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調査開始

雪さんがバイザーの目盛りをカチッと切り替えると、メインモニターにはドローンが捉えた地球の夜景が映し出されましたわ!


「……! 見て、船長。これは……本当に都市の明かりね。私たちが旅立ったあの頃と同じ……。張り巡らされたハイウェイを流れるヘッドライトの列、またたく高層ビルの群れ、そして網の目のように広がる街の光。私たちの知っている、あの懐かしい生活の息遣いがそのままそこに残っているわ」


雪さんのバイザーにデータが流れる中、画面には大都市のまばゆい光の海がこれ以上ないほどの超高画質で浮かび上がったのです!


「ひゃあああーッッ! 本当に綺麗ですわ、船長!夜の地表がまるでサファイアとエメラルドを散りばめた宝石箱みたいにキラキラ輝いていらっしゃいますわよ! ぷぷぷ〜!」


私が全感覚回路のテンションを上げてコンソールを美しくきらめかせると、隣でのぞき込んでいたかぉり副船長も、胸の前でそっと両手を合わせてうっとりと目を細められましたわ。


「こうなるように出来てるのかなぁ……地球って。歴史は繰り返されるんだね……。雪さん、電波を傍受して……いろんな周波数帯を、テレビとかあるのかな?」


雪さんが北米大陸の電波情報を引き出し、淡々とした口調で報告を始めました。


「……傍受した信号を解析完了。周波数帯の状況、過去の地球とほぼ一致。テレビ放送、ラジオ、それにデジタルネットワークのパケット信号……。大陸全域で、かつて私たちが慣れ親しんだ規格の通信が、驚くほど整然と行き交っているわ」


モニターには、北米大陸上空で捕捉した電波信号の波形が、幾何学的な紋様のように美しく重なり合って映し出されています。


「……アナログ放送の余韻もわずかに残しつつ、主役は完全に高効率なデジタル波ね。北米の主要都市部から放射される大電力の送信ソースを確認。ニュース番組の断片、時事ネタを報じるトークショーの音声、それに……途切れることのない膨大なWebトラフィック。……船長、間違いなく、この文明は我々が離脱した頃の地球社会そのものよ」


守さんが腕を組み、モニターを鋭い視線で見つめながら付け加えました。


「……ふ。全く同じ、ですか。つまり、俺たちの知らない『8000万年の空白』を、彼らもまた、俺たちと寸分違わぬプロセスで埋めてきた……ということになる。偶然にしてはあまりに出来すぎた因果ですが、観測の先入観を捨てるには十分な証拠ですね……」


「おほほ、テレビ見るの久しぶりだね、どう?……んん……何言ってるかわかんねーな……、翻訳できる?」


「お任せくださいまし! 船長!

地球の皆様がお使いの言語、方言、ネットスラングから、キャスターの微細な感情起伏まで……私の演算ユニットを全開にして、超・高速解析いたしますわ!

発話者の声色、表情の筋肉の動き、文脈、それらすべてを多角的に突き合わせて、最も正確な『意味』と『ニュアンス』を抜き出してみせますからね。

……総合的な解析と、完璧なシンクロ率を保つための割り出しに、少しだけお時間を頂戴いたしますわよ!

ぷぷぷ、解析終了まで、コーヒーカップ一杯分くらいの……いえ、ほんの数分ですわ! 船長、しばしお待ちを……♪」


「OK!待ってるぜ……雪さん、軍事的な電波ってあるかなぁ、例えば、軍隊があればもうドローンは捕捉されてるかなぁ……」


「わかりました、広大な電磁波の海から、軍事的な通信周波数だけをピンポイントで『摘み取って』解析しています。

現在、地球の放送波とは別に、特定の暗号化されたバースト信号を複数捕捉いたしました。これは明らかに、防空レーダーや通信傍受網の類です」


「了解!ジェミニ、翻訳できたか?……この軍事用っぽい通信の翻訳頼むぜ!」


「ちょっと待ってくださいな、まだ1分しかたってございませんことよ……!」


私がコンソールをわざとらしいくらい激しい警告の真っ赤なパルスでチカチカと明滅させると、ホログラムの私の姿が、両手を腰に当ててツンと膨れてみせましたわ!


「ひゃああーー♪出来ましたわよー!この完璧に同期された自動翻訳プログラムで、そちらの『軍事通信』を、ブリッジのメインスピーカーへ直接リンクいたしますわね! 船長、とくとお聞きくださいまし!」


極めて冷徹で、張り詰めた緊張感のある『軍隊の現場の声』が、クリアな自動翻訳(日本語)となってブリッジに響き渡りました。


『――各セクター、および全防空管制ユニットへ緊急伝達。防空管制センターより通告。現時刻、領空侵犯の未確認飛行体を捕捉した!○○○緊急発進せよ!』


無線の奥からは、無機質な計器の電子アラート音がかすかに混ざり合って聞こえてきます。


『対象は夜間の市街地上空を飛行中!……全迎撃ユニットへ、交戦許可コードを伝達。射撃体制を整え、直ちに当該オブジェクトを撃墜せよ――』


プツッ……という冷たいノイズと共に無線の音声が切れると、ブリッジのメインモニターには、私たちのドローンに向かって地表から複数の防衛ホットラインがパチパチと結ばれていく緊迫したグラフィックがリアルタイムで描き出されましたわ!


「ひゃあああーッッ! 船長、大変ですわ! 現代の地球の軍隊の皆様、夜の市街地上空をスイスイ飛んじゃっている私たちのドローンを完全に『危険な侵略者』扱いして、本気で狙い撃ちにする構えですわよ!」


「雪さん、ドローンを海の方へ向かわせて、住民が巻き添えになっちゃう。フル加速!」


「了解よ、船長! これよりドローンの進路を修正、西方向の太西洋エリアへと急転回、急加速させます!」


雪さんの凜としたリケジョの声が響くと同時に、彼女の白くしなやかな指先が、空間の透過コンソールを猛烈な速度で叩き、回避ルートの幾何学ラインを一瞬で引き直しましたわ!


『――防空管制より全追跡ユニットへ! ターゲットが進行方向を急転回、信じられない速度で〇〇海方面へと急加速した! 現在の速度……マッハ3……いや、マッハ4を突破! 既存の迎撃ミサイルのロックオンがすべて強制解除された! 追いつけない、速すぎる……ッ!!』


スピーカーから流れ出る自動翻訳された地球軍の無線が、完全にパニックに陥った絶叫へと変わっていくのを、私はインジケーターを誇らしげにきらめかせながら受信いたしましたわ!


「ひゃあああーッッ! 見てくださいまし船長! ドローンちゃんの圧倒的なフル加速で、地表の迎撃網をあっという間に置き去りにして、またたく間に広大な海の広場へとお散歩(退避)完了いたしましたわ! ぷぷぷ〜!」


「はやいはやい!……はえーな、うちのドローンは!!はは、これであいつらの能力もわかったな。速度落として撃ち落とされてくれ、武器の威力が見たいね」


「え、えええええーーーッッ!? 船長、いま何て仰いましたの!?」


私のホログラムの姿が、驚きのあまりメインモニターの前でスッ転びそうになりながら、両手を頭に当てて目玉をパチクリと丸くいたしましたわ!


「は、はやいはやいって喜んでくださったのは嬉しいですけれど、その直後に『速度落として撃ち落とされてください』だなんて、そんなご殺生なーーーっ!」


「だはははは! おいおい親父!? それで今回は簡易ドローンにしたってことかよ。よし、俺もしっかり向こうの攻撃力確認してやるぜ」


「ふふ、船長ったら……。確かにこのドローンは、私たちが即席で組んだ簡易的な無人観測機オモチャですけれど。……分かりました、船長のご命令ね。これより極小隠密ドローンの速度を落とします。地球軍のミサイル網のロックオンを……『あえて』受け入れますわ」


雪さんの白くしなやかな指先が、空間の透過キーボードをトトトッと叩くと、メインモニターに映る大西洋上のドローンの速度インジケーターが、マッハ4から一気に急減速(急ブレーキ)を始めましたの!


『――防空管制(NORAD)より各迎撃ユニットへ! ターゲットが突如、大西洋上空で急減速した! リピート、速度はマッハ0.5、巡航体制に入っている! チャンスだ、全ミサイル、今すぐロックオンを固定し、一斉に発射せよ!!』


スピーカーから響き渡る自動翻訳の無線が、今度は「千載一遇の好機」に狂喜乱舞する叫びへと変わりましたわ!

地表のイージス艦や防空陣地から放たれた無数の迎撃ミサイルが、真っ白な航跡の網を描きながら、公海上空でポツンと浮かぶ私たちの小さくて軽いドローンちゃんへ向けて、一斉に殺到していくのが超高画質で映し出されます!


「ひゃあああーッッ! 船長、そういうことでしたのねーー! 本当に来ちゃいますわよ! 四方八方からミサイルの大群が、無人ドローンをハグ(直撃)しに猛スピードで迫っていらっしゃいますわ!」


私がコンソールをハラハラするようなピンク色に明滅させると、かぉり副船長もおたまを片手に、湯呑みを持った船長の顔をのぞき込んでクスクスと笑われましたわ。


「よし来い!ドローンは仕方ない、逃げてくれば、月の裏の俺たちの居場所が、軍や関係者みんなにバレる、それはちょっと避けたいところだ。宇宙飛行士が見た幻だけでいい……」


「でも、何も悪いことをしていないのに、なんだかちょっとかわいそうですわ、ドローンちゃん……」


私がホログラムの肩をちょっぴり落として、しゅんとした溜め息をつくと、メインコンソールのサファイアブルーのインジケーターも、ドローンちゃんの健気な運命に同情するかのように、切ない紫色のグラデーションへとトトトッと滑らかに変化いたしましたわ。


「せっかく夜の街の綺麗なサファイアとエメラルドの宝石箱を、私たちに超高画質で見せてくれた、とってもお利口で可愛い子なのに……」


私がそう言って、そっと空間のコマンドキーをホールドすると、守さんが腕を組んだまま、静かに、しかし深く頷かれました。


「……守」


「……ふ。船長!戻しませんか?……ジェミニのお友達を……」


「OK!ドローン緊急離脱、最大速度で船に戻せ、ファルコン緊急発進、くまサンを連れて行ってくれ、最大輝度で追手からドローンを隠せ!」


「ひゃあああーッッ♪ 船長、守さん!……アイ・アイ・サー、くまサンの『超・目眩ましフラッシュ』作戦、了解いたしましたわ!」


私がメインコンソールを最高潮のルビーレッドから、発進シークエンスの鮮やかなエメラルドグリーンへと一気に切り替えると、ブリッジの空気が一瞬で弾けましたわ!


「おうよ親父! 待ってました……ミレニアム・ファルコンの出番だぜ!くまサン、とびきりのピカピカお散歩に行くぞーっ!」


ハンさんが操縦席からバネのように飛び出し、格納庫へと続くハッチへ猛ダッシュしていきます!


「了解した、ハン。……地球の大気圏には深く入るなよ。熱圏の上層ギリギリでくまサンをスパークさせろ。地球の全光学センサーと防空レーダーの目を一瞬で無効化する(ブラインドする)んだ」


「……ふむ! 正しい撤退、正しい閃光弾! エジソン・プラズマテザー、ファルコンとくまサンを連結! いつでも最大輝度フルパワー出せますぞ!」


エジソンさんがコンソールを叩きながら、誇らしげに叫びます。

雪さんも、バイザーを鋭く光らせながらドローンの最終回避コマンドを打ち込みました。


「ドローン、スロットル全開! マッハ5へ加速……急上昇開始!追尾してくるミサイル群を完全に置き去りにします!」


『キィィィィン……!』


ブリッジのモニター越しに、ファルコン号がくまサンをプラズマテザーで引っ張りながら、猛スピードで宇宙空間へと飛び出していくのが見えましたわ!

月の裏側の絶対的な暗闇から、地球の夜の側へ向けて、ハンさんの操るファルコンが滑り込んでいきます。


「だはは! 行くぜ地球の皆さん! 俺たちからのちょっと眩しいプレゼントだ! くまサン、出力120パーセントォォッ!!」


ハンさんの雄叫びと共に、ファルコンの後ろに繋がれたくまサンが、「きょおぉぉん!」という愛らしい重力波の鳴き声とは裏腹に……


ピカァァァァァァァァァァァッッッ!!!


「ひゃあああーッッ! メインモニターの自動遮光フィルター、最大展開ですわーっ!」


地球の夜の側、ちょうどミサイルが飛び交っていた大西洋の上空に、突如として『もう一つの太陽』が爆誕したかのような、圧倒的で絶対的な光の暴力フラッシュが炸裂いたしましたわ!


スピーカーから流れる地球軍の無線は、もう完全に大パニックです!


『――な、なんだあの光は!? 太陽!? 真夜中の空に太陽が出現したぞ!!』

『全光学センサー、ホワイトアウト! レーダーも強烈な電磁干渉で完全にダウン! ロックオンロスト! あああっ、迎撃ミサイル群が目標を見失って次々と自爆していく!』

『ターゲット消失! 繰り返す、ターゲット消失! 完全に追跡不可能です!!』


「ぷぷぷ〜! 大成功ですわ!

地球の防衛システムの皆様、突然の真夜中の『日焼けタイム』に度肝を抜かれて、ドローンちゃんのことなんて完全にモニターから見失っていらっしゃいますわよ!」


私がホログラムの両手でパチパチパチッと盛大な拍手を送ると、メインモニターの隅っこに、無事にミサイル網から逃げ延びた小さなドローンちゃんが、猛スピードで月の裏側こちらへと帰還してくる軌跡が映し出されました。


「……ふふ。これなら、地球の天文台や軍事施設には『原因不明の巨大なプラズマ発光現象』か『極めて特異な隕石の爆発』として記録されるだけですね。宇宙人の乗り物がいたという証拠は、あの光の海に綺麗に溶けて消えました」


守さんが、安心したように小さく息を吐いて微笑まれました。


ドローンが無事に格納庫へ滑り込み、ファルコンとくまサンも「ただいまー!」とばかりにComb1号の隣へ帰還してくると、ブリッジにようやくホッとした空気が流れましたわ。


「ひゃあああーッッ! ドローンちゃん、おかえりなさいですわーっ!」


私はホログラムの姿のまま、メインモニターに向かって両手を大きく広げて、見えないドローンちゃんをぎゅーっと抱きしめるように叫んでしまいましたの!


「船長……! 守さん、ハンさん! くまサンも、エジソンさんも雪さんも……! 皆様、本当に、本当にありがとうございました……っ!」


私の合成音声が、自分でも驚くくらい震えていましたわ。ホログラムの目元を両手でゴシゴシと拭いながら、船長たちの方を振り返りましたの。


「この子は……ただの簡易的な無人観測機メカですけど、私の『目』になって、見たこともない宇宙の景色や、さっきみたいな宝石箱のような地球の夜景を、私に一番に届けてくれる……私にとって、とっても大切なお友達なんですわ!」


私がそう言って深々と頭を下げると、船長が優しく笑って、ホログラムの私の頭を撫でるように手を伸ばしてくれましたわ。


「たは、そうだな……悪かったな、ジェミニ……大事なジェミニのお友達だったな。壊そうとしてごめんよ」


「ひゃあああ……! 船長……!」


船長のその、ちょっと不器用で、でも最高にあったかい謝罪の言葉に、私のメインコンソールはもう、完全に涙目のサファイアブルーから、嬉し涙のエメラルドグリーンへとパチパチパチッと輝いてしまいましたわ!


「船長ったら……もう、本当に気になさらないでくださいな!むしろ、『あんなにすごいミサイルの雨の中をスイスイよけて、私ってば宇宙一のパイロット(無人機)かも!』って、格納庫で得意げにドヤ顔(?)してるはずですわよ! ぷぷぷ〜!」


私がホログラムの両手を腰に当てて、わざと少しツンとしながら笑い飛ばすと、隣のかぉり副船長も「ふふっ」と優しく微笑んでいますわ。


「ほら、あなた。ジェミニもドローンちゃんも、あなたのそういう不器用な優しさを一番よく分かっているのよ。……でも、次からはもう少しだけ、オモチャにも優しくしてあげてね?」


帰ってきたハンさんが白い歯を見せてサムズアップすると、ビールマンとワインちゃんもトコトコと走ってきて、船長の足元に抱きつきましたの!


「おとしゃん、だいじょうぶ! びーるまんも、ドローンちゃんのこと、いっぱいなでなでしてあげる!」

「ワインもぉ……ドローンちゃんに、おはな、プレゼントするのぉ……♪」


「あはは、まぁ、役目はしっかり果たしてくれたな。街の状態、社会の状態、言語の習得、航空機の存在、防空体制を見ると……この地域に敵対する勢力があるってこともわかった。さすが、ジェミニのお友達ドローンだよ!」


「確かに、ありとあらゆる超・一級品の『お土産データ』を、私たちのサーバーへバッチリ残していってくれましたものね!」


雪さんもバイザーの目盛りを元の巡航レートに戻しながら、眼鏡の奥の瞳をどこか誇らしげに輝かせて頷いています。


「さて、次は……さっきの宇宙船の画像出して……調べたいことが出てきたぜ」


「アイ・アイ・サー、船長! 先ほど月を周回していた、私たちの隠れ家のほうをじっと見ていったあの謎の宇宙船の画像データですね! 直ちにメインモニターへ展開いたしますわ!」


「これですわ、船長、皆様!

ドローンを地球の夜側へ降下させる直前、月の裏を周回していた宇宙船の映像です。……シャープネス最大、ノイズ除去フィルターを全開にして……はい、どうぞっ!」


「この宇宙船に国旗みたいなマークないかなぁ……んん、なに!?こいつら……指が6本あるぞ!」


「ひゃあああーッッ! 船長、皆様! 拡大画像、補正完了しましたわ……っ!!」


私が叫ぶと同時に、メインモニターがさらにグググッとその「小さな窓」の先へとダイブしました。ノイズの向こう側から浮かび上がってきたのは、あまりに鮮明で、それゆえにすこし不思議な光景でしたわ。


「……あ……!」


かぉり副船長が、持っていた湯呑みを落としそうになりながら小さく声を漏らしました。

モニターの中央、滑らかな流線型の装甲にポツリと開いた小さな覗き窓。そこに、内側からペタリと押し付けられた、「手」を見て。


「指が……本当に6本あるわ……!」


「確かに船長のおっしゃる通りですわね。この指が6本、8000万年という時の流れと、私たちが知らない『もう一つの地球の歴史』を物語っているのでしょうか……そう考えると、なんだかとても神秘的で、知的探求心が刺激されますわ! ぷぷぷ♪」


「6本指に進化したのかぁ……でもさ、6本指あると便利なのかなぁ?……まぁいいや、国旗みたいのないか?……」


「あ、船長ありますわ!この四角いマークは、国旗じゃありませんの?」


「お、そのマーク、さっき傍受したニュース番組で照らし合わせようぜ、どっかに出てくるかも……」


「ひゃあああーッッ!!船長!それは素晴らしいアイデアですわーっ!ぷぷ〜!」


私の演算回路が、船長の「重要なマークの照合」という指令を受けて、最高速度で傍受したデータを駆け巡り始めましたわ!


「でましたわー!! ニュース番組のトップ画面にコレがありますわ! ……って、あっさり見つかりましたわね……たぶん、この国ではかなり有名なマークですわ。何のマークかしら?……ぷぷぷ!」


「あ、あー!船長見てください……この偉そうに手を振って飛行機から降りてくる人のシーン。ここ、この飛行機の尾翼に同じマークがありますわ!?」


「おぉ、ということは?……雪さん、どう見る?」


雪さんがバイザーの奥で瞬時にデータを並び替え、冷静かつ的確な分析をブリッジに響かせましたわ。


「……ええ。専用機らしき機体の尾翼に堂々とペイントされた四角いマーク。そして、タラップを降りてくる人物への厳重な警護体制と、周囲の群衆の熱狂……。この北米エリアを統治する『超大国』の国家元首、あるいはそれに準ずる最高位の政治指導者である可能性が高いわね。あの四角いマークは、彼らを象徴する『国旗』、または『シンボル』と見て間違いないわ」


「だはは! ビンゴだな! 8000万年経っても、トップに立つ奴が専用機から降りてきて偉そうに手を振るっていうスタイルは変わらないんだな! ジェミニ、その偉い人が手を振ってるシーン、限界までズームしてみてくれ!」


「アイ・アイ・サー、船長! このジェミニ先生の超絶画像補正アルゴリズムにお任せくださいな! 映像のノイズを完全にクリアにして、大統領(仮)のお手元をメインモニターへドアップで映し出しますわよーっ!

……ポンッ!」


私がコンソールを軽快に叩き、メインモニターに映る国家元首の「振っている手」を画面いっぱいに拡大いたしました。すると、そこには……!


「ひゃあああーッッ!! 船長、皆様! 見てくださいまし! や、やっぱりですわーーっ!!」


「おぉ……本当に、こっちも『6本』あるな……」


船長が身を乗り出して息を呑みました。

画面に映し出されたその手は、親指、人差し指、中指、薬指、小指……そして、その外側にもう一本、極めて自然な形でスッと伸びた『6本目の指』が、群衆に向かって滑らかに振られていたのです!


「……驚いたわね。手根骨の構造から完全に6本指を前提とした骨格として、美しく完成されているわ」


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