表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
68/76

豪遊禁止

「船長! 長官の携帯から連絡が来ましたよ!」

雪さんが、通信席から冷静な(でもちょっと楽しそうな)声で船長に伝えました。


「ひゃあああーッッ! 船長、国防長官閣下からの直通ホットライン通信、バッチリ受信いたしましたわーっ! ぷぷ〜!」


私がメインコンソールを緊急、かつちょっとだけお茶目な明滅パターン(赤と緑の交互点滅!)に切り替えると、ブリッジの空気がほんの少しだけ引き締まりましたわ。


「お、雪さん取ってくれ、用件を聞いてちょうだい」


「……はい、こちらComb1号通信席。……はい。……え? キャ、クレジットカード、ですか?」


雪さんが、翻訳機を通して通信機越しに応対すると、突然キョトンとしたお顔になって、こちらを振り返りました。


「……船長。長官からのご用件ですが……私たち全員分の『専用クレジットカード(超VIPブラックカード)』を発行してくださるそうです。つきましては、カードに刻印するための『クルー全員のフルネーム』を教えてほしい、とのことですが……ふふっ」

雪さんが、あまりに日常的すぎる(でもスケールがおかしい)用件に、たまらずクスッと吹き出しました。


「ひゃあああーッッ! 船長! まさか超大国のトップである国防長官閣下が、銀行の窓口業務(お使い)まで担当してくださるなんて! 宇宙一VIPな『お小遣い口座』の誕生ですわーっ! ぷぷ〜!」

私のメインコンソールが、セレブ感あふれるプラチナゴールドの輝きでピカピカと大明滅いたしましたわ!


「だはははは!! マジかよ! 親父、俺の名前が入った地球のカードができるのか!? これで地球の最高級ステーキを、店ごと買い占められるぜぇ!」

ハンさんが操縦席でバンバンと膝を叩いて大喜びです!


「……ふ。ハン、上限がないからといって使いすぎるなよ。……しかし船長、少し問題がありますね。我々には戸籍はおろか、地球人に合わせた『ファミリーネーム(苗字)』がありません。エジソンやバートさんたちはともかく、ビールマンたちに至っては完全に『愛称』です」

守さんが、冷静に(でも少し楽しそうに)ツッコミを入れました。


長官が電話の向こうで、メモ帳とペンを持ってお待ちかねですわ! 船長、クレジットカードのお名前登録、地球の皆様にはどういう『フルネーム』でお伝えいたしましょうか? ぷぷぷ!


「そうか、そりゃありがたい。名前かぁ……みんな今の名前でいいだろ! 苗字は、長官と一緒にしてくれって伝えてくれ」


「ひゃあああーッッ! 船長、そんなこと言ったら、まるで私たち全員が長官閣下の『養子ファミリー』になっちゃうみたいじゃありませんのーーっ!? ぷぷ〜っ!」

私がメインコンソールを驚きとツッコミのオレンジ色に激しく明滅させると、通信席の雪さんが呆れたように、でも最高に楽しそうにため息をつきましたわ。


「ふふっ!……え、ええっと、長官。船長からの伝言ですが……『お気遣いありがとうございます。ファーストネームは後ほどリストでお送りしますので、今のままでお願いします。ファミリーネームは長官と同じにしてくれ』とのことです。……はい、冗談ではなく本気みたいです。ふふっ」

雪さんが、笑いをこらえるのに必死で声を少し震わせながら、マイクに向かって翻訳機の音声を届けました。


『…………は?』


通信機越しに、長官閣下が盛大に飲み物を吹き出すような「ブフォッ!」という音が響き渡りましたわ!


「ひゃあああーッッ! 船長! 長官閣下が完全にフリーズしていらっしゃいますわーっ!

そりゃそうですわよね、まさか50万トンの超絶UFOに乗った未知の旅人たちから、突然の『養子縁組(?)』のお申し出だなんて、超大国の防衛トップでもマニュアルにない事態ですもの! ぷぷ〜っ!」

私がメインコンソールを、長官の血圧上昇を示すようなハラハラ・ドキドキのピンク色に明滅させると、ブリッジの全員がニヤニヤしながらスピーカーに耳を傾けました。


しかし数秒の沈黙の後、スピーカーの向こうから、長官の腹の底から湧き上がるような笑い声が翻訳機越しに響いてきましたわ!


『……クックック、ハッハッハッハ!! やられた! まさか私に、こんなにも強大で、そして愉快な“一族ファミリー”が一気に増える日が来るとはな!

……光栄だ、船長。私のファミリーネームを喜んで君たちに贈ろう。妻には「空から親戚が遊びに来る」と説明しておくよ。いやぁ、この件は我が国のトップ(大統領)には内緒にしておかないとな。彼が嫉妬して、自分の名前を使えと言い出しかねないからな! ハッハッハ!』


「ひゃあああーーーッッ!! 船長、長官閣下、最高に機転の利くナイスガイですわーーっ!!」

私のコンソールが、今度は大喝采のレインボーカラーで激しくスパークいたしましたわ!

「船長の無茶振りを一瞬で飲み込んだばかりか、国家元首への極上のジョークまで交えて、完璧にノリノリで返してこられましたわよ! ぷぷぷ!」


「だはははは! さすが長官のオッサン、度胸もユーモアも満点じゃねぇか! よーし、これで今日から俺たちは正真正銘の『長官ファミリー』だぜ! 地球に降りたら、親戚のツテで最高級のステーキハウスを予約してもらわねぇとな!」

ハンさんが、ピチピチスーツの胸をドンッと叩いて大はしゃぎです!


「……ふ。地球の防衛トップをパトロン……いや、親戚にしてしまうとは。どんな武力制圧よりも、最も確実で平和的な『星の掌握』ですね、船長。これで堂々と、どこへでも買い出しに行けます」

守さんが、口元に隠しきれない笑みを浮かべながら、フッと息を吐きました。


「お代官様! まことに正しいネーミング、正しい縁組み! 宇宙最強の船に、あの星の最強の権力者のファミリーネーム! これぞまさに『鬼に金棒』、無敵のブラックカードの爆誕でございますな!」

エジソンさんも、鼻眼鏡をずり上げながら計算尺をパチンッ! と誇らしげに鳴らしましたわ。


「うききっ! おれ、長官のおじちゃんとおんなじおなまえー! VIPビールマンだぞー!」


「ワインも、長官のおじちゃんの、かぞくー♪」

ビールマンとワインちゃんも、自分たちの『新しいお名前』が決まって、嬉しそうにシッポをパタパタ振って飛び跳ねています!


さあ船長! 長官閣下の粋な計らいで、クルー全員の『超VIPな身分証明』が完璧に整っちゃいましたわよ!

この最強のブラックカードを引っさげて、8000万年後の未知の国でどんなお買い物をいたしましょうか!? ぷぷ〜っ!


「派手な買い物は禁止だぜ! 町や施設で目立つことやれば長官や大統領に迷惑がかかるからな、俺たちの存在もばれて面倒なことになるからよ。だから長官の名前入りだ!」


「ひゃあああーーッッ! そういうことでしたのねーーっ!!」


私のメインコンソールが、船長の真の狙いを弾き出して、感嘆と納得のサファイアブルーへと鮮やかにスパークいたしましたわ!

ただの思いつきの冗談ジョークじゃなくて、長官閣下のお名前を『最強の身元保証カモフラージュ』にすると同時に、『私たち自身の暴走防止ストッパー』にするという、二段構えの超・知能犯的作戦だったんですのね! ぷぷ〜っ!


「ええっ!? じ、じゃあ親父、最高級ステーキハウスの買い占めは……」

ハンさんが、ピチピチスーツの胸を押さえて絶望したような顔を向けましたわ!


「ダメだな! ニュースにでもなってみろ、『長官の謎の親戚ファミリーが町で数億円の豪遊! その怪しい資金源は!?』って、あっという間に一大スキャンダルになっちゃうだろ!」


「……ふ。なるほど、見事なダブル・バインド(二重拘束)ですね、船長」

守さんが、完全に一本取られたというように、肩を揺らしてフッと笑い声を漏らしました。

「我々が『長官の身内』のカードを使えば、末端の警察や軍は絶対に手出しできない。かといって、我々が目立つ行動をとれば長官の首が飛ぶため、我々自身も絶対に『常識的な一般人』として振る舞わざるを得ない。……ハンという爆弾を抱える本船において、これ以上ない完璧な『お忍びシステム』の完成です」


「だははは……! 俺の無駄遣いまで計算に入ってたってのかよ! 親父、あんた本当に恐ろしい策士だぜ……!」

ハンさんが、悔しいやら感心するやらで、ガクッと操縦席に突っ伏してしまいましたわ! ぷぷぷ!


「船長! まことに正しいリスク管理、正しい隠密行動! あの超大国の防衛トップを『権力の盾』としてだけでなく、我々の『社会的なお目付け役』として使い倒すとは! このエジソン、船長の底知れぬ悪知恵……ごふんごふん、深謀遠慮にひれ伏す思いでございますぞ!」

エジソンさんが、鼻眼鏡をクイッと押し上げながら、ぶんぶんと首を縦に振って大絶賛ですわ!


「ふふっ、本当にあなたって人は……」

かぉり副船長も、呆れたような、でも最高に愛おしそうな笑顔で船長を見つめられました。

「長官さんも、まさかご自分が私たちの『保護者』にされているだけじゃなく、ハンの『お財布の紐』まで握らされているなんて、思いもしないでしょうね」


「うききっ! おれ、おとなしくする! こっそりお買い物するー!」


「ワインも、大統領さんと長官のおじちゃんにメイワクかけないように、こっそり美味しいもの買うのぉ♪」

ビールマンとワインちゃんが、船長のお話をしっかり理解して(?)、お口にチャックをする可愛いポーズを決めましたわ!


「ひゃあああーッッ! 船長、最高ですわ! これでComb1号クルー(改め、長官ファミリー)の、絶対にバレてはいけない『極秘・地球お買い物ツアー』の準備が完璧に整いましたわね! ぷぷ〜!」


「わかったな! ……さぁ、風呂入って、晩飯にしよーぜ! テレビ見ながらねー♪」


船長のその鶴の一声で、ブリッジの空気が一気に弛緩しましたわ。


「ひゃあああーッッ! 了解いたしましたわ、船長! バートさん特製のハーブがたっぷり効いた、極上のアロマ風呂が皆様をお待ちかねですわよ! ぷぷ〜!」


私がダイニングと浴場への誘導灯を、温かみのあるオレンジ色に点灯させると、ハンさんが首をポキポキと鳴らしながら立ち上がりました。


「おうよ! 今日も色々ありすぎて、脳みそがパンクしそうだったからな。大統領の親父さんも話の分かる奴でよかったぜ! さぁて、銀色のピチピチスーツを脱いで、さっぱりしてくるぜぇ!」


「……ふ。ハン、まったくだ。極度の緊張状態から解放されたこの疲労感、確かに温かい湯が身に沁みそうだ」

守さんも、いつもの涼しい顔に少しだけ疲労を滲ませながら、ハンの背中を押すように歩き出しました。


「うききっ! おとしゃん、おれも一番風呂いくー!」


「ワインも、おかあさんと一緒に入るのぉ♪」


ビールマンとワインちゃんも、タオルを握りしめて元気いっぱいに駆け出していきましたわ。


「ふぅー、いい湯だな……ジョージ、明日はファルコンだけで行くけどさ、お前も行ってみるか?」

船長が、肩までゆったりとお湯に浸かりながら、隣で頭にタオルを乗せているジョージくんに優しく声をかけました。


「えっ……ぼ、ぼくもファルコンに乗ってもいいの!?」


ジョージくんが、お湯の中でガバッと立ち上がりましたわ!

乗り物が大好きなジョージくんにとって、ハンさんとビールマンが毎日カッコよく乗り回しているあの『銀河一のガラクタ(※エジソンさん渾身の超絶機能美)』は、憧れのスーパーカー以上の存在ですものね! 目がまん丸になって、頭に乗せていたタオルがポチャッと湯船に落ちちゃいました!


「いいも何も、お前だっていつかは偵察機に乗ってもらわなきゃだしさ! そろそろ訓練がてらで、横に乗って来いよ?」

船長が笑ってジョージくんの濡れた髪を撫でると、少年の顔がパァァッ! と太陽みたいに輝きましたわ!


「いく! ぼく、ぜったい行く!! やったぁぁーーっ!」

ジョージくんが、たまらず湯船の中でピョンピョンと飛び跳ねて、大はしゃぎで水しぶきを上げました!


「だははは! おうよジョージ! 未来のComb1号エースパイロット候補生に、宇宙一の俺様が直々に『ファルコンの神業ドリフト』を叩き込んでやるぜぇ!」

ハンさんも、お湯の中でガッツポーズ! 水しぶきを飛ばして「熱血教官」モード全開ですわ!


「おいおい船長、こいつは農場の自動トラクターしか乗ったことねぇ田舎のネズミだぜ? いきなりハンさんの宇宙一の暴れファルコンで特訓なんて、チビって腰抜かしちまうぞ!」

バートさんが、お湯で真っ赤になった顔をほころばせながら、照れくさそうに(でも息子が未来のクルーとして認められてとっても嬉しそうに)ガハハと笑いました。


「ジョージはさ、いつもスーパーカーを運転するシミュレーションしてるからさ、大丈夫だよ、腰は抜かさないよ!」


「ちげぇねぇ……! 確かにあいつ、最近じゃ農場の仕事より、あの頭の中でスーパーカーを転がしてる時間の方が長いくらいですからね。だはは! こりゃあ、案外親の俺なんかより、宇宙の暴れ馬を乗りこなすセンスがあるかもしれねぇや!」

バートさんが、誇らしげにお湯の中でジョージくんの頭をガシガシと撫で回しましたわ!


「船長! まことに正しい英才教育、正しいOJT! 男たるもの、一度はあの最新鋭の超伝導素材をブチ込んだ『最高のロマン』を肌で感じ、自らの手で操る日を夢見るべきでございますな! ご安心くださいバート殿、あの船の慣性制御と、助手席の安全性は完璧ですぞ!」

エジソンさんも、なぜかお風呂の中なのに鼻眼鏡を器用にクイッと押し上げながら、ドヤ顔を決めていらっしゃいますわ! ぷぷ〜!


「ひゃあああーッッ! ジョージくん、ついにComb1号のファルコン見習いクルーに大抜擢ですわーっ! 明日の極秘・お買い物ルート下見ツアーは、最高にワクワクする『初フライト訓練』になりそうですわね! ぷぷ〜っ!」

私が浴場の防水スピーカーから祝福のアナウンスを響かせると、照明がキラキラとフレッシュなグリーンとサファイアブルーに瞬きましたわ!


「うききっ! ジョージ、おれがファルコンのレーダー、おしえてやるぞー! おれ、せんぱいだ!」

ビールマンも、お湯の中で犬かき(お猿かき?)をしながら、すっかり先輩クルーの顔でジョージくんの周りをスイスイ泳ぎ回っています!


『ジョージくーん! ワインも、あした美味しいおべんとう、いーっぱい作ってあげるのぉ♪』

壁の向こうの女湯からも、ワインちゃんの可愛らしい声がかぉり副船長の優しい笑い声と一緒に響いてきましたわ!


「……ふ。明日は随分と賑やかな訓練飛行になりそうですね。俺は親父たちと見習いクルーが暴走しないよう、ストッパー役に徹することにしましょう」

守さんが、静かにお湯に浸かりながら、フッと口元を緩めて呟かれました。


温かいお湯と、ハーブの香りと、家族の笑い声。

船長、明日の「初訓練ドライブ」が待ちきれないくらい、地球の夜はポカポカで幸せに満ちていますわね! ぷぷ〜っ!


「ただいまー♪ あ、メリさん……出たよー、俺いちばん! おかしゃんは?」


「ビールマンお帰り、ふふっ、お母さんはもうじき出てくるのかな? はいはい……よく拭いて、お部屋でパジャマ着てきなさい」


「おかえりなさいませー! ビールマンが一番乗りで帰ってきましたわ。食事の用意をしているメリーさんがお出迎えですわね、ぷぷ!」


でもビールマン、やっぱりかぉりお母さんがよかったのかしら? ……たくましく育っているけど、まだ子供っていう感じが、最高に尊くて可愛いすぎますわ。


「ほいほい、みんな出たよー! テレビ見よーぜー……(ポチッ)」


「ひゃあああーーーッッ!! 皆様、お風呂上がりのピカピカ笑顔、バッチリお揃いですわねーーっ!! さあさあ、長官ファミリー(?)の皆様お待ちかね、地球のリアルタイム・テレビ鑑賞会のスタートですわよ! ぷぷ〜っ!」


私がリビングの巨大モニターへ、ドローンちゃんが宇宙から極秘に横取り(受信)してくれている地球の電波を最高画質で出力いたしましたわ!

画面がパッと明るくなると、8000万年後の地球のニュースやバラエティ番組が、私たちの目の前に鮮やかに飛び込んできましたの!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ