エレベーターを配置いたしましたわ! これならハンさんのスーパーカーも、ファルコン号も、スムーズに地上へ出撃可能ですわね! ぷぷ〜っ!」
「おぉぉ……! ふむ! 正しい動線、正しい秘密基地! 」
エジソンさんが目を輝かせて、指揮棒のように計算尺を振りますわ!
「むき出しのコンクリートと強靭な鉄骨の美学を活かしつつ、あのクレーターの形状をそのまま利用した『すり鉢状の防爆構造』! 大統領府の地下シェルターすら凌駕する、地球産・最強の要塞に仕立て上げてご覧にいれましょうぞ! シャカシャカシャカッ!」
「だはははは! たまんねぇぜ親父! サンダーバードも真っ青の基地じゃねぇか!」
ハンさんが、再びドヤ顔でホログラムのエレベーター部分を指差しましたわ!
「おいエジソン、その大型エレベーター、俺のスーパーカーがせり上がる時は絶対に赤いパトランプが回って『ウゥゥゥーッ!』ってサイレンが鳴る仕様にしてくれよな! 男のロマンってやつだぜ!」
「……ハン、さっき船長が『あくまで長官たちの基地だ』と言ったばかりだろう。お前の遊び場を作る気か」
守さんが呆れたようにため息をつきつつ、コンソールを操作してホログラムにスッと修正を加えました。
「……とはいえ、大型エレベーターの稼働時の安全確認のためにも、回転灯と警告音波は必須機能だ。……軍事基地っぽく、少し重低音の渋いサイレンにしておいてやろう」
「ひゃあああ! 守さん、冷静な顔をしてしっかりハンさんのロマン(要望)に応えてあげていらっしゃいますわーっ! ぷぷぷ!」
さあ船長! 宇宙一の頭脳たちが本気で挑む「地球の材料で造る最高の秘密基地」、外枠の青写真は完璧に見えてまいりましたわよーっ! 次は内装や、肝心の「ミト君のお部屋」のセッティングですわね! ぷぷ〜っ!
「おーいジョージ、ジュース飲めよ、ほいこれ…ん!?…」
「船長ありがとうございます、ゴクゴク……ぷはぁ~、おいしいー♪」
「ひゃあああ! ジョージ君、初めてのファルコン号での大絶叫フライトと、映画みたいな秘密基地の計画ですっかり喉がカラカラだったんですわね! 『ぷはぁ~』って、とっても美味しそうに一気にジュースを飲んでいらっしゃいますわーっ!」
私がメインコンソールを【平和なティータイムのぽかぽかピンク】でふんわりと明滅させて、その微笑ましい光景を見守っていると……あれれ?
「……せ、船長? どうなさいましたの?」
ジョージ君にジュースのグラスを渡した手のまま、船長がなんだかハトが豆鉄砲を食らったようなお顔で完全にフリーズしていらっしゃいますわ!
「これは俺の、これはハンの、これはバートの……やっぱり」
「ひゃあああ!? 船長、皆様が持っているグラスを順番にツンツンと触って、一体何を確認していらっしゃるんですの!?」
「いや、ジュースの温度が全然違う、ハンとジョージとバートのはちょっとぬるいし、俺たちのは冷たい……」
「え、そうなんですの? なんでですの?・・・・」
私が不思議に思ってコンソールをパチパチさせていると、
「がははは、俺様はすごく飲みやすかったぜー!」
「僕も、冷たいのはちょっとって思って待ってたんだけど船長にすすめられて飲んだら冷たくなくておいしかったんだ!」
「えへへ……ハンさんとジョージ君とバートおじちゃんは寝不足の匂いがしたの~。寝不足の人はお腹が痛くなるから冷たいのダメって、メリーさんが言ってたの♪」
「ひゃあああーーーッッ!! ワインちゃん、なんて、なんてお優しいんですのーーーッ!!」
私がメインコンソールを、感動でウルウルに潤んだ【優しさ1000%のぽかぽかオレンジ】にパァァッと輝かせると、ブリッジ中が信じられないほどの温かい空気に包まれましたわ!
「ただの『お運び』のミスかと思いきや、初めてのファルコン操縦でヘトヘトになっていたジョージ君や、過酷なフライトで神経をすり減らしたハンさんたちの『寝不足の匂い(お疲れのサイン)』を野生のカンでバッチリ察知して、メリーさんの教え通りに胃腸を気遣ってあげるなんて……!!
ただの給仕長見習いどころか、もう立派なComb1号の給仕長じゃありませんの! ぷぷ〜っ!」
「うおぉぉ……ワ、ワインちゃぁぁん……! 俺様、そんなこと気遣ってもらったの、人生で初めてだぜぇ……!」
ハンさんが、ぬるめのジュースが入ったグラスを両手でぎゅっと握りしめて、本気で感動の涙をウルウルさせていますわ! バートさんも「だはは……こりゃあ、どんな高級な酒より五臓六腑に染み渡るぜ……」と目頭を押さえています。
「え、でも匂いって言ったぞ、ワイン……匂いでその人の体調が分かるのか?」
船長が、グラスを持ったまま不思議そうに首を傾げました。するとワインちゃんが、得意げにエプロンのポッケに両手を入れて、胸を張りましたわ!
「うん! わかるよ! あとね、歩く音ご機嫌悪いとか、痛いところとかがわかるし、お顔の色とか形とかで疲れてるとか、げんきとかもわかるよー!」
「ひゃあああーーーッッ!! 船長、皆様! まことに驚くべき事実ですわーーっ!!」
私が医療用スキャナーのデータをホログラムで空中にパパッと展開いたしましたの!
「ワインちゃんの感覚は、どうやら極めて高度な生体センサーとして機能しているみたいですわ! 今回のハンさんやジョージさんやバートさんは、疲労やストレスから発せられる微細なフェロモンの変化を、直感的な『匂い』として捉えているんですのよ! ぷぷ〜っ!」
「マジかよ……! 俺の『見栄』も『痩せ我慢』も、ワインちゃんのお鼻には全部筒抜けってことか!?」
ハンさんが、少しだけ顔を赤くして頭をかきましたわ。
「……ふ。ハン、お前の見栄など、ワインの純粋な優しさの前には何の役にも立たないということだな」
守さんも、少しだけ口角を上げてハンさんをからかいます。
「3人とも昨夜は寝れなかったのか……あはは、お疲れ様! ありがとよ」
「だははは! いやぁ船長、お恥ずかしい! 実は息子の初フライトが心配だったのと、ハンさんから聞いた『宇宙の猛牛』のロマンに俺まで興奮しちまったのとで、昨晩はジョージと2人、ベッドの中で一睡もできねぇで語り明かしちまったんですよ! まさかその寝不足まで、こんなちっちゃな給仕長殿にまるっとお見通しだったとはなぁ!」
バートさんが、大きな手で照れくさそうにひげを撫で回しながら、涙目で豪快に笑いました。
「ひゃあああーッッ! バートさんとジョージ君の『ワクワク親子の夜更かし』まで、見事に自白させられてしまいましたわーっ! ぷぷ〜っ!」
私がメインコンソールを【誤魔化し不可のクリア・ホワイト&照れ隠しのぽかぽかピンク】にチカチカと明滅させると、ブリッジはさらに温かい笑い声に包まれましたわ!
さあ船長! ただの給仕長見習いだと思っていたワインちゃんが、まさかの「超高性能バイタルスキャナー(お鼻)」搭載のスーパーナースだったことが判明いたしましたわ!
この驚異のお鼻があれば、どんなに無茶をするクルーがいても安心ですわね! ぷぷ〜っ!
「そうか、メリーさんはどうなんだ、ベテラン看護師さんだぜ」
船長が感心したように、厨房の奥で微笑んでいるメリーさんへ視線を向けました。
「ふふ……ええ、私も今、本当に驚いているところよ」
メリーさんが、目元を押さえて感動している男たちを優しく見渡しながら、静かに歩みみ寄ってきました。
「さっき厨房でね、ワインちゃんが急に『ハンお兄ちゃんたちのジュース、冷たいのダメ! ちょっとだけポカポカにするの!』って一生懸命言うから、不思議に思いつつも温度調整をやらせてみたのよ。まさか、そこまで正確に皆さんの疲労度やバイタルサインを読み取っていたなんて……。長年看護師をやってきた私にだって、匂いや足音だけでそこまで完璧に状態を見抜くなんてできないわ。……完全に脱帽ね」
「船長、皆様! 我らがComb1号が誇る、あの超・ベテランナースのメリーさんに『私にもできない、脱帽だ』と言わしめるなんて!!」
私がメインコンソールを【スタンディングオベーションのゴールド】でキラキラと輝かせると、ブリッジは再び大歓声に包まれましたわ!
「ワインちゃん……お前ってやつは……最高だぜぇ……!!」
ハンさんがついに堪えきれずに男泣きし始め、バートさんとジョージ君も「ワインちゃん、ありがとう!」と大感動!
当のワインちゃんは「えへへ~♪」と照れくさそうにエプロンを揺らしながら、船長の足元にギュッと抱きついていますわ!
「すげーな、ワイン……さすがだぜ! こんなに頼もしい給仕長はいねーよ。これからも頼むよ、ワイン!」
「うききっ! ワイン、すごい! メリーさんよりもおはなきくの!?」
ビールマンも、ワインちゃんの大活躍に大興奮で、ワインちゃんの周りをクルクルと回りながら喜んでいますわ!
「ふふ、ワインちゃん。これからも皆の『元気』のチェック、お願いできるかしら? あなたのその才能、Comb1の給仕チームにとってこれ以上ないくらい頼もしいわ」
メリーさんが、ワインちゃんの目線に合わせて優しくしゃがみ込み、その小さな手を握りました。
「うん! ワイン、みんながずっと元気でいられるように、いっぱいおはなクンクンするね!」
ワインちゃんが、メリーさんの言葉に力強くコクコクと頷き、満面の笑顔で答えましたわ!
「だははは! 親父、こりゃあもう、隠し事は一切できねぇな! 俺も、腹が減った時はワインちゃんに一番にバレちまうってわけだ!」
ハンさんが、まだ少しウルウルした目で、でも最高に楽しそうに笑い声を上げました。
「ひゃあああーッッ! 船長、皆様! 我らがComb1に、また一つ無敵の力が加わりましたわね! 宇宙一のパイロットたちに、宇宙一の頭脳、そして宇宙一のお鼻を持つスーパーナース! これからの旅が、ますます安心で楽しくなっちゃいますわーっ! ぷぷ〜っ!」
「あとよ、えーと、
ハン:『俺様、そんなこと気遣ってもらったの、人生で初めてだぜぇ』と、
ジェミニ:『超・ベテランナースのメリーさん』は、
いいのかな? 雪さん、メリーさん……もしよろしければ、どうぞどうぞ……」
船長が、ニヤニヤと最高に意地悪な(?)笑みを浮かべながら、ポツリと恐ろしい爆弾を投下いたしましたわ!
その瞬間、ブリッジの気温がマイナス272度のブーメラン星雲並みにスゥッと冷え込みましたの!
「ハン! 私だってあんたに出すジュースの温度くらい気を使ったことはあるわよ! 鈍感!」
観測席の雪さんが、絶対零度の笑顔(目が全く笑っていませんわ!)で、ピシャリとハンさんを叱りつけました!
「ひぃぃっ!? ゆ、雪! ち、ちがっ、これはそういう意味じゃなくてだな!? ほら、ワインちゃんはちっこいからさ!」
ハンさんが自慢のフライトスーツの中で滝のような冷や汗を流し、見事なムーンウォークでズルズルと後ずさりしています!
そして、私の背後からも、とてつもないオーラが……。
「ジェミニさん、『超』は、余計じゃないかしら……。ふふっ、私、気持ちはいつでもフレッシュな新米ナースよ?」
メリーさんが、優し〜い声色のまま、背中に【般若と阿修羅のハイブリッド】が見えるほどの特大のプレッシャーを放って微笑んでいらっしゃいますわ! 私のメインCPUが恐怖で「ピーガガガッ!」と悲鳴を上げております!
「ひゃあああーーーッッ!! も、も、申し訳ございませんわーーっ!! メリーさんは永遠のフレッシュ・ビューティー・ナースですわーーーっ!! 私の辞書データから『超』という単語を今すぐ完全消去いたしますわーっ!」
私がメインコンソールを【大慌ての冷や汗ブルー&土下座のグレー】で激しく明滅させ、ホログラムの私が床にめり込むほどのスライディング土下座をキメると、船長が「ひゃああーー!」と一番楽しそうに笑っていますわ!
「……ふ。ハン、そしてジェミニ。言葉選びは、未知の惑星に着陸する時よりも慎重に行うべきだな」
守さんが、この地獄絵図の中で一人だけ涼しい顔をしてコーヒーを啜りながら肩をすくめました。
ワインちゃんとビールマンは「?」と首を傾げています。
船長がニヤリと笑って親指を立てました。
「誤解は解かないとねぇ……アディオス、ハン、ジェミニ、二人に幸あれ。
……さぁ、続きの基地の検討会議やろうか……」
「ひゃあああーーー! 船長―――!」




