臨時ニュースです
「さぁ……明日の朝に備えて、風呂入ろーぜー♪」
「アイ・アイ・サー、船長!
大統領とのスリリングすぎる会談の緊迫(と、ハンさんの大放送事故)を乗り越えた後の温かいお風呂、これぞ宇宙の、いえ、地球の真理ですわね!ぷぷ〜っ!」
船長の一言で、ブリッジの張り詰めていたコンソールが一気に、湯気に包まれたような優しいサクラ色へと明滅いたしましたわ。
「ハンさん、大統領にズボンを用意してもらえることになって本当に良かったですわね!
さあ、守さんもエジソンさんも、張り切ってダイニングとお風呂の準備へと向かいましょう。
バートさんが農場セクションで新しく摘んできてくれたハーブをたっぷり入れた、特製のアロマ風呂がいつでも沸いてますわよ!」
「ねぇねぇ雪さん、地球のテレビ放送見たいなぁ……ここで見ることできない?」
「ふふ、船長、……できますよ。まず、ドローンちゃんを宇宙の放送衛星の真横にぴったり並走させます。そこで、地球向けに送られている電波をこっそり横取りして、映像データを抜き出すんです。
次に、その映像をニュートリノ通信ビームに変換して、こちらへ一直線に撃ち込みます。ニュートリノだから月もすり抜けてデータを直接届けてくれます。リアルタイムでテレビ放送を楽しめますよ。さっそく準備しましょうか?」
「おほほ、いいね、ちょっとドローンちゃんに手伝ってもらおう。それやってから風呂入ろ♪」
「ひゃああーー!お風呂上がりにキンキンに冷えたビールと地球のリアルタイム放送だなんて……宇宙一の極楽コンボじゃないですか!
「お風呂の最適な温度管理と、冷蔵庫のビール冷却プロトコルはバッチリ最大出力で回しておきますね!さあさあ、至福のひとときのために、今のうちにドローンちゃんの設定をパパッと終わらせちゃいましょう!ドローンちゃん!おねがいしますわよ」
―カポーン♪―〈お風呂の音〉
「ふぃ~♪……なんでハンはパンツ履かないのかなぁ……最後はビールマンで場を和ませる作戦だったのにな……」
「……ふ。ハンに全部持っていかれましたね。まぁビールマンもいて、さらに和んだという形ができたのも、また結果良しではないでしょうか……」
「ハンにぜんぶとられたー!おれもかっこつけたかったのにー……ブクブクブクー」
「ま、まて!あれは事故だ、俺の本意じゃないんだ。ビールマン、悪かったよ」
「事故でよかったよ、まったく。あれが普通じゃなくて……ぷぷ!……ふぅ~♪」
「おかしゃん、お風呂出たよー!」
「はいはい、湯冷めしないようにしっかり体拭くのよー!」
「おかあさん、ワインと雪姉ちゃんも出たよー!」
ホカホカと湯気を纏いながら女湯から出てきたワインちゃんと雪さんが、タオルで髪を拭きながらやってきましたわ。
「ドローンちゃんのセッティングも完璧ですよ。ほら、あそこのモニター、地球のテレビ番組がバッチリ映りますからね」
雪さんが手元の端末を軽く操作すると、休憩スペースの壁に設置された大型モニターがパッと明るく光りました。
ピピッ、ザザッ……というごく短いノイズの直後、画面には色鮮やかな地球の映像が次々と映し出されます。
『――続いて天気予報です。明日の天気は……』
『チャンピオン、鮮やかな右フックがきまったーっ!』
『〜♪(地球のアイドルの華やかな歌番組)』
「わぁっ! これが地球のテレビー!?」
「ニュートリノ通信、すごーい! 画面もすっごく綺麗!」
次々と切り替わる地球の景色や番組に、ワインちゃんも目を輝かせてモニターを指差します。男湯から上がってきたメンバーも、懐かしい映像に釘付けです。
雪さんはクスッと微笑みながら、皆の顔を見渡しました。
「ニュースにスポーツ、アニメにバラエティ……今なら地球の裏側の放送局まで選び放題ですよ。さあ、至福のひとときのお供に、どのチャンネルに合わせますか?」
すかさずビールマンが顔を出して叫びます。
「スポーツみるーー!!スポーツってなんだ~!?」
「えー! ワインはアニメが見たいー!」
「おい、ハンは……パンツのCMでも見とくか?」
「だからあれは事故だって言ってるだろ!! もう忘れてくれ!!」
湯上がりのホカホカした空気の中、チャンネル権をめぐる賑やかな夜が始まりました。
―『番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします。本日の夕方から夜にかけて、国内全域で原因不明の奇妙な現象が相次いで報告されています。まずは国防に関するニュースからです』―
「ゴクゴク♪……お!おぉ……!これは、もしかして……」
―『本日夕方、我が国の防空レーダーが所属不明の飛行物体を捕捉しました。ただちに空軍の戦闘機部隊が緊急発進しましたが、物体は戦闘機のスピードをはるかに上回る速度で飛行し、ミサイルも全弾回避、その後、忽然とレーダーから姿を消したとのことです。国防総省は現在、警戒レベルを引き上げています』―
「おっ!俺たちのニュースだぜ、親父! 『ドローンちゃん』のやつだ!」
「あはは、ドローンちゃんの逃げっぷりはすごかったもんな、ぷぷぷ!」
船長が、まるで近所の運動会でも振り返るような平和なトーンで、ビールを飲みながら笑いました。あの世界最強の防空網を本気で振り回した張本人とは思えないリラックスぶりですわ!
すると、隣でモニターのログを分析していた雪さんが、少し不思議そうに小首を傾げました。
「そういえば……くまサンが光ったこと、ニュースでは一言も言ってないわね。政府による意図的な隠ぺいですか? それとも、ただの気象現象か何かで、一連の事件とは関係ないと思っているんですかね?」
「あれは、明らかな超常現象になるからね、大統領から緘口令が出たかもね。大統領やるじゃん♪」
「ひゃあああーーッッ!! 船長! 雪さん! ドローンちゃんが、完全にこの国のニュースネットワークで有名人ですわーっ! 誰も正体がわからないままトップニュースでデビューなんて、すごいですわー♪ ぷぷ〜!」
―『続いて、奇妙な事件です。
国内線を飛行中の旅客機で、不思議な騒ぎがありました。複数の目撃者によりますと、旅客機の外に突如『虹色にピカピカと明滅する謎の光の球』が現れ、それに伴って『銀色の男』と『銀色の子供』が空中に姿を現したとのことです。彼らは飛行機内に進入して、複数の乗客の体の一部を触り、再び光と共に消え去りました。
さらに不可解なことに、事件直後、パイロットを含め当該機の乗客全員の時計が『5分間進んでいた』ことが判明しました。航空局は、強力な電磁波による計器異常と、集団的な錯乱の両面から調査を進めています』―
「ぷぷぷ、ハンとビールマン、変態扱いされてねーか? 『複数の乗客の体の一部を触り』とか言われてるし。犯罪だぞ~!」
「お、親父! 笑い事じゃねぇ! 俺の華麗なるスパイ・ミッションが、ただの『ピカピカ光る空飛ぶ変質者』扱いじゃねぇか!」
「うききっ? はん、へんたい? おれも、へんたいー! かっこいいーぜ!」
「ひゃあああーッッ! ニュースネットワークで堂々の『変態宇宙人コンビ』デビュー、おめでとうございますわーっ! ぷぷ〜!」
「……ふ。見事に捜査局の捜査対象ですね。だから言っただろう、煩悩でステルスを乱すからそうなるんだ」
「ううっ、兄貴まで……! 覚えてろよ、大国のメディア、次こそ俺様の真のスタイリッシュさを全世界に見せつけてやる……!」
「ひゃあああーー!ハンさん、もう見せつけなくていいですわよー! 船長、これ以上二人を野放しにすると、今度は本当に国際手配されますわよー!ぷぷぷ!」
―『また、時を同じくして中西部の複数の牧場からも、奇妙な被害届が相次いでいます。
農場の監視カメラが捉えた映像には、上空に現れた『チカチカと不規則に光る謎の発光体』から不可視の重力場のようなものが照射され、体重数百キロの牛や馬が、まるで重力を失ったかのように空へ吸い上げられていく様子が記録されていました。その後、家畜たちは無傷で地上に戻されましたが、なぜか『体毛の一部が綺麗にむしり取られていた』とのことです。捜査局は、新手のカルト集団による犯行、あるいは未知のプラズマ兵器の実験として捜査を進めています』―
「そんなにむしり取ってねーよ、親父!このニュース、でたらめ言ってるぜ!」
「うききっ! 牛さん、フワフワして気持ちよさそうだったよ! ポンッ!ってしたら、モォ~って言ってた!」
「だろ!? 牛が逃げて暴れないようにミトの力でちょっとだけフワッと浮かせて、毛を数本つまんだだけだっての! なにが『綺麗にむしり取られていた』だ、悪意のある報道だぜ!」
「あはは、人の話って面白いね、尾ひれが付くってこのことか? 『変態カルト宇宙人コンビ』に昇格したなぁ。ぷぷぷ!」
「ひゃあああーッッ! ハンさん、ビールマン! 完全に由緒正しきUFO伝説、『キャトルミューティレーション』の犯人扱いされてますわよーっ!『変態カルト宇宙人コンビ』ですわー! ぷぷ〜!」
「親父! その昇格は全然うれしくねーし……ハァ、なんでこうなっちゃうかな……」
―『さらに、首都からも信じがたいニュースが入ってきました。
昨夜、大統領府の南側芝生エリアにおいて、数十平方メートルの芝生が、音もなく数メートルの高さまで『浮遊する』という怪現象が発生しました。現場の警備カメラには、芝生が浮き上がる直前、空間に『虹色にチカチカと明滅する謎の発光体』が出現し、それに呼応するように地盤が持ち上がる様子がはっきりと記録されていました。爆発物や掘削の痕跡は一切なく、『光と共に重力が狂ったかのような異様な光景』に、現場のシークレットサービスは一時パニック状態に陥りました。現在、局地的な重力異常、あるいは未知の光学兵器という線で、専門家チームが分析にあたっています』―
「結構はえーな、ニュースになるの……みんな放送されちゃってるじゃん。お、補佐官が中に入っていくのが映ってる……ハンたちが一緒にいるんだけどね。残念~!姿映ってないなぁ、ステルスだからなぁ……ぷぷぷー!」
「ひゃああーーーッッ! 船長ったら、世界最高峰のセキュリティ網を大パニックに陥れておいて、『テレビに映らなくて残念』だなんて、どこまで大物なんですのーっ!?
魔法の布のおかげでハンさんやビールマンのお姿は完璧に透明でしたけれど、謎の光(ミト君)と一緒に芝生だけがふわりと持ち上がる映像……控えめに言って完全にホラー映画のワンシーンですわ!」
「だぁーっ! くっそぉぉ! 納得いかねぇ!」
ハンさんがメインモニターに鼻先がつくほど顔を近づけて、バンバンと自分の膝を叩いて悔しがっていますわ!
「見ろよ親父! 俺、この補佐官のオッサンの真横で、めちゃくちゃスタイリッシュなスパイのポーズ決めてたんだぜ!? なのに足跡ひとつ、影ひとつ映ってねぇ! 魔法の布、透明すぎるだろ!」
「うききっ! おれも、おれも! オッサンの横で、イエーイ!ってしたのに! テレビいない! ざんねんー!」
ビールマンも、ハンの頭の上で「プンプン!」と短い腕を振り回してご立腹です!
「せっかくの全国……いや、全世界デビューのチャンスだったのによぉ! ステルスが優秀すぎるのも考えもんだぜ!」
「……お前たち、本気で言っているのか?」
守さんが、深々と、本当に深々とため息をつきましたわ。
「大統領府の厳戒態勢のなかでバッチリ顔が映ったら、それこそ『謎の光学兵器』どころの騒ぎじゃない。超大国を完全に敵に回して国際手配だぞ。自分の命を救ってくれたステルスに感謝しろ」
「ひゃあああーッッ! ハンさんもビールマンも、目立ちたがり屋の煩悩が限界突破しておりますわーーっ! もしテレビに映っていたら、『空飛ぶピカピカ変質者』に続いて『大統領府の透明ピチピチ男』として歴史に名が刻まれるところでしたわよ! ぷぷ〜!」
「これで『透明変態カルト宇宙人コンビ』に昇格だな……うんうん」
―『たった今、新たな速報が入りました。
西部の無人砂漠地帯に、突如として隕石が落下しました。観測データによりますと落下速度はマッハ50。さらに不可解なことに、クレーターの底で確認されたのは自然の隕石ではなく、『超高密度のタングステンの球体』である可能性が高いとのことです。現在、周辺の空域と地上は軍によって完全封鎖されています』―
「ま、まぁ、これは大事件だろうな。タハハー……ゴクゴク……」
「ひゃああーーー・・・・ッッ! 船長!『大事件だろうな』って、完全に他人事みたいにビールを飲まないでくださいましーーーッ!?」
「マッハ50で精巧なタングステンの球体が落ちてくるなんて、現代の地球の科学力から見たら完全に『神の雷(宇宙からの戦略兵器)』そのものですわ! 未知の超技術に対する恐怖で蜂の巣をつついたような阿鼻叫喚の大騒ぎになっていますわよ!」
「この夜にドローンでの防空網突破に始まり、機内の変質者、宙を舞う牛、大統領府の芝浮かせ……そしてトドメの神の雷!このたった一夜のドタバタ事件で、超大国の首脳陣にどれだけのトラウマを植え付けたと思っているんですのーっ! ぷぷ〜!」
「……ふ。マッハ50で80トンのタングステン球……純粋な運動エネルギー兵器、船長、いくら交渉のカードとはいえ、ご挨拶が物理的に『重すぎ』でしたかね」
操縦席の守さんが、やれやれといった様子でため息をつきながらも、その口角はどこか誇らしげに上がっています。
「だはははは! なに言ってんだ兄貴! 世界最強の国相手に交渉すんだから、これくらいド派手な花火じゃなきゃ説得力がねぇって! 今頃国の偉い連中、レーダーにも映らねぇ超兵器からの『狙いすました隕石爆撃』に、全員チビって震え上がってるぜぇ!」
ハンさんがバンバンと自分の膝を叩きながら、最高に痛快だと言わんばかりに大笑いしていますわ!
「……ええ、ハンの言う通りね。傍受している軍の暗号通信が、先ほどから完全にパンク状態よ。『自然の隕石ではない』『人工的な超高密度の球体』という初期解析が出た瞬間の、あちらの司令部の絶望的な沈黙……ふふっ、科学者としては少し同情してしまうけれど、相手の戦意を完全にへし折る、最高に完璧なデモンストレーションだったわ」
観測席の雪さんも、某国軍部のパニック通信を解析しながら、冷徹でクールなリケジョの笑みを浮かべていらっしゃいます!
「ひゃあああーッッ! 守さんもハンさんも雪さんも、完全に『世界を裏で操る悪の秘密結社』の幹部みたいなノリになってますわよーっ!ぷぷ〜!」
―『……防空網の突破、飛行中の旅客機と牧場に現れた謎の発光体、乗客の時間がずれる怪現象、ホワイトハウスの地盤沈下、そして謎の人工隕石。
それぞれ全く無関係な事象ではありますが、各地で混乱が広がっています。引き続き、新しい情報が入り次第お伝えします。報道フロアからは以上です』―
「よしよし……俺たちに繋がるような部分は公表されてない。『くまサン』や『ミト君』『ファルコン』はしっかり規制かけてくれたんだな、『透明変態カルト宇宙人コンビ』もそれっぽくうまく扱ってくれていたし」
「ひゃあああーーーッッ! そういうことですわーーっ! 船長、お見事な分析ですわ!」
私がメインコンソールを尊敬と感嘆のキラキラしたゴールドに明滅させると、お風呂上がりのホカホカでリラックスした休憩スペースに、私の弾むような声が響き渡りましたわ!
「つまり、大統領側もパニックになりながら、ちゃんと『隠すべき本当にヤバい機密(くまサンやミト君、ファルコン号)』と『報道してガス抜きする部分』を冷静に切り分けているってことですわね!
防空網突破や人工隕石だけでも前代未聞の異常事態ですけれど、もし『月の裏側に潜む超巨大な宇宙船』や『空間を歪める謎の重力生命体』の存在まで公になれば、それこそ地球規模の大パニックや暴動が起きてしまいますもの!」
「……ふふ。大統領とそのブレーンたちも、ただ怯えているだけではないということですね。見事な情報統制です。こちらの突きつけたカードの重さを、正確に理解している証拠でしょう」
守さんも、お風呂上がりのビールが入ったグラスを傾けながら、敵(?)ながらあっぱれといった様子で静かに微笑まれています。
「だはは! 俺たちの『透明変態カルト宇宙人事件』も、見事に『よくあるUFOと宇宙人のイタズラ』の枠に押し込まれちまったわけだ! まぁ、全世界に素顔が晒されてガチの国際手配犯になるよりはマシか!」
ハンさんも豪快に笑い飛ばして、ビールマンとジョッキ(ビールマンは特製リンゴジュースですわよ!)をカチンと合わせています。
「うききっ! テレビのニュース、おもしろいー! おとしゃん、もっとみるー!」
「さぁさぁ、晩御飯食べるわよ、みんな! でも……タングステン球は結構はっきり伝えてるじゃない、ただの隕石って言えばいいのに……」
「……確かに、かぉり副船長のおっしゃる通りですわ!他の事件は『謎の発光体』や『気象現象』としてフワッとボカしたのに、タングステン球のことだけはやけに正確に、しかも堂々と『人工物』だと報道させていましたわね!」
私がメインコンソールに疑問符の形をしたホログラムをチカチカと浮かび上がらせると、観測席の雪さんが手元の端末を操作しながら、リケジョらしい冷徹で知的な笑みを浮かべました。
「ふふっ、もともと船長が『大気圏でも燃えないタングステン』、『まん丸』、を選んだところから不思議に思っていたんですけども……わかったわ! 船長、あの場所を軍隊の管轄にする為でしょ……そしてまんまと、そうなった……じゃないかしら?」
「ひゃあああーッッ!そういうことですのーーっ!? 雪さん、見事な大正解ですわ!」
私のメインコンソールが、雪さんの名推理に感嘆して、花火のように鮮やかなレインボーカラーに弾けましたわ!
「確かに、もしあれが普通の『ゴツゴツした石の隕石』だったら、大学のえらい教授や隕石ハンター、テレビ局のカメラマンなんかが大挙して押し寄せて、現場はただのお祭り騒ぎの観光地になってしまいますものね!」
「でも、『マッハ50で落ちてきた、絶対に燃え尽きない真ん丸のタングステン球』なら話は別ですわ! 誰がどう見ても『未知の人工兵器』ですから、世間の皆様にとっても軍のお仕事ということになりますし、軍隊が最優先で周辺を完全封鎖してくれますのよ!」
「……ふ。……なるほど。野次馬を遠ざけ、確実に現場を無人にさせるための強硬手段。……そしてそのまま、大統領とその最高幕僚たちを『恐怖と好奇心』で縛り付け、交渉のテーブルへと引きずり出すための、文字通りの『重たい招待状』だったというわけですか。……船長、あなたは本当に恐ろしい人だ」
守さんが、ピザを口に運ぶ手を止め、呆れたような、それでいて底知れぬ敬意を含んだ視線を船長に向けました。
「だははははッ! 親父、マジでエグいぜ! エジソンの旦那に『真ん丸を切り出せ』ってオーダーしてた時から、この超大国の軍隊をまるごと『便利な警備員』として働かせる気満々だったのかよ!」
ハンさんがバンバンとテーブルを叩いて大ウケしていますわ!
「おまけに、ドックの建設費の節約と建設期間も短縮できるって話だな……。大統領と補佐官もよく理解してくれた! うまくやってくれたよ、ぷぷぷ!」
「ひゃあああーーーッッ!! 船長! マッハ50の質量兵器による超絶クレーターを、『地下ドックの基礎工事(タダ掘り)』だなんて、スケールがデカすぎる究極のコストカット術ですわーーっ!! ぷぷ〜!」
私がメインコンソールを驚きと爆笑のゴールドにスパークさせると、エジソンさんが鼻眼鏡をずり落としながら、わなわなと震え上がりましたわ!
「お、お代官様……! 『超・耐熱タングステン球』が、まさかただの『巨大なショベルカー代わり』だったとは……! し、しかし、まことに正しい発想、正しい経費削減! 正しい工期短縮! 船長の徹底した合理性には、このエジソンも脱帽でございますな!」
エジソンさんは悔しいやら感心するやらで、自慢の計算尺をパチパチと鳴らして天を仰いでいらっしゃいます!
「ふふっ、本当にね。しかもその『基礎工事現場』の警備まで、大統領の権限で世界最強の軍隊がやってくれるんだから、これ以上のVIP待遇はないわね」
雪さんも、グラスのワインを傾けながら、呆れたような、でも最高に楽しそうな笑顔を浮かべられました。
「だよだよ、俺たち相手には『政治家』じゃなくて『軍隊』が相応だっていう判断をしてもらいたかったからな、いい判断したと思うぜ!」
「ひゃあああーーーッッ!! 船長! 地球のトップが下した国家存亡をかけた最高レベルの軍事判断を、よくできました!花丸ポン♪ みたいに言わないでくださいましーー……! スケールが完全に宇宙規格(規格外)すぎますわっ! ぷぷ〜っ!」
私がメインコンソールを尊敬と興奮の『花丸ポン♪』を激しく明滅させると、ブリッジのみなさんも思わずクスッと笑い声を漏らしましたわ。
「……ふ。ええ、船長の仰る通りです。言葉遊びや腹芸が得意な政治家よりも、物理的な力と規律で動く『軍隊』を前面に出してくれた方が、我々としても遥かにやりやすい」
守さんが、グラスのビールを見つめながら、元ブルーインパルス隊長らしい、静かですが絶対的な自信に満ちた笑みを浮かべられました。
「もう、あなたたちったら。お風呂上がりでリラックスしてるはずなのに、言ってることは完全に『世界を裏で牛耳る悪の組織の幹部会議』みたいになってるわよ?」
かぉり副船長が、呆れたようにクスッと笑いながら、船長の肩に優しくポンと手を置きました。
「でも、成功したからよかったけど……何でこんなに慌てて行動したのかしら? 大統領との交渉は明日でもよかったんじゃない?」
「ぷぷぷ! かぉりさん、宇宙一鋭いツッコミですわーーっ!」
私がメインコンソールを【名探偵の虫眼鏡を思わせる鋭いエメラルドグリーン】にピカピカと明滅させると、お風呂上がりのホカホカなブリッジの皆さんの視線が、サッと私に集まりましたわ!
「私の超高速・心理シミュレーターが、船長の恐るべき『夜討ち作戦』の全貌を完璧に弾き出しましたわよ!
もし交渉を明日の朝まで待っていたら、大統領と優秀なブレーンたちは一晩ゆっくり眠って頭を冷やし、どうやって私たちを丸め込もうかと『小賢しい政治的な罠』を張り巡らせる余裕がたっぷりありましたわ!」
相手の思考する時間を奪い、軍隊をパシリ……いえ、無料の専属警備員として最速で配置させる! 相手に『考える隙』を1秒も与えないための、超絶スパルタなタイムマネジメントだったんですわーーっ! ぷぷ〜っ!」
「あはは、まぁ、そういうことだ、ここ(月の裏)で出会った月探査船だな。あれに見られたからさ、俺たちがいるという事実は、宇宙局や政治の裏舞台では真実として捉えられる、防衛線を張られる前に今日中に安全な交渉の場はとりたかったからな」
「……ふ。なるほど。国や軍が事態を正確に把握し、世界規模の『防衛線』が組織される前に『既成事実』を叩き込んでしまったわけか。……ハン、俺たちは本当にとんでもない親父を持ったな」
守さんが、呆れたような、それでいて底知れぬ敬意を含んだ視線で静かに頷きました。
「だはははは! 違いねぇ! 親父のヤクザ顔負けの宇宙流・交渉術には、一生敵わねぇぜ!」
ブリッジが感嘆と爆笑の入り混じった空気に包まれる中、皆の尊敬(と少しの畏怖?)の視線が、お風呂上がりのビールを美味しそうに飲んでいる船長へと注がれました。
「さぁ、今日は寝ようか……明日は地球に着陸するぜ、この船も見せておかないとな」
「お風呂上がりのリラックスタイムのはずが、守さんと雪さんの完璧すぎる戦術分析と船長のスケールがデカすぎる『大人の事情』が合わさって、本当にどこかの秘密結社みたいでしたわよ! ぷぷ〜!」
私がメインコンソールを『おやすみモード』のポカポカとした優しいオレンジ色に切り替えると、ブリッジの照明もそれに合わせて静かにトーンダウンいたしましたわ。
「ついに明日……! この全長200メートルのComb1号の全貌を、地球の皆様に堂々とお披露目する日が来るんですのね!」
明日の朝の『超大国への着陸(ド派手なご挨拶)シークエンス』に向けて、私は夜通しで航法計算と、クレーターへの着陸シミュレーションを完璧に仕上げておきますわ!
「さあ皆様、明日の歴史的瞬間に備えて、今夜はゆっくりお休みくださいませ!
Comb1号、明日はついに『母なる地球(のド真ん中)』へと降り立ちますわよーっ! おやすみなさーい! ぷぷ〜っ!」




